5月28日にエドアルド・ヌニェスと王座決定戦
プロボクシングのIBFスーパーフェザー級3位・力石政法(30=大橋)が5月28日に横浜BUNTAIで同級1位エドアルド・ヌニェス(27=メキシコ)と王座決定戦に臨む。力石は世界初挑戦。WBOバンタム級王者・武居由樹(大橋)の防衛戦とダブル世界戦で、セミファイナルとして行われる。
3月17日の会見では「なかなか世界戦を組める階級じゃないんで、やっとこの時が来たかと思っている。世界王者になるために30年間生きてきた。チャンスは一度しかないと思ってるんで、しっかりと獲ります」と豪語した。
力石は三重県鈴鹿市出身で、現IBFライトフライ級王者・矢吹正道(LUSH緑)の弟でもある。複雑な家庭環境で育ち、18歳から2年間、少年院生活を送ったため、2017年7月にプロデビューした時は23歳になっていた。
2022年5月に渡邉卓也(DANGAN AOKI)を判定で下して東洋太平洋スーパーフェザー級王座に就くと、2023年1月には木村吉光(志成)に5回TKO勝ちでWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王座も奪取。2024年3月にはイタリアに渡り、WBCスーパーフェザー級シルバー王者マイケル・マグネッシ(イタリア)を最終12回に3度倒して逆転TKO勝ちした。
それまで兄と同じ名古屋のLUSH緑ジムに所属していたが、大橋ジムへ移籍。同年10月に移籍初戦として臨んだフィリピンフェザー級王者アルネル・バコナ戦に2回KO勝ちし、IBF王座決定戦のチャンスをつかんだ。
日本人には壁が高いスーパーフェザー級
現在、日本の現役世界王者は7人。しかし、軽量級に集中しており、最も重い井上尚弥(大橋)でもリミット55.34キロのスーパーバンタム級だ。
リミット58.97キロのスーパーフェザー級は、日本から過去10人の世界王者が誕生。「シンデレラボーイ」西城正三や2階級制覇の柴田国明、後にライト級も制する畑山隆則、11度防衛の内山高志、「ボンバーレフト」三浦隆司らパワーとスピードがともに必要な中量級らしい名王者が名を連ねる。
しかし、尾川堅一が2022年6月にIBF王座から陥落したのを最後に挑戦すらままならない状況。軽量級の充実ぶりに比べると、日本の中量級以上は世界との距離が開いているとも言える。
しかも相手のエドアルド・ヌニェスは28勝(28KO)1敗のハードパンチャー。身長168センチと力石より約9センチ低いが、まともに打ち合うと危険極まりない。15勝(10KO)1敗の力石も好戦的なタイプとはいえ、182センチのリーチを活かして離れて戦うのが現実的だろう。
会見では「ボディー攻めとかしてくる嫌なタイプのパンチャー。対策は100パターンくらいあるけど内緒です」とあらゆるパターンを想定してトレーニングを積んでいることを明かした。
兄は3月29日にフライ級王座挑戦
本名は「佐藤」だが、兄が漫画「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈にちなんだリングネームをつけたことから、自身はライバルの力石徹から取った。
その兄は3月29日に愛知県国際展示場でIBFフライ級王者アンヘル・アヤラ(メキシコ)への挑戦を控えており、弟の力石も前日に名古屋入りしてセコンドにつく予定。「兄が勝たないと、兄弟同時世界王者の夢がなくなるんで、まずは兄に勝ってもらいたい」と野望を口にする。
「あしたのジョー」の力石徹も少年院あがり。出所後、2階級下の矢吹丈と対戦するために過酷な減量を乗り越えて体重を落とし、KO勝ちした後に息を引き取った。安全最優先の今では考えられないようなストーリーだが、昭和の名作漫画はオールドファンの記憶に残っている。
力石政法も「人生の集大成。勝ったらいつ死んでもいいくらいの意気込みです」と強い決意を明かす。不利の予想は否めないが、大番狂わせを演じて、兄弟世界王者として矢吹正道とリング上で握手できるか。漫画でも描けない、名作を超えるサクセスストーリーは5月28日に横浜で上演される。
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