欧州選手権初制覇の15歳、世界最高連発の「タノジャンプ」
北京冬季五輪のフィギュアスケート女子で金メダル大本命とされるのは、ロシアが生んだ「最高傑作」と評される15歳のカミラ・ワリエワだ。
今季シニアデビューした天才少女は幼少期にバレエや体操を習った柔軟性の高さを生かし、ショートプログラム(SP)、フリー、合計の全てで世界最高得点を連発。空中で両手を上げる「タノジャンプ」と呼ばれるスタイルでサルコーとトーループの4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を軽々と跳び、美しいスピンや表現力も豊か。
1月15日、エストニアのタリンで行われたフィギュアスケートの欧州選手権ではSPに続いてフリーも168.61点で1位となり、圧巻の内容で合計259.06点で初出場優勝を果たした。
アンナ・シェルバコワが237.42点で2位、アレクサンドラ・トルソワが234.36点で3位に入り、ロシア勢が表彰台を独占したが、最近は合計得点で世界トップ選手の2人を引き離すほど総合力の高さを見せている。
「絶望」の異名、フリーで転倒も大崩れせず
他の選手が「絶対に勝てない」と意気消沈するほど強すぎるため、ロシアメディアが付けた異名は「絶望」。欧州選手権のSPは自身が持つ世界最高得点を更新する90.45点をマークして首位発進し、まさに他選手にとっては「絶望」としか言いようがない演技だった。
冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を軽やかに決め、出来栄えで3.54点も稼ぐ最高の滑り出し。3回転フリップ、後半のルッツ―トーループの2連続3回転も難なくこなした。表現力を示す演技構成点は全5項目で9点台。美しいスピンも最高評価のレベル4を獲得した。
一方、フリーの「ボレロ」では珍しくミスも出た。ジャンプ2本目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で珍しく転倒し、演技後半の4回転トーループからの3連続ジャンプも乱れた。
それでも大崩れしない強さは圧巻だ。技術点と表現面を示す演技構成点はともにトップ。転んでも昨季の世界選手権女王のシェルバコワに21.64点の大差をつける圧勝で、夢の金メダルに挑む北京五輪へ弾みをつけた。
ザギトワと同じ門下生、努力の天才
同じ15歳で前回の2018年平昌五輪女王に輝いたアリーナ・ザギトワ(ロシア)を指導したエテリ・トゥトベリゼ・コーチに師事。2020年世界ジュニア選手権で頂点に立った逸材は順調にステップアップし、ジャンプだけでなく、長い手足を生かした表現力で今や世界を席巻する。英才教育と「努力の天才」ともいわれる鍛錬の積み重ねで、身長160センチながら大人のムードも醸し出せるようになった。
昨季まで世界を席巻したシェルバコワや高難度の4回転を駆使するトルソワらタレントぞろいのロシア勢においても、ワリエワは「別格」とみなされるほど将来を有望視される存在。そのすごさはジャンプ、スケーティング技術、スピン、ステップ、表現力の全ての能力が非常に高いことだ。では弱点はあるのか―。
結論から言えば、弱点が全く見当たらないのが「絶望」との異名を取る彼女の強みだが、唯一挙げるとすれば、欧州選手権で顔をのぞかせた密度の高い演技構成から来る「ミスの連鎖」だろう。
北京大会は美しい4回転ジャンプと豊かな表現力で世界が「ワリエワ劇場」に魅了されるか。それとも大波乱は起きるのか。ロシアの新星は優勝候補の大本命で北京のリンクに立つ。
【関連記事】
・宇野昌磨が北京五輪で4回転計5本を成功させるための「新たな武器」
・フィギュアスケート女子歴代五輪金メダリスト、北京は15歳ワリエワ最有力
・坂本花織「フェラーリ」の大型エンジンで北京冬季五輪メダルに挑戦