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高橋大輔、9年ぶりの世界選手権で村元哉中と示した成長への余白

2022 3/31 06:00田村崇仁
アイスダンサーの高橋大輔とフィギュアスケート選手の村元哉中ペア,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

目標のトップ10届かずも結成2季目の超進化

アイスダンサーとして9年ぶりに世界選手権(フランス・モンペリエ)の舞台に戻ってきた36歳の高橋大輔(関大KFSC)は、世界も認めた「超進化」の過程とさらなる成長への余白を示し、29歳の村元哉中(関大KFSC)と組んだ結成2季目のシーズンを終えた。

日本の伝統をユニークな音楽と振り付けでアレンジした「ソーラン節&琴」のリズムダンス(RD)は、67.77点で15位。クラシックバレエの名曲「ラ・バヤデール」を独自の世界観で演じた上位20組によるフリーでは、96.48点の16位。合計164.25点で16位となり、目標のトップ10には届かなかったものの、1月の四大陸選手権(タリン)で日本勢過去最高の銀メダルを獲得するなど、2人が紡ぎ出すアイスダンスの新たな価値を世界にアピールし、着実な成長を証明した。

振り返ってみれば、国際試合は日本勢のみだった2年前のNHK杯を除いて4戦目。世界選手権の現地実況でも「彼らは一流で素晴らしいスケーター。ここまで来るのに本来もっと時間がかかるのに既にとてもハイレベルだ」と感嘆の声が上がった。

演技後の中継局インタビューで、村元が語ったコメントは素直な心境だろう。細かいミスを反省しながらも「大ちゃんがシングルからアイスダンスという初心者からたった2年でここまで来られたのは本当にすごいことなので悔しいけど感動もしている」と山あり谷ありの道を振り返った。

ツイズルとリフトでわずかなほころび

RDは2人同時に連続でターンする見せ場のツイズルで高橋がバランスを崩し、スコアを思い描いたように伸ばせなかった。「ショックというかやってしまったな、という思いでいっぱい」と高橋も悔しさを隠さなかったが、シングル時代から国際舞台の経験は豊富といえども、アイスダンス特有のツイズルは別世界で難しく「一番不安要素ではあった」と振り返る。

今季の締めくくりとなったフリーでは転向2季目で「超進化」の躍進を支えてきたリフトでわずかなほころびが出た。今大会から変更した新たな技、回転しながら滑る中盤のローテーショナル・リフトが安定せず、レベルを取りこぼした。「成長過程」でさらなる高みを目指す中、本人たちも悔しがる痛いミスとなったが、まだまだ「伸びしろ」があるとも捉えられるだろう。

専門メディアも「かなだい」を称賛

世界選手権のアイスダンスは北京冬季五輪金メダルのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組(フランス)が世界最高を更新する合計229.82点で3年ぶり5度目の優勝を果たし、地元で熱狂の幕を閉じた。

そして結成2季目の「かなだい」が残した足跡も決して小さくない。国際スケート連盟(ISU)は「歴史をつくる2人」の記事を掲載し、公式インタビューで村元が日本伝統のソーラン節について「漁師が水揚げをするときに唄う歌」などと英語で説明したように、世界も日本のアイスダンサーに高い関心を寄せている。

専門メディア「インサイド・スケーティング」では「村元と高橋がアイスダンスの世界に持ち込んだ彼らのバレエを観るのは、何という喜びでしょう。われわれはNOと言わせない。彼らの成長が見たい」と願いを込めて称賛した。

フリーを終えた高橋は中継局インタビューで「2年間ずっと突っ走ってきたので。続けるにしても続けないにしても、ちょっとゆっくりして考えたいなと思う」と慎重にコメントを選び、来季への去就は明言しなかった。それでもアイスダンサーとして自らの「課題」を見つめ克服しようという向上心が言葉の端々に漂う。

2人が思い描くストーリーはまだ続きがあるのか―。

4月はアイスショー「スターズ・オン・アイス」にアイスダンサーとして参加を予定している。

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