カミル・バラとの打撃戦制して7回TKO勝ち
プロボクシングの東洋太平洋・WBOアジアパシフィックウエルター級2冠王者・佐々木尽(23=八王子中屋)が3日、東京・有明アリーナで東洋太平洋8位、WBOアジアパシフィック10位カミル・バラ(35=オーストラリア)に7回52秒TKO勝ちで防衛に成功した。
試合は序盤から激しいド突き合いとなり、3回に挑戦者をコーナーに追い込んだ王者が左フックをテンプルに決めて最初のダウン。その後もタフなバラと激しい打撃戦を展開し、7回に強烈な左フックをクリーンヒットしてロープに追い込んだところでレフェリーがストップすると同時にバラは背中から崩れ落ちた。
プロキャリアで一度もKO負けのなかったバラを倒し、自慢の強打を見せつけた佐々木はこれで18勝(17KO)1敗1分け。世界ランキングはWBA4位、WBC5位、IBF4位、WBO3位と4団体とも上位につけており、井上尚弥と同じリングで念願の世界挑戦に向けて最高のアピールとなった。
ⒸLemino/SECOND CAREER
日本で唯一、世界王者が誕生していないウェルター級
試合後、リング上で「待ってろ世界!」と雄叫びを上げた佐々木。ファンを喜ばせるド派手な倒しっぷりと明るいキャラクターで魅了するプロフェッショナリズムは眩い輝きを放つ。
ただ、66.6キロがリミットのウェルター級は日本人未踏のクラス。ミドル級以下では唯一、世界王者が誕生しておらず、挑戦すらままならないのが現実だ。日本ボクシング界の長い歴史上でも世界ウェルター級王座に挑んだのは辻本章次、龍反町、尾崎富士雄、佐々木基樹ら数えるほどしかいない。
日本では重い階級だが、世界的にはスピード、パワーともに必要な中量級。軽量級はアジアや中南米など地域が限定されるが、ウェルター級は世界中の猛者が集う。現役の世界王者はWBAが15勝(9KO)1無効試合のエイマンタス・スタニオニス(リトアニア)、WBCが29勝(18KO)2敗のマリオ・バリオス(アメリカ)、IBFが32勝(29KO)1無効試合のジャロン・エニス(アメリカ)、WBOが26勝(20KO)2無効試合のブライアン・ノーマン・ジュニア(アメリカ)と精鋭が揃っている。
過去をさかのぼってもシュガー・レイ・ロビンソン、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、オスカー・デラホーヤ、フェリックス・トリニダード、フロイド・メイウェザー・ジュニア、前4団体統一王者テレンス・クロフォードら枚挙に暇がない。
ウェルター級では世界ランキングに名を連ねるだけでも誇らしいことなのだ。
歴史を彩ってきた東洋太平洋ウェルター級王者の系譜
佐々木はまだまだ粗削りのため現段階で世界挑戦しても勝算は低い。ただ、一打必倒の可能性を秘める左フックのパワーは世界でもトップクラス。一発当たれば大番狂わせがあっても不思議ではない。
まだ23歳と若く、焦る必要は全くない。時期尚早の世界挑戦をして敗れた場合、ランキングが大きく下がり、再浮上は容易ではないからだ。しっかりトレーニングを積み、世界の強豪と手合わせして経験値も上げてからでも遅くはないだろう。
佐々木が持つ歴代の東洋太平洋ウェルター級王座は先述の龍反町、尾崎富士雄、佐々木基樹のほか、元国際ジム会長の高橋美徳、12連続KOのムサシ中野、世界スーパーウェルター級王座に挑んだ南久雄、強烈な左フックで一時代を築いた吉野弘幸、現在も日本タイ記録の15連続KOをマークした渡部あきのりら歴史を彩ってきた人気王者が多かった。
佐々木がその系譜を受け継ぐボクサーであることは間違いない。さらにその先、誰もが夢見ながら届かなかったウェルター級の頂に上り詰めることができるか。希代のパワーヒッターの真価が問われるのはこれからだ。
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