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フェンシングのエペ、フルーレ、サーブルの違いは?ライトセーバーが新種目に

2019 11/17 06:00田村崇仁
リオ五輪の太田雄貴(左)Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ルーツは中世の騎士による剣術

ヨーロッパ中世の騎士による剣術がルーツとされるフェンシングは、ピストと呼ばれる幅2メートル、長さ14メートルの試合場で剣を突いて戦う1対1の格闘技だ。

「アン・ギャルド(構え)!アレ(はじめ)!」などの審判用語をはじめ、公用語としてはフランス語が使われている。欧州の競技人口は多く、特にフランスとイタリアは五輪でも伝統と実績がある。ロシア、ハンガリーなど欧州諸国も世界を代表する選手を多く輩出。その歴史や基礎からもう一度学ぶと、醍醐味や奥深さが改めて分かるだろう。

近代五輪では1896年の第1回大会から実施される伝統競技。全身を攻撃できるエペ、相手の顔と腕を除く胴体部を突くフルーレ、上半身を突くだけでなく斬ることもできるサーブルの3種目がある。

個人は1ピリオド3分の3ピリオド制で15点先取。3ピリオド終了時に両者とも15点を取れない場合は、得点の多い方が勝ち。同点の場合は1分間の延長戦を行い、先に取った方が勝者となる。

4人で構成される団体は9試合をこなし、トータルで先に45点を取った方が勝ちとなる。有効部位に剣が一定以上の力で触れると、通電する電気審判機が導入されている。

史上初の銀メダルは太田雄貴

日本勢は2008年北京五輪男子フルーレ個人で太田雄貴が2位となり、史上初の歴史的なメダルを獲得。2012年ロンドン五輪ではフルーレ団体(太田、千田健太、淡路卓、三宅諒)で銀メダルに輝いた。

ちなみに国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長(当時西ドイツ)も1976年モントリオール五輪のフェンシング男子フルーレ団体で金メダルに輝いた元剣士である。

全身攻撃で最も人気高いエペ

エペは「決闘」を起源とする種目で、有効面が足の裏を含めた全身と最も広く、本場欧州で人気が最も高い。全身を攻撃できるため世界で最も選手層が厚い種目でもある。

突けば得点となり、3種目の中で唯一、相打ちも存在し、0.04秒以内に突き合った場合は「相打ち」として両者に得点が入るルール。頭脳戦、接近戦の緊迫感を楽しめる種目になっている。

近年の日本勢は底上げが進み、日本フェンシング協会が東京五輪を見据えて最重点種目として集中強化。現在、世界ランキング1位の見延和靖(ネクサス)は196センチのリーチを生かしたつま先への突き、フレッシュと呼ばれる飛び込みを得意技としている。2016年リオデジャネイロ五輪6位。ワールドカップ(W杯)では見延、加納虹輝(早大)が優勝しており、団体でもメダルを期待できる有望種目だ。

胴体部を突くフレーレ

精密機器の正確さを求められるフルーレは有効面が「胴体部」と狭く、突きのみが得点となる。先に剣先を相手に向けた方に「攻撃権」「優先権」が与えられ、相手が剣を払うなどしてかわせば権利が移る。

ターゲットは胴体。剣をしならせて相手の背中を突く「振り込み」と呼ばれるハイレベルな大技は太田が得意としていた。日本がお家芸としてきた種目であり、男子の松山恭助(JTB)や敷根崇裕(法大)、女子の上野優佳(埼玉・星槎国際高)らが五輪の有望株。瞬時の技と動作の応酬が見どころだ。

斬りのサーブル

ハンガリー騎兵隊の剣技から競技化したサーブル。フェンシングの中でも特にスピーディーに勝敗が決する種目だ。リーチだけでなく、俊敏性も強みとなるため近年はアジア勢の躍進がめざましい。

日本勢も「エリートアカデミー育ち」の江村美咲(中大)らが表彰台を見据える。フルーレとエペが「突き」だけなのに対し、サーブルには「斬り(カット)」があり、狙うのは上半身だ。一撃必殺を目指し、豪快な剣さばきが求められる。

頭や両腕を含む上半身が「有効面」となり、各選手は主に相手の頭、腕、胴体などを狙って攻撃する。ルールはフルーレと同様「優先権」に基づき、先に腕を伸ばして剣先を相手に向けた選手が優先権を獲得し、相手が防御すると優先権が移る。

「突き」に加えて「斬り」の技が加わる分、よりダイナミックな攻防が見られるのも特徴だ。

「ライトセーバー」が第4の種目に?

欧州の本場、フランスでは今年に入り、人気SF映画「スター・ウォーズ」に登場する武器「ライトセーバー」(光剣)を使った対戦を一つの「種目」として正式に認可した。発光ダイオード(LED)の剣で映画のように相手を切れるわけではないものの、映画のエンタメと中世の騎士道がルーツのスポーツを融合させた新時代の動きとして話題を呼んでいる。

五輪種目フルーレ、エペ、サーブルに続き、奇想天外な「第4の種目」の創設。現代の大人や子どもにはびこる運動不足という「ダークサイド」と格闘する「ジェダイ」の騎士に見立てる向きもあり、ルールは3分間の制限時間で15点先取。頭部や体への打撃は5点、腕や脚は3点、手は1点を得られる。本格的な普及はこれからで、2024年パリ五輪での実施には間に合わない見通しだが、若者を中心にエンタメと融合した画期的な挑戦が注目されている。