SP2位発進も国際大会で自己最低順位
フィギュアスケート世界選手権(26日、スウェーデン・ストックホルム)女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)で2位スタートを切った紀平梨花(18)=トヨタ自動車=は、126.62点、合計205.70点で痛恨の7位。国際大会では自己最低順位だった。
日本は上位2人の順位合計が「13」で北京五輪の出場最大3枠を確保した。優勝はロシアのアンナ・シェルバコワ(17)が合計233.17点、2位から3位もロシア勢が表彰台を独占した。
試合後のインタビューで紀平は「力を出し切れず申し訳ない気持ちでいっぱい」と述べていたが、この言葉に少し違和感を感じないだろうか。
ルール改定でジャンプ合戦の現状
紀平はルール改定でジャンプ合戦となっている女子ルールに従ってトリプルアクセルや4回転を余儀なくされ、ロシア勢(毎回体重管理や年齢が上がるとメンバーは変わる)と戦わねばならない。
従来のフィギュアは全体の美しさと技のバランスがとれているルールであったことは、金メダルの荒川静香を思い出すとわかるのではないだろうか。いつからルールをジャンプ合戦にしたのだろう。
これは男子も同じことが言え、本来の美しい総合的フィギュアの良さを欠いているルールになりつつある気がする。メダルを取れず申し訳ないとコメントさせる18歳に対して、我々大人は考えなくてはいけない部分はないだろうか。
本来、自分たちにできないことを彼女がやっているのだから、次につなげられるように見守ってあげるのが筋。そこへメダルがないからと責める大人はどの程度いるだろうか。彼女はそれを察してか、マスコミやその他周りの大人に「申し訳ない」と言ったのだろう。
紀平といえ普通の女の子である。調子が良いときもあれば悪いときもあり、ロシア軍団のジャンプ合戦の犠牲者にならないように、本来の「魅せる」フィギュアを推進すべきではないか。ジャンプだけで点数を取ることがフィギュアではないはずだ。
ジャンプで得点稼ぐロシア勢
世界女王となるために準備してきた紀平はトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も2本とも失敗。目の前でロシア勢のすごみを見せつけられ、ロシア連盟の選手として出場し、ショートプログラム(SP)12位と出遅れたアレクサンドラ・トルソワ(16)が4回転ジャンプを2度成功させてフリーでは1位の152.38点をマーク。合計217.20点の3位に食い込んだ。
トルソワは4種類5本の4回転ジャンプという構成で、まさにジャンプで得点を稼ぐといった戦法だ。もちろんこれが悪いわけではないが、ほかができなくても飛びさえすると技術点が加算される今のルールは、フィギュアをつまらなくしていないか。美しい一連の流れよりも大技だけを見るフィギュアになっていないか。
ロシアは加点をもらう方法だけを追求していることが多い。唯一2位のベテラン24歳のトクタミシェワは、大技ではなく一つ一つ丁寧な仕上がりで総合的な表現力を出す本来のフィギュアの流れに沿っているから、長く続けられているのだろう。
「『もっとしなきゃいけない、足りないよ』って言われている」と紀平。この悔しさが、紀平をさらに強くするのだから申し訳ないと思う必要はない。北京では流れるような中に技を入れたフィギュアらしい演技の紀平を応援したい。
【関連記事】
・紀平梨花が羽生結弦と同じ早稲田大進学で北京五輪「金」を目指す理由
・足踏み続くフィギュア本田真凜、北京五輪へジュニア時代の輝き取り戻せるか
・フィギュア坂本花織が復活、北京冬季五輪へ表現力も成長