コーチの父・正和氏は冬季五輪2度出場の実力
158センチの小柄な体で軽やかなジャンプを次々と決め、演技を終えると両手を突き上げ、まだあどけない顔に屈託ない笑みが広がった。
原則15~18歳を対象とした4年に1度の第3回冬季ユース五輪が1月12日、スイスのローザンヌで行われ、フィギュアスケート男子で16歳のホープ、鍵山優真(神奈川・星槎国際高横浜)が殊勲の金メダルに輝いた。フリー1位の166.41点で合計239.17点をマークし、ショートプログラム(SP)3位からロシア勢の強敵を抑えて大逆転優勝だった。
昨年12月の全日本選手権で4連覇した宇野昌磨(トヨタ自動車)、五輪2連覇中の羽生結弦(ANA)に次いで3位に入った次代のエース候補。大会公式サイトによると「フリーは大好きなのでプレッシャーは感じなかった。次の大会への強い自信を与えてくれる」とコメントした。
指導する父の正和さんは元全日本王者で1992年アルベールビル、1994年リレハンメルの両五輪に2度出場した実力者。2022年北京冬季五輪を目指すフィギュア界の「サラブレッド」が待ち望んだ舞台で真価を発揮した。
「氷上のプリンス」4回転トーループ2本
ショートプログラム(SP)はジャンプ着氷後に壁にぶつかる思わぬミスが響いて3位にとどまり、首位のアンドレイ・モザレフ(ロシア)と6.96点差で迎えた最終滑走のフリー。映画『タッカー』の曲の軽快なリズムに乗り、冒頭の4回転トーループを成功させて勢いに乗ると、3回転ループ、4回転トーループからの連続ジャンプと難なく着氷。質の高いスケーティングで観客を魅了し、スピンとステップも最高難度のレベル4を獲得して「踊れるスケーター」の真骨頂を見せた。現地で「氷上のプリンス」との呼び名がつくほど会心の演技だった。
伸びやかなジャンプやエッジワークの技術点だけでなく、表現力を示す演技構成点でも高い評価を受ける総合力が鍵山の強みでもある。演技後半に組み込んだトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)にも成功し、強敵のロシア勢を上回る完成度を見せ、世界のジュニア世代でトップクラスの力を持つことをあらためて証明した。
憧れは宇野、羽生は「最強」と表現
国際オリンピック委員会(IOC)のインターネットテレビ「五輪チャンネル」でも次代のホープとして鍵山を興味深く紹介。インタビューでは「今は宇野選手が好き。今季はコーチがいない中で不調な場面もあったが、それでも諦めずに全日本に優勝してかっこいいなと思った」と憧れの宇野への素直な心境を語った。
大先輩の羽生について一言で表すなら「最強」と表現。2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストで今年からアイスダンスに転向した高橋大輔(関大KFSC)は「レジェンド」。グランプリ(GP)ファイナルで3連覇のネーサン・チェン(米国)は「王者」と表現し、ノーミスでいつも演技する風格を称賛。ジュニア・グランプリ(GP)ファイナルで初出場優勝した15歳のライバル佐藤駿(埼玉栄高)についてはジャンプの非凡さを認めた上で「天才」と語った。
武器は美しい滑り
5歳でフィギュアスケートを始め、昨年11月の全日本ジュニア選手権で初優勝。安定したジャンプと美しい滑りを武器に、2022年北京冬季五輪を最大目標に掲げる。
五輪チャンネルでは女子の五輪メダリスト、浅田真央の美しい滑りについても「芸術」と表現し、自身がスケーターとして目標に掲げる「完璧な演技」の到達点を示唆した。
次の大舞台は世界ジュニア選手権(3月・タリン)。日本の次代を担う朗らかな笑顔が魅力の「氷上のプリンス」にさらなる飛躍の予感が漂う。
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