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宇野昌磨、世界王者で迎える新シーズンへ「シャンソン」で原点回帰

2022 8/30 06:00田村崇仁
宇野昌磨,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

恩師の樋口美穂子コーチと3年ぶりのタッグ

フィギュアスケート男子で昨季の世界選手権を初制覇した24歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)が「自然体」の魅力を失うことなく、次なるステージへ一歩を踏み出した。

8月25日、横浜市のコーセー新横浜スケートセンターで夏のアイスショーシーズンの最後を飾る「フレンズ・オン・アイス」の公開リハーサルで新たなエキシビション・ナンバー「Padam,Padam(パダム パダム)」を初めて披露。振り付けを担当したのは、幼少期から指導を受けてきた樋口美穂子氏だ。

そこはかとない哀愁と華やかな調べが心地よい「シャンソン」のゆったりした名曲に乗って、どん底から曲折を経て世界王者にまで成長したスケーターが演じる姿は、メリハリの利いた宇野昌磨らしさを際立たせた。

ここ数年はアスリートとして大きな変化もあった激動期。アイスショーの場でも自分を磨く場にしたいと位置付け、3年ぶりのタッグ結成で原点回帰する再挑戦を印象付けた。

「自分の決めた道を」と表現力アップを決意

2018年平昌冬季五輪で銀メダルに輝いた宇野昌磨は翌年の2019年6月、5歳から指導を仰いできた山田満知子、樋口美穂子両コーチの下を離れるという大きな決断を下した。久しぶりに恩師の樋口美穂子氏とタッグを組む様子は、宇野昌磨の公式ユーチューブでも公開された。

幼少期から互いに知り尽くした間柄とあって、曲が始まる前の立ち姿やフィニッシュの細かい振り付けに笑顔でアドバイスを受ける姿に、元世界王者ステファン・ランビエル氏とはまたひと味違った信頼関係がにじみ出る。

宇野昌磨は「何事も焦らず、自分の決めた道を進んでいきたい。振り付けとかも、フィギュアスケートという競技を自分が選んだ以上、ジャンプが一番点数が出るとしても、表現がフィギュアの魅力の一つだと思うので、これからもアイスショーとかでそういう真価が発揮されると思う」とコメント。

「皆さんに少しでも違う一面とか、驚いていただいたり、楽しんでいただけるように、いろんなプログラムを滑っていけたらなと思います」と氷上での表現力アップへ新たな挑戦を誓った。このショーナンバーを1年間滑り込み、手応えがあれば来季のショートプログラム(SP)につながる可能性もあるそうだ。

今季GPシリーズはスケートカナダとNHK杯

今季の宇野昌磨は高難度の4回転ルッツ習得へさらなる「進化」を掲げ、新たなショートプログラム(SP)のブルースギター曲「Gravity(グラビティー)」(重力)に意欲を示す。

新フリーはバッハの「G線上のアリア」と公表しており、今季のグランプリ(GP)シリーズは第2戦のスケートカナダ(10月28~30日・ミシソーガ)、第5戦のNHK杯(11月18~20日・札幌)に日程は決まっている。

樋口美穂子コーチと原点回帰する時間と、コーチ不在の時期から救世主となってくれたランビエル・コーチとの信頼関係は比較できないだろう。

自身のユーチューブでは「ステファンだと、ステファンが(新たなプログラムを)自分で一人でやってできている。あれをまねしなきゃいけないんですけれど、(樋口)美穂子先生は昔からなんで、もう少しこうですかね、ああですかね、という感じで美穂子先生としかできない関係があると思います」と独特の信頼関係を語った。

宇野昌磨はファンから理想の選手像を聞かれると、最近は2022年北京冬季五輪金メダルのネイサン・チェン(米国)の名を挙げる。スケーターとしてもう一つ上の領域に踏み込み、新たなステージへ。世界王者になっても、宇野昌磨は「成長」を止めるつもりはない。

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