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井上拓真が真価を問われる世界戦、「尚弥の弟」の呪縛から解放されるか

2023 4/7 06:00SPAIA編集部
井上拓真,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

4月8日にリボリオ・ソリスとバンタム級王座決定戦

プロボクシングのWBA世界バンタム級2位・井上拓真(27=大橋)が4月8日、東京・有明アリーナで同級王座決定戦に臨む。

世界バンタム級王座を4団体統一した兄・尚弥(29=大橋)がスーパーバンタム級転向のため、4本のベルトを返上。空位となったWBA王座を同級3位のリボリオ・ソリス(41=ベネズエラ)と争う。

井上拓真は神奈川・綾瀬西高時代にインターハイで優勝し、3年生として在学中の2013年に大橋ジムからプロ転向。後のWBOミニマム級王者・福原辰弥にデビュー戦で判定勝ちした。

2018年12月、ペッチ・CPフレッシュマート(タイ)に判定勝ちしてWBCバンタム級暫定王座を獲得。2019年11月にWBCバンタム級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に判定負けして王座統一に失敗した。

以降は東洋太平洋バンタム級王座、WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座を獲得するなど4連勝(1KO)。戦績を17勝(4KO)1敗とし、今回が3年半ぶりの世界戦となる。

独占ライブ配信する「Amazonプライムビデオ」の「4・8那須川天心デビュー戦直前スペシャル」と題した特別番組のエピソード3で、拓真は今回に懸ける思いを明かしている。

「(バンタム級に)兄がいるから世界戦ができないのは知っていた。その期間、自分のダメな部分を修正して自分のボクシングを完成させるという意味でも、待ちましたけどこのタイミングがベストだなと思います。こないだ兄と久々にスパーリングしたけど、それまでもらっていたパンチもよけられたりしてるんで、自分でもレベルが上がってると実感しました」

王座陥落後はスーパーバンタム級で戦う機会も多かったが、兄・尚弥の転級によってバンタム級に戻し、ようやく巡ってきたチャンスに燃えないはずがない。兄と同じバンタム級の4団体統一を目標に掲げ、「尚弥の弟じゃなくて井上拓真というのを全面に出していきたい」とプライドをのぞかせている。

山中慎介から2度ダウンを奪ったソリス

ソリスは41歳でピークは過ぎているものの、決して楽な相手ではない。

2011年にWBAスーパーフライ級暫定王座を獲得し、2013年5月には正規王者だった河野公平に判定勝ちして王座統一。2013年12月にはIBF同級王者・亀田大毅と統一戦が組まれたが、計量でウェイトオーバーして王座剥奪され、ソリスが判定勝ちしたものの亀田大毅はIBF王座を保持するという騒動もあった。

2016年にはWBCバンタム級王者・山中慎介から2度のダウンを奪いながら判定負け。その後もジェイミー・マクドネルやギジェルモ・リゴンドウらと世界戦を行って敗れている。戦績は35勝(16KO)6敗1分け。長い間、世界のトップクラスで戦い続ける大ベテランだ。

同番組に出演している元世界ミドル級王者・村田諒太は「あの時(山中戦)の実力が残っていたら厳しい相手。ものすごくしつこい。山中先輩のパンチにも12ラウンド耐え切ったし、リゴンドウとやってダウンを取られても12ラウンド続けた」と歴戦の強者を高評価する。

元3階級王者の長谷川穂積も「ソリスはキャリアがあって、独特のリズムで打ってきてリーチも長い。崩しにくい選手」と中南米選手特有のやりにくさを指摘。その上で「待ちに待った世界戦で思いをぶつけてほしい」と拓真にエールを送った。

村田諒太が指摘する「兄の陰」

KO率は低いもののテクニックへの評価は高い。ただ、どうしても井上尚弥と比較されるため、KO勝ちの少なさが物足りなく映るのが現実だろう。

村田は「一撃にこだわりすぎ。兄の陰があるんでしょうね。でも、兄ほどのパンチ力がある選手ではない。KO、TKOにもっていくまでのプロセスを兄と違うものを作らないといけない」と指摘する。

強いパンチで倒そうとするのではなく、連打でレフェリーストップを呼び込むような戦い方ができればノックアウトも増えるはず。実力とともに人気も上がっていけば、いずれ「尚弥の弟」の呪縛から解放される日がやってくる。

4月8日の同じリングでは、WBA・WBCライトフライ級王者・寺地拳四朗(31=B.M.B)の防衛戦や那須川天心(24=帝拳)のデビュー戦も組まれている。メインイベント級の試合が続く中で、拓真は存在感を発揮できるか。真価を問われる一戦となりそうだ。

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