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ダウンスイングでクラブを寝かせる 「シャローイング」の注意点【ゴルフハウツー】

2020 12/30 06:00akira yasu
イメージ画像ⒸDJTaylor/Shutterstock.com
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シャローイング

多くのゴルファーはクラブヘッドを押さえつけるように切り返すため、ダウンスイング初期にクラブが立ち(スティープ)過ぎる傾向にある。これにより、以下のような問題が生じる。
・過剰なアウトサイドインのヘッド軌道になってスライス回転が多くなる
・インパクトで手元が浮いてクラブヘッドが垂れ下がってフェースが開いたインパクトになり、右に打ち出してしまう

そういった傾向にあるゴルファーは、ダウンスイング初期にクラブを寝かせて(背中側に傾けて)シャローにすれば、良いインパクトに改善できるかもしれない。インパクト前後で手元を低く理想的なスイング軌道を描きやすく、タイミングよくフェースを返せる期待が持てる。浅くゆるやかなヘッド軌道になることが、クラブヘッドの動きをより自然な動きへと導いてくれるのだ。

ただし、ダウンスイング初期にクラブが立っているからと、やみくもにシャローイングしても効果を発揮するとは限らない。

クラブの慣性でシャローになる

ダウンスイングでクラブヘッドを押さえつけることなく腕とクラブが連動すると、自然とシャローになる。無理に寝かせようとしなくても、クラブは重力や遠心力で寝るものなのだ。

『ゴルフの力学~スイングは「クラブが主」「カラダは従」』の著者:松本協(マツモトタスク)氏は、書籍の中で「ゴルフクラブがシャローイングする理由はクラブの特性によるもの」「人工的なシャローイングはダウンスイングにおける膨大なGフォースの中、プレーヤーにはきわめて不可能に近いものが要求されることを知っておかねばならない」「不必要なエネルギーと、発生する膨大な抵抗を扱えるフィジカルタフネスが必要不可欠になる」と述べている。

このような見解を踏まえても、「シャローは自然発生するもの」ということを念頭に置くべきと言える。

※松本協 略歴:三十年弱に渡り主に欧州を拠点に国際金融マンとして活躍。旧来打法からの決別を誓い、ゴルフサイエンスの研究に勤しみ、米国のジェイコブス3Dゴルフからアジア人初のアドバイザリーメンバー兼オフィシャル日本アンバサダーとして認定を受ける。

前傾角度維持が前提

だが、最初は自発的にクラブを寝かせてシャローイングを体感するところから始めてみても良いだろう。

シャローにすると、クラブヘッドの重力や重心が影響し、前傾角度を崩し(浅くなり)やすくなる。前傾角度を崩さないようにするには、それに対抗する力が必要になる。

ダウンスイングの際、スクワットのようにお尻を後方に引いた格好をすれば前傾角度が維持される。また「開くクラブフェースを適度に閉じる」といった動きも維持に必要だ。

ジョージ・ガンカスとマシュー・ウルフ

シャローイングは、ジョージ・ガンカス(以下GG)という米国のゴルフコーチの影響により知られるようになった。GGメソッドの一つが「シャロー」なのだ。

多くのツアー選手を指導しているGGは、昨季プロ3戦目で初優勝し、今季全米オープンでブライソン・デシャンボーと優勝を争った後2位となったマシュー・ウルフも指導してきた。

特徴的なマシュー・ウルフのスイングは、トップオブスイングでシャフトが飛球線の右を向く強めのシャフトクロス。シャフトクロスはダウンスイングでクラブが寝る度合いが増大しやすいため「悪」とされていたが、GGが「シャフトクロスやダウンスイング初期のクラブが寝る動きは直さなくて良い」と指導したことも影響し、「シャフトクロスOK」「クラブが寝る動きGOOD」といった風潮が見られるようになった。

しかし、そもそもツアー選手の多くは前傾角度維持に必要な体幹の強さがある。松本氏が書籍の中で述べている「発生する膨大な抵抗を扱えるフィジカルタフネス」がもともと備わっているのだ。よって、イメージ通りにクラブを操作することができる。

対して、フィジカルタフネスが備わっている一般のゴルファーは多くないだろう。であればシャローイングは体感する程度にし、今一度体の回し方やグリップなどを見直し、シャローの自然発生を目指した方が良いのかもしれない。それほどシャローイングの扱い方には注意が必要ということだ。

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