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ボクシング世界王座防衛回数ランキング ジョー・ルイスの25度は不滅なのか?

2023 6/22 06:00SPAIA編集部
ウォルコット戦のジョー・ルイス,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

井上尚弥の最多防衛はバンタム級時代の8度

プロボクシングは主要4団体に17階級(WBCは18階級)あり、近年は強い王者ほど1階級に長く留まらず、複数階級制覇を目指すことが増えた。日本でも井岡一翔(34=志成)が史上初の4階級制覇を達成し、井上尚弥(30=大橋)も4階級制覇を目指して7月25日にWBC・WBOスーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)に挑戦する。

井岡はWBOスーパーフライ級の6度(防衛後に返上)、井上は4団体統一の陰に隠れがちだが、その過程でWBAバンタム級を8度防衛しており、自身のキャリアで最多となっている。井上も口にしたことがあるが、自分より格下の相手との防衛戦となるとモチベーションの維持に苦労することもあるだろう。

戦う男の性(さが)なのか、自分よりも強い相手に挑む方が燃えるのがボクサーだとすれば、王者として防衛を続けるより、さらに強い相手を求めて階級を上げるのも納得はいく。

とはいえ、今のように複数階級制覇が珍しくなくなると、逆に防衛記録の価値が相対的に高くなる。改めて世界王座の防衛記録にスポットを当ててみたい。

ボクシング世界王座防衛回数ランキング

75年前に25度防衛を果たしたジョー・ルイス

現在も世界のボクシング界で最多防衛記録として君臨するのが、元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(アメリカ)の25度。ジャージー・ジョー・ウォルコットを倒して25度目の防衛を果たしたのが1948年だから、75年も前の記録だ。

2位がWBOライトヘビー級王座を23度防衛したダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド)。アマチュアで150戦のキャリアを積み、ドイツからプロデビューすると1994年にWBOライトヘビー級王座を獲得した。その後、WBAとIBF王座も吸収して3団体統一。10年近くかけて23度の防衛を果たした。

3位は日本でもお馴染みのリカルド・ロペス(メキシコ)。1990年10月、現在は井上尚弥の所属ジム会長でもある大橋秀行からWBCミニマム級王座を奪うと、平野公夫(ワタナベ)やロッキー・リン(台湾)を下すなど日本のリングにも上がりながら22度の防衛を重ねた。WBA王者ロセンド・アルバレス(ニカラグア)との統一戦で引き分けたが、51勝(37KO) 1分けと生涯無敗のまま現役を引退した。

歴代4位の21度の防衛記録を持つのがスベン・オットケ(ドイツ)。1998年10月にIBFスーパーミドル級王座を奪うと2004年3月に21度目の防衛を果たすまで一度も負けることなく、34戦全勝(6KO)の戦績を残してグローブを吊るした。

もう一人、4位で並ぶのがジョー・カルザゲ(イギリス)。1997年10月にWBOスーパーミドル級王者となり、2007年11月まで21度の防衛を果たした。カルザゲもまた、46戦全勝(32KO)のパーフェクトレコードを残して引退した。

日本最多は具志堅用高の13度

また、日本の防衛記録も見ていこう。ランキングは以下の通りとなっている。

日本の世界王者防衛回数ランキング


1位はWBAライトフライ級王座を13度防衛した具志堅用高(協栄)。1976年10月、プロ9戦目でファン・ホセ・グスマン(ドミニカ)を7回KOで破ってから1981年3月にペドロ・フローレス(メキシコ)に12回KO負けするまで、軽量級離れしたアグレッシブなファイトでファンを魅了した。

具志堅の記録にあと一歩まで迫ったのが山中慎介(帝拳)。「神の左」と呼ばれた切れ味抜群の左ストレートでKOの山を築いたが、2017年8月の13度目の防衛戦でルイス・ネリ(メキシコ)に敗れ、タイ記録はならなかった。ネリはその後、ドーピング検査で陽性反応が出て2018年3月に再戦が決まったものの、今度は前日計量で体重超過の大失態。試合も山中が2回TKO負けで、後味の悪さを残した。

3位はWBAスーパーフェザー級王座を11度防衛した内山高志(ワタナベ)。2010年1月に12回TKOでベルトを奪うと、破格の強打で防衛を重ねた。2016年4月に12度目の防衛戦でジェスレル・コラレス(パナマ)に2回TKO負けで王座陥落。同年大晦日の再戦でも判定負けし、引退を決めた。

4位は長谷川穂積(真正)の10度。2005年4月、14度防衛していたWBCバンタム級王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)から王座を奪い、2010年4月にWBO王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)に4回TKO負けし、11度目の防衛に失敗した。長谷川はその後、フェザー級、スーパーバンタム級王座も奪取して3階級制覇を達成した。

5位はWBCフライ級王座を9度防衛した勇利アルバチャコフ(協栄)。ロシアでアマチュアボクサーとして活躍後、来日してプロデビューすると1992年6月にムアンチャイ・キティカセム(タイ)に8回KO勝ちして世界王座を獲得した。10度目の防衛戦で暫定王者チャッチャイ・ダッチボーイジム(タイ)に敗れて引退した。

6位は8度防衛の徳山昌守(金沢)、亀田興毅(亀田)、寺地拳四朗(B.M.B)、井上尚弥が並んでいる。井上尚弥はWBOスーパーフライ級王座を7度防衛しており、新井田豊(横浜光)、西岡利晃(帝拳)、田口良一(ワタナベ)とともに10位タイにもランクイン。こんな時代だからこそ、いつか防衛記録を更新するボクサーの出現が期待される。

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