6月7日、ノニト・ドネアと3団体統一戦
日本ボクシング界の至宝・井上尚弥(29=大橋)がノニト・ドネア(39=フィリピン)と再戦する「ドラマ・イン・サイタマ2」が迫ってきた。プロボクシングのWBA・IBF・WBC世界バンタム級3団体統一戦が6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われる。2019年11月7日に同会場で行われた初対決は井上が判定勝ちだった。果たして今回はどんな展開になるだろうか。
WBAとIBFのタイトルを持つ井上はバンタム級の4団体統一を目指しているが、コロナ禍などもあって統一戦が実現せず、ドネア戦後はジェイソン・モロニー(オーストラリア)、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)、アラン・ディパエン(タイ)をいずれもKOで退け、防衛を重ねてきた。
その間、再起したドネアはWBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)に4回KO勝ちして再びベルト奪取。昨年12月にレイマート・ガバリョ(フィリピン)を倒して初防衛し、今回のリターンマッチに臨む。
井上は勝てば日本人初の3団体統一王者。残るはWBOだけとなり、年内にも4団体統一への期待が膨らむ。とはいえ、雪辱に燃えるドネアも今回にかけるモチベーションは井上以上に高い可能性がある。プロ通算48戦42勝(28KO)6敗、フライ級からフェザー級まで5階級制覇した歴戦の強者を、井上は返り討ちにできるのか。
ドネアのKO負けはフェザー級での1試合のみ
前回の対戦では、2回に井上がドネアの左フックで初めて右まぶたをカット。流血するハンデを負いながらも11回には強烈なボディブローでドネアをダウンさせ、3-0判定の完勝だった。
スピードの差は歴然としており、39歳という年齢から大きな上積みを望めないドネアに負ける可能性は低い。右まぶたの古傷は気になるが、ボクシングIQの高い井上が同じ失敗を繰り返すとは考えづらく、ドネアの強打には十分に敬意を払った上でスピードにものを言わせるだろう。焦点はKOラウンドと見る。
ドネアはボクシングキャリアにおいて6度の敗戦を喫しているが、KO負けは1度しかない。
2001年のデビュー2戦目の判定負けは参考にならないため度外視するとして、唯一のKO負けはWBA世界フェザー級スーパー王者だった2014年10月18日、同級正規王者ニコラス・ウォータースに喫したもの。3回と6回にダウンを奪われて無冠となり、その直後にスーパーバンタム級に戻った。
元々フライ級で身長170センチのドネアは、ビッグマネーを稼ぐために階級を上げて5階級制覇したが、フェザー級は無理があったのかも知れない。実際、今は2階級下のバンタム級で戦っている。適正階級よりウェイトの重いボクサーのパンチをまともに浴びたとすればKO負けも仕方ないだろう。
それ以外では、キューバ出身でシドニー五輪とアテネ五輪の金メダリスト、ギジェルモ・リゴンドーとのスーパーバンタム級統一戦は12回判定負け。2016年11月のヘスス・マグダレノ戦(WBOスーパーバンタム級)、2018年4月のカール・フランプトン戦(WBOフェザー級暫定王座決定戦)も12回終了のゴングを聞いている。
井上との第1戦も痛烈なダウンを喫しながらも耐え切った。バンタム級では世界トップレベルのスピードとパワーを誇る井上でも、ドネアを倒し切るのは簡単な仕事ではないのだ。
KOのカギはボディブロー
井上は2018年10月のWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)1回戦でファン・カルロス・パヤノを70秒で倒した。たった2発のパンチで相手の顎を打ち抜いたKO劇は、井上の名前を世界中に知らしめる最高のデモンストレーションとなった。
しかし、打たれ強いドネアに同じパンチを当てても倒せるとは限らない。いや、ベテランの老かいなテクニックで簡単にクリーンヒットはさせてもらえないだろう。やはりカギはボディブローだ。じわじわとスタミナを奪い、終盤に攻勢をかけてロープに詰めたところでレフェリーストップというシーンが目に浮かぶ。
ただ、望めるならドネアに10カウントを聞かせたい。テクニカルノックアウトではなく、完璧なノックアウトを見たい。今がピークとも思える井上ならそれが可能だ。6月7日、さいたまスーパーアリーナで何が起こるか。一瞬たりとも目が離せない。
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