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ボクシング世界王者からプロモーターに転身した伊藤雅雪氏インタビュー②カシメロvs井上尚弥実現に意欲

ジョンリエル・カシメロと伊藤雅雪氏,ⒸNAOKI FUKUDA
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ⒸNAOKI FUKUDA

5月13日にカシメロが再起2戦目

プロボクシングの元WBO世界スーパーフェザー級王者で、引退後に「トレジャーボクシングプロモーション」を設立してプロモーターとして活躍している伊藤雅雪氏(32)がSPAIAの単独インタビューに応じた。

2022年12月3日、今年4月15日といずれも韓国で興行を打った伊藤氏は、自身3度目の興行をフィリピンで行う。

5月13日に高級カジノホテル「オカダマニラ」でWBOスーパーバンタム級5位ジョンリエル・カシメロ(34=フィリピン)と同級10位でWBOグローバル同級王者のフィリップス・ンギーチュンバ(27=ナミビア)のカードがメイン。昨年12月に1年4カ月ぶりのリングに上がり、赤穂亮に2回KO勝ちしたカシメロの再起2戦目だ。

「グローバル王座は聞き慣れないと思いますが、WBOでは権威のあるタイトルです。今、カシメロは5位で、勝てば1位に近付くのは間違いありません。井上尚弥選手がフルトンとやるけど、その後のウェイティングサークルに持っていきたい。そのためにWBOのタイトルマッチを組みました」

現WBOスーパーバンタム級1位の井上尚弥(30=大橋)は7月25日に東京・有明アリーナで同級王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)に挑戦することが決まっている。その勝者に挑戦するにはカシメロの世界ランキングを上げておく必要がある。

「(昨年12月の)僕らの大会に出た後、カシメロにはトップランクやゴールデンボーイからもオファーが来たみたいです。彼が試合をできる状況というのをみんな信じてなかったんですね。でも、TB(トレジャーボクシングプロモーション)との契約を選んでくれました。ファイトマネーとか条件面でもしっかり応えていきます」

なんと世界的プロモーターのボブ・アラム率いるトップランクや、オスカー・デラホーヤが引退後に設立したゴールデンボーイ・プロモーションズもカシメロに触手を伸ばしたという。バンタム級王者時代に井上尚弥を再三挑発していたカシメロは、それだけ実力と話題性を兼ね備えており、商品価値は高いということだ。

そのカシメロと複数試合の契約に成功した伊藤氏は、井上尚弥がフルトンに勝てばカシメロとの「因縁の対決」をぜひ実現したいと意気込む。

「そこがカシメロのゴールだと思ってます。今回の相手も1敗しかしてなくてKO率も高い選手(12勝11KO1敗)。マニラでやるんで地元のファンにアピールしてもらいたいですね。亀田和毅選手と日本でやっても面白いかなと思ってます」

井上尚弥戦だけでなく、WBOスーパーバンタム級9位・亀田和毅(31=TMK)の名前も挙げ、カシメロを世界に売り出していく戦略を練っている。

体質の古いボクシング界に新風を

ボクシングには長い歴史がある分、古い慣習が残っていたり、時代の変化に即応できないもどかしさもある。元世界3階級王者の亀田興毅氏も現在はプロモーターとして「3150FIGHT」というボクシングイベントを行っている。

「僕も現役時代にジム移籍で悩まされたし、簡単にはできませんでした。ボクシングは村みたいなものなので、いいところもあるけど、今の時代に合った形にすることも必要だと思ってます。ボクシング界に若い人が少ないけど、亀田さんも30代(36歳)だし、僕も32歳なので、ちょっとずつ新しい風を吹かせられるかなと思っています」

4月15日に韓国で行った興行では、EXILEの松本利夫さんがリングアナを務めた。コアなボクシングファンを満足させるような魅力的なマッチメイクだけでなく、ライトな層を引き寄せたい目論見もある。

「中身はリアルなボクシングで、現場を華やかにしていきたいですね。よりボクシングを身近に感じてもらえるように、ティックトックとかいろんな媒体も活用していきたいです」

伊藤雅雪氏

ⒸNAOKI FUKUDA

年内に日本でもイベント開催へ

5月のフィリピン興行も含め、3度とも海外での開催となっているのは現地のカジノと手を組んでマネタイズしているからだ。アメリカ・ラスベガスもそうだが、海外ではカジノのあるホテルなどでボクシングの試合が行われることも少なくない。スポーツでありながらショー的な側面もある。

大阪・夢洲(ゆめしま)で計画されているカジノを含む統合型リゾート(IR)は2029年開業と伝えられている。いよいよ日本でもラスベガスのような、ボクシングの新たな聖地が誕生する可能性もある。

「カジノに関して言えば、日本で必ず一番にやりたいと思ってます。その頃にはもっと組織を大きくしておきたいですね」

年内に日本で興行を打つ準備も進めており、「年内に1回は日本でやりたいです。カジノじゃないけど、広告も集めてます」と打ち明ける。

「出来る限りボクシングを追求していきたい。調整試合も必要だと思いますが、興行のメインにはチャレンジする試合を作りたい。実力が拮抗して、どっちが勝つんだろうとワクワクするような試合を提供していきたいです」

そう話す伊藤氏の目は真剣そのもの。ボクサーとして世界の頂点に立った男の新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。これからどんなビッグマッチを実現してくれるのか、楽しみに待ちたい。

《プロフィール》
伊藤 雅雪(いとう・まさゆき)1991年1月19日、東京都江東区出身。駒大高時代はバスケットボール部に所属。駒大在学中にプロボクサーとしてデビューし、2018年7月にWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得。1度防衛。2022年4月に吉野修一郎に11回負傷判定で敗れて引退。通算戦績27勝(15KO)4敗1分け。引退後にトレジャーボクシングプロモーションを設立し、プロモーターとして活躍中。

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