寺地拳四朗が京口紘人に7回TKO勝ちで王座統一
プロボクシングのWBC・WBAスーパー世界ライトフライ級タイトルマッチが1日、さいたまスーパーアリーナで行われ、WBC王者の寺地拳四朗（30＝BMB）がWBAスーパー王者の京口紘人（28＝ワタナベ）を7回2分36秒TKOで破り、2団体のベルトを統一した。
日本人同士の王座統一戦は2012年6月にWBCミニマム級王者だった井岡一翔がWBA同級王者・八重樫東に判定勝ちして以来2度目。日本選手の複数団体統一はその井岡と現WBA・WBC・IBF3団体統一バンタム級王者・井上尚弥 、IBF・WBOミニマム級の高山勝成、WBA・IBFライトフライ級の田口良一に続いて史上5人目の快挙となった。
試合は寺地が立ち上がりから左ジャブを効果的に使い、自分のペースに持ち込む。京口はガードを固めてカウンターを狙うが手数が少ない。5回には寺地がワンツーでダウンを奪い、立ち上がった京口を攻め込んだが、打ち疲れた終盤には京口の反撃を食らい、場内はヒートアップ。それでも7回に寺地の右ストレートがクリーンヒットすると、京口は力なくフラフラとロープ際に後退。とどめを刺しにかかった寺地をレフェリーが止めた。
2学年違いの両者は、アマチュア時代にも4度対戦。関西大の寺地が大阪商業大の京口に3勝1敗と勝ち越しており、ある程度、手の内は分かっていただろう。京口の驚異的な頑張りによって試合は盛り上がったが、内容的には寺地の完勝だった。
今後は3団体統一戦に向かう可能性が高い。この日のセミファイナルで岩田翔吉（26＝帝拳）の挑戦を退けたWBOライトフライ級王者ジョナサン・ゴンサレス（31＝プエルトリコ）は、試合後のインタビューで寺地対京口戦の勝者と戦いたい意向を示している。寺地もゴンサレスとの統一戦を望んでおり、ランキング1位選手との指名試合期限を除けば障壁は少ない。
また、11戦全勝（9KO）のIBF王者シベナティ・ノンティンガ（23＝南アフリカ）もターゲットの一人。マッチメークは両陣営だけでなく、プロモーターなど利害関係者の思惑が複雑にからむため一筋縄にはいかないが、いずれにしても今後の寺地にはビッグマッチが待っていそうだ。
世界に配信された王座統一戦
寺地は元東洋太平洋ライトヘビー級王者の寺地永を父に持ち、アマチュアで58勝（20KO）16敗。父が経営するBMBボクシングジムからプロデビューし、10戦目でWBC世界ライトフライ級王座を獲得した。
スピードあふれる左ジャブを主体にしたテクニシャンで関係者の評価は高かったが、いかんせん迫力に欠けるため人気が出ない。日本選手歴代6位タイの8度まで防衛回数を伸ばしてもテレビで生中継されず、試合は村田諒太や井上尚弥の前座として行われ、わずか数分間のハイライト映像が流れるだけだった。
さらに2020年には酒に酔って他人の車を破損させる騒動を起こし、制裁金300万円、3カ月間のライセンス停止などの処分を受けた。2021年9月には9度目の防衛戦で矢吹正道に10回TKO負けして王座陥落。この頃が寺地にとっては最も苦しい時期だったことは想像に難くない。
しかし、一連のショッキングな出来事で8度防衛のテクニシャンは逞しくなった。2022年3月の矢吹正道との再戦に3回KO勝ちで王座復帰。それまでの距離を保つアウトボクシングだけでなく、インファイトもできる成長した姿を披露した。
そして今回の王座統一劇。日本人同士の試合にもかかわらず、試合後のインタビューでは寺地のコメントが英語に通訳されていたことを不思議に思った視聴者もいただろう。
日本ではAmazonプライム・ビデオで生配信されたが、京口がイギリスのプロモーション会社「マッチルーム・スポーツ」と契約していたため、同社と契約する有力選手の試合を中継しているDAZNが世界各国に配信し、アメリカではESPN+が配信。これまで輝かしい実績を残しながら日本国内でさえ生中継されなかった寺地が、一気に世界の目の肥えたボクシングファンや関係者の目に留まったのだ。
コロナ禍で大会場に集客することが難しくなり、放映権料を支払うテレビ局の体力低下もあって、ボクシング界は急速に動画配信のスタイルが定着しつつある。30歳で自身のキャリアがピークを迎えつつある寺地にとっては、全てのタイミングが合致したと言えるだろう。
井上尚弥や村田諒太らの陰に隠れていた希代のテクニシャンが、ようやく歩み始めた日の当たる道。寺地のボクシング人生はこれからが本番だ。
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