今季初戦は200点超えで順調な滑り出し
夢に見た北京冬季五輪の代表を逃し、悔し涙に暮れた挫折から心機一転を期すシーズン。フィギュアスケート女子で22歳の三原舞依(シスメックス)が8月14日、今季初戦となった「げんさんサマーカップ」(滋賀県立アイスアリーナ)でショートプログラム(SP)首位からフリーでも1位の138.45点で合計207.61点をマークして優勝し、再出発を順調に滑り出した。昨季の四大陸選手権で頂点に立った底力だった。
滋賀県大津市で牛肉などを販売する元三フード株式会社が支援する地方競技会は、シーズンが本格化する秋に向けたいわば「試運転」の大会。それでも2位に入った北京冬季五輪代表の河辺愛菜(愛知・中京大中京高)に27.94点の大差を付け、オフにカナダ・トロントでスケート留学も経験した成果を印象付けた。
所属チームのインスタでは「オフシーズンが今まで以上にあっという間で、気がついたらもう8月。無事初戦を迎えることができて嬉しいです!」と喜びのコメント。「会場の皆様の手拍子や拍手がまるで私の音楽のように感じて、幸せの空間の中滑っていました。観客席いっぱいのMaiバナーすごく嬉しかったです」と三原らしく感謝のメッセージを寄せた。
新SPは繊細な「戦場のメリークリスマス」
今季の新SPは美しいピアノの旋律に乗せた「戦場のメリークリスマス」で繊細な世界観を演じ、フリーでもイメージを一新する新プログラム「恋は魔術師」で真っ赤な衣装を着て情熱的なフラメンコに挑む構成だ。
げんさんサマーカップのSPでは得点源のルッツ-トーループの連続3回転で1.57点の加点を引き出し、3つのスピンとステップは最高のレベル4を獲得して69.16点をマーク。フリーでも音楽が演技途中でストップするアクシデントにも動じず、無音のまま観客の手拍子に乗って演技を続ける場面も。3回転ルッツからの3連続ジャンプを成功させ、終盤の優雅なステップやスピンも最高のレベル4と随一の安定感を見せた。
カナダの武者修行で学んだスケート技術
北京冬季五輪代表は3枠を懸けた2021年12月の全日本選手権で4位にとどまり、あと少しでつかみかけていた夢の切符を逃した。
その悔しさを胸に、2022年5月にはカナダ・トロントに遠征し、競技会から「卒業」を表明した五輪2連覇の羽生結弦さんのコーチとしても知られるブライアン・オーサー氏の下で約3週間、スケーティング技術を改めて学んだという。
自身のSNSでは「新たなチャレンジとして初めて短期のスケート留学という形でトロントに行ってきました。zoomで大学院の先生方や友達とディスカッションをしたり、身体中バキバキで湿布を全部使い切ったり、20日間があっという間でした」などと競技面だけでなく、充実した生活ぶりを報告した。
今季の目標は「世界選手権と四大陸出場」
全身の関節が痛む「若年性特発性関節炎」という難病や体調不良を乗り越え、今春に甲南大大学院へ進学。昨季の世界選手権女王に輝いた坂本花織(シスメックス)と同じ中野園子コーチに師事し、信頼するチームメートとともに笑顔が絶えない競技環境は充実している。
今季は11月11~13日にグランプリ(GP)シリーズ第4戦の英国大会(シェフィールド)、11月25~27日の最終戦、フィンランド大会(エスポー)に出場する予定だ。
日本スケート連盟によると、今季の抱負として「世界選手権、四大陸選手権に出場できるよう、新たなチャレンジとともに今シーズンも元気に滑ります!」とコメント。今季の三原のキーワードはカナダに武者修行もした「新たなチャレンジ」―。本人も楽しみなシーズンへ大きな一歩を踏み出した。
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