存在感を発揮し続ける韓国人選手達
11月6日から8日に開催されたTOTOジャパンクラシックで優勝した申ジエ。これで2勝目を手に入れ、今季(2020-2021年)こそ悲願の賞金女王のタイトル載冠となりそうだ。
昨今、日本女子ツアーで強さを発揮している韓国人選手。昨季の賞金ランキングトップ5には申ジエ(3位)、ペ・ソンウ(4位)、イ・ミニョン(5位)が名を連ねた。過去10年を振り返ると、そのうち7年は韓国人選手が賞金女王に輝いている。
米ツアーでも活躍しているため、11月16日時点の女子世界ランキングでも上位15名中7名が韓国人選手。しかし、東京オリンピックに出場できるのは各国最大4名までのため、世界ランキング上位に入れたところでオリンピック代表になれるとは限らないのが現状だ。
右足かかとの浮き上がりを抑えたインパクト
韓国人選手のスイングには共通する部分がある。特徴は、ダウンスイング以降浮き上がりを抑えた右足かかとだ。使用クラブが長い時ほど右足かかとは浮き上がりやすいが、ドライバーショットの時でも浮き上がりを抑えている。
昨季賞金ランキングトップ5の3選手も、右足かかとの浮き上がりを抑えたスイングをしている。また、米ツアーで活躍し、世界ランク2位のキム・セヨンの右足かかとにも同様の特徴が見える。
過去、4度の賞金女王に輝いたアン・ソンジュや、メジャー7勝、元世界ランキング1位のパク・インビにいたっては、フォロースルーでクラブが肩の高さあたりにくるまで右足かかとが上がらないベタ足だ。
右足かかとの浮き上がりを抑えると、インパクトでのスイング軸の右傾きや、腰が左に流れるスウェーの抑制につながり、ショットの安定感向上に効果がある。ちなみに渋野日向子は、今季開幕前のシーズンオフに右足かかとの浮き上がりを抑えるスイングに取り組んでいたようだ。
コンパクトなトップオブスイング
クラブが長くなるほど遠心力が大きくなるため、トップオブスイングも大きくなる。しかし、韓国人選手の多くはドライバーショットでもシャフトが地面と平行か、平行まで行かないコンパクトなトップオブスイング。そして、トップでクラブヘッドが頭側にくる(シャフトの向きが飛球線とクロスする)「シャフトクロス」になる選手が少ない。
シャフトクロスにならなければ、ダウンスイングでクラブヘッドが垂れ下がったりせず、安定したスイング軌道を描きやすい。
韓国の国家代表と代表常備軍争い
米ツアーで25勝、メジャーで5勝した朴セリの登場により、2000年代にブームが起こった韓国。それに伴いゴルフ人口も急増した。
韓国人選手の強さの理由は、トップレベル選手(国家代表や代表常備軍の候補選手)のための韓国ゴルフ協会主導による育成システムがあるからだと言われている。質、量ともに豊富な強化メニューをこなし競っている候補選手のレベルは高く、申・ジエですら国家代表入りが1度。アン・ソンジュやイ・ボミで代表常備軍止まりだった。
そのメニューの1つ「スイングメソッド」に右足かかとの動きや、トップオブスイングのバランスがあるようだ。活躍している選手の多くはこれらのメソッドに触れているため、共通の動きになるのだろう。
国家主導のシステムが機能して、世界基準の強い選手が続々と育っている韓国ゴルフ界。日本や米ツアーでの韓国人選手の強さは、今後も続きそうだ。
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