「伊藤園レディス」初日は稲見萌寧と古江彩佳が同組
2020年と21年が統合されたゴルフの国内女子ツアーも残り3試合となった。
今週の「伊藤園レディス」の舞台となるのは房総半島の中ほどの、千葉県長南町にあるグレートアイランド倶楽部。多くのホールに池が絡むレイアウトのコースでは、何と年間6万球ものボールが餌食になっているという。
大会初日のペアリングは、賞金ランク1位の稲見萌寧。昨年大会の優勝者で、直近4試合で3勝を挙げて約400万円差の2位につけている古江彩佳。さらに3位の小祝さくらが同組となり、佳境となった賞金女王レースを意識させるものになった。
2008年以降、古閑美保、横峯さくら、イ・ボミ(2回)と鈴木愛の延べ5人が「伊藤園レディス」を制して、賞金女王のタイトルも手にしている。それだけに初日から最終日まで1打1打から目が離せないが、勝負のカギとなるのが終盤の16~18番をはじめとする多くのホールで絡んでくる池をいかに避けるかだ。
横峯さくら、不動裕理も池ポチャでV逸
特にグリーン左に大きな池が広がる18番パー4はドラマを生む。2011年大会では、それまで3日間、53ホールをノーボギーで首位を走っていた横峯さくらが2打目を大きく引っかけ、池に落としてダブルボギー。2打差で優勝を逃した。
その前にも2004年には大会3連覇のかかっていた不動裕理が。2007年も佐伯三貴といった名選手が最後の最後で池につかまり、勝利を逃している。
最終日の18番ホールのピンは、池に近い左サイドに切られるのが恒例。昨年大会で酒井美紀とのプレーオフを制した古江は、ピンの位置がグリーンセンターに変わった3ホール目になってようやくピンを攻めることができたと話し、30センチにつけるスーパーショットで勝利をモノにした。
年2回、潜水夫が回収
トッププロたちでもなかなか果敢には攻めることのできないホール(ピンポジション)。それでも左の池に吸い寄せられるように。それもぎりぎりで転がり落ちるような惜しいショットではなく、打った瞬間にわかるようなミスショットをして池につかまってしまうのは、どうしてなのだろうか。
そこには年間6万球が餌食になっている、一般ゴルファーたちの怨念があり、プロたちのボールを引き寄せているのかもしれない。
いわゆる「打ちっ放し」にあるボールの総数は2~3万球と聞いたことがある。練習場で数え切れないほどのボールが散らばっているのは良く見る光景だが、それよりもはるかに多い数のボールが、ひとつのコースで1年間に池に入るとは、にわかには信じられないかもしれない。
だが、この数字はまぎれもない事実だ。グレートアイランド倶楽部の中澤充子支配人は「年に2回、潜水夫さんに来ていただいて池に落ちたボールを回収しています。その数はだいたい一度に3万球です」と説明する。
1日平均200球が池の餌食に
18番ホール(池の反対側には9番パー4がある)だけでなく、コース内全ての池のトータルとなるが、3万球が年に2回だから合計で約6万球。コースは火曜日が定休日で、「伊藤園レディス」の週には一般ゴルファーはプレーできない。それらを考慮して年間の営業日を約300日とすると、一日平均で200球前後のボールが池に吸い込まれていることになる。
ちなみにグレートアイランド倶楽部の年間来場者数は約1万2000人。単純計算では一般ゴルファーがラウンドすると、18ホールで平均5個のボールを池に入れることになる。中にはムキになって同じ場所から何度も池に入れるゴルファーもいるという。
グレートアイランド倶楽部がオープンしたのは1993年4月なので、これまでに池に落ちたボールは100万。あるいは200万個ぐらいになるのか。それだけの一般ゴルファーの無念が沈んでいる池は、今年どんなドラマを生むのか。
《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう) 横浜市出身 1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。
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