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MotoGP日本GP開幕!印象に残る日本GP名シーン3選

2019 10/18 06:00河村大志
オートバイ・ロードレースライダーの玉田誠Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2004年日本GP 王者ロッシに6秒以上の大差で勝利

日本グランプリ(日本GP)が「鈴鹿」から「もてぎ」に変わった初年度である2004年。日本人ライダーの玉田誠は参戦2年目を迎えており、今も現役のバレンティーノ・ロッシは全盛期だった。

この年ヤマハへ移籍したロッシは初年度にも関わらず、圧倒的な強さを見せチャンピオンに輝いた。そして、ロッシの地元であるイタリアのムジェロ・サーキットで互角に優勝争いをした玉田も、ブラジルのリオGPでマックス・ビアッジに差をつけて独走し、MotoGP初優勝を遂げている。王者ロッシと優勝争いを繰り広げ、一躍有名選手となった玉田は素晴らしい成績を残した。

日本GPの前戦であるポルトガルGPでポールポジションを獲得した玉田だったが、決勝レースではロッシに先行を許し2位でゴール。悔しさを滲ませつつ、「次のレースでは俺が勝つ」と宣言し、迎えた第12戦日本GP。母国での予選はプレッシャーが大きいにも関わらず、力強いパフォーマンスを発揮し、見事ポールポジションを獲得した。

日曜日に行われた決勝レースでも、玉田は主役だった。スタート直後はロッシに先行を許したものの、6周目のダウンヒルストレートで前に出ると、そこからハイペースで周回しトップに。王者ロッシに6秒以上の大差をつけ、今シーズン2勝目を達成。予選から決勝まで玉田のための週末だったと言っても過言ではなかった。また、この年カワサキに移籍した中野真矢も3位に入っており、日本人二人が表彰台に上る快挙を遂げた。

その後、現在に至るまで日本人ライダーが表彰台に上がれていないMotoGPクラス。中上貴晶が表彰台に立つ日が待ち遠しい。

2007年日本GP 若き王者が誕生!ストーナーが自身初チャンピオン獲得!

参戦2年目のケーシー・ストーナーが圧倒的な強さを見せた2007年。ストーナーのワールドチャンピオンが決定する状況で迎えた日本GPでは、ライバルであるバレンティーノ・ロッシがストーナーより上の順位でフィニッシュしなければならなかった。

予選2位からスタートしたロッシは順位を落とし、予選9位からスタートしたストーナーは一気に順位を上げていく。しかし、チャンピオンになるために前に出るしかないロッシも徐々にポジションを上げていき、この年3回目のウェットレースは波乱の展開に。

レース中盤。少しずつ路面が乾いていく中、ストーナーのチームメイトであるロリス・カピロッシがドライタイヤに交換するためピットイン。対して、ストーナーやロッシが形成するトップ集団はそのままステイアウト。その後、ストーナーもドライタイヤに交換するも、ロッシ、ダニ・ペドロサはピットインせずコースに残る。

ストーナーがピットインした翌周にようやくピットインしたロッシ。ところが、ハンドリングに不具合が起きた。すぐにコース復帰するものの、ハンドリングの問題は解決せず11コーナーでコースオフ。13位まで転落したロッシは、ストーナーのチャンピオン獲得を阻止することはできなかった。

結果は、いち早くピットインしたカピロッシが優勝。ロッシが後方に沈む中、6位でフィニッシュしたストーナーは弱冠20歳という若さで最高峰クラスを制覇。日本GPでのチャンピオン決定は史上初の出来事であり、日本のファンは新たな王者誕生を祝福した。

2017年日本GP 雨中の限界バトル!ドヴィツィオーゾが劇的優勝!

2017年は、2015年を除く全ての年でチャンピオンを獲得したマルク・マルケス(2013年にデビュー)と、最高峰クラスで初の王者を目指すアンドレア・ドヴィツィオーゾの二人による激しいバトルが度々あり、チャンピオン争いもあった年だ。特に印象的だったのは、日本GPだった。

ツインリンクもてぎで争われた第15戦日本GPの決勝レースは、あいにくの雨。気温や路面温度も低い最悪のコンディションで、一歩も引かない激闘が繰り広げられた。レースはファイナルラップ。マルケスは2位ドヴィツィオーゾに0.465秒の差をつけ、トップを走っていた。大逆転を狙うドヴィツィオーゾは、このコース最後の勝負ポイントである90度コーナーでマルケスを抜こうと考えていた。

90度コーナーの前には、下りの長いバックストレートがある。直線スピードが速いドゥカティに乗りブレーキングが上手いドヴィツィオーゾにとっては、絶好のオーバーテイクポイント。一方のマルケスも、ギリギリのブレーキングを得意としている。この二人の0.465秒という差は勝負を仕掛けるにはかなりの差があり、マルケス優勢のままコース中盤に差し掛かった。

ところが、マルケスが8コーナーのS字でミス。これにより、2位ドヴィツィオーゾとの差が一気に縮まった。ドヴィツィオーゾは90度コーナーで勝負を挑むべくマルケスの背後にぴったりとつき、バックストレートに突入。作戦通り難しい下りのブレーキングでマルケスのインを差し、トップに躍り出た。

残るは、左から右へと切り返す二つのコーナー「ビクトリーコーナー」を残すのみ。オーバーテイクポイントとは言えないコーナーだが、仕掛けてきたマルケス。しかし、少し膨らんだマルケスとビクトリーコーナーで交錯する格好になってしまう。結果、正確なラインで先に立ち上がったドヴィツィオーゾが0.249秒早くゴールした。

雨の中、激闘を繰り広げたマルケスとドヴィツィオーゾ。観客はその極上のバトルレースに酔いしれ、一瞬の瞬きさえも惜しんだ。