復帰戦でNHK杯4位、全日本は5位
フィギュアスケート女子の2017年四大陸選手権女王、21歳の三原舞依(シスメックス)が体調不良を克服して笑顔でリンクに戻ってきた。
1シーズン全試合欠場の休養を経て、今季は2020年11月のNHK杯で合計194.73をマークして4位に入り、12月の全日本選手権では合計203.65点を出して5位。2シーズンぶりの全日本は会場から「お帰りなさい」と拍手と歓声に包まれ、演技直後のテレビインタビューで「最初からちょっと泣きそうだった。楽しんで滑れた。全ての瞬間、何もかもがうれしくて」と周囲のサポートやファンに感謝した。
10代の時も関節が痛む「若年性特発性関節炎」という難病を乗り越えて競技に復帰した精神力の強さを改めて印象付けた形だ。その原動力は、苦しくてもいつも笑顔で競技に向き合う「スケート愛」と感謝の心に支えられている。
完全復活へ坂本花織の存在が励み
情感あふれる表現力と安定感のある演技が持ち味の三原は2019年夏ごろ、体に異変が起きた。食事が取れても、筋力や体力が低下していったという。原因不明のまま療養が続き、リンクから遠ざかることになった。
そんな苦境を救ったのは、長年指導を受ける中野園子コーチをはじめ周囲の支えだった。新型コロナウイルスの影響で氷上練習ができない期間も長かったというが、所属先が同じで2018年平昌冬季五輪代表の坂本花織の存在が大きな励みとなった。ファンから届いた多くの励ましメッセージも不安に揺れる気持ちを後押ししてくれた。
「ヘアドネーション」で髪の毛を31センチ寄付
2020年10月の近畿選手権で実戦復帰し、一歩ずつ復活の道を歩む。2021年の決意は日本スケート連盟の公式ツイッターで「もっともっと強いアスリートになっていけるように、しっかり練習を積んで、全てのことでレベルアップができるように頑張っていきたいなって思っています」とコメントした。
三原は自分の髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」の経験もあるアスリートだ。病気や不慮の事故などで髪の毛を失った人にウィッグ(かつら)を贈るための活動として知られるが、高校生になって自分でも寄付できることを知って、31センチの髪の毛を寄付したという。
競技以外にそんな活動に取り組むのも「何か社会に貢献できたら」という純粋な思い。周囲に支えられる自分と向き合い「恩返し」の思いが曲との調和や表現が求められるフィギュアスケートへの原動力になっている。
勝負の北京五輪シーズン「もっと強くなる」
2シーズンぶりに復帰した全日本ではステップやスピンでも最高難度のレベル4を獲得し「先生方や家族、友達、ファンの声援のおかげでここまで戻ってこられた。ステップもレベル4はびっくり。朝練習で一つ一つのターンを明確にしてきた成果が出た。練習は裏切らない」との言葉もインタビューで残した。
小学校2年の時にテレビで見た浅田真央さんの演技に憧れて始めたフィギュアスケート。2018年平昌冬季五輪出場を逃し、もっと強くなると誓った2021―2022年シーズンは北京冬季五輪も待つ。トップ争いに名乗りを上げるまで、力は戻ってきた。今季もまたトレードマークの「舞依スマイル」を心待ちにしたいところだ。
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