4月9日にボクシング世界ミドル級王座統一戦
4月9日、さいたまスーパーアリーナで、日本ボクシング界史上最大ともいわれるビッグマッチが行われる。
元3団体統一ミドル級王者で現IBF世界王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)とWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)が拳を交える2団体王座統一戦だ。
この試合は2021年12月29日に行われる予定となっていたが、新型コロナウイルスの急拡大で政府が外国人の新規入国を禁止したために、延期となっていたもの。17戦連続KOを含め計21度にわたって世界タイトルを防衛し、プロ・アマ通じてノックダウン、ストップ負けの経験がないゴロフキン有利との見方が多数だが、村田にとっては意外な部分につけ入る隙が存在しているかもしれない。
ゴロフキンにとって村田との一戦は、ボクシングキャリアで数少ない悔しさを晴らすための前哨戦ともいえるからだ。
ゴロフキンの過去の戦績
ゴロフキンのプロでの戦績は41勝(36KO)1敗1分。18戦16勝 (13KO) 2敗を記録している村田諒太のそれを大幅に上回る。
2010年から2018年にかけてWBAの世界王座を19度防衛し、ミドル級ではバーナード・ホプキンス(アメリカ)の20度に次ぐ歴代2位の防衛記録を保持。WBA、WBC、IBFのベルトを獲得し3団体統一王者に君臨していた時期もあるなど、ボクシング界屈指のスターだ。2018年にキャリア唯一の黒星を喫し王座を失ったものの、翌2019年にIBF王座を再度獲得。2020年12月にはカミル・シェルメタを破り、防衛に成功している。
KO率は83.7%というハードパンチャーでありながら、試合の組み立ても上手いゴロフキンの戦績についた1敗1分という余計な数字。つけられた相手はいずれもパウンド・フォー・パウンド1位にランキングされる「カネロ」ことサウル・アルバレスだ。
ゴロフキンとカネロは2017年と2018年に2度対戦し、1度目は多くの識者がゴロフキン優勢と述べた微妙な判定で引き分け。決着をつけるべく挑んだ2度目は、0-2判定で敗戦。この時もゴロフキン優勢だったのではとの意見が多く、陣営にとって不満の残る試合となっている。
全ては唯一敗れた「カネロ」を倒すために
人格者としても名高いゴロフキンは村田諒太との試合に向けたモチベーションの高さを語っており、目の前の試合だけを見据えていることは確かだろう。これまでの圧倒的な戦績は、その集中力の高さによって作られてきた。
だがゴロフキンにとって最も闘志を搔き立てられる相手は、「カネロ」以外にあり得ない。
ゴロフキンは村田戦、カネロは5月のWBAライトヘビー級スーパー王者ディミトリー・ビボル(31=ロシア)戦を挟み、両者が勝利すれば9月に再戦すると噂されている。
ロブ・ブラント(31=アメリカ)に1度は敗れるも再戦に向けてスタイルを変更、明確な進化を遂げ完勝した村田は決して安牌な相手ではないが、テクニックや経験値ではゴロフキンが凌駕している。
この試合に勝利し仮にカネロとの3戦目が実現すれば、1度目や2度目以上に注目を集めることは間違いなく、2戦の悔しさを晴らす絶好の機会となる。そのためにも、是が非でも勝利しなければならない。
村田としては、わずかな付け込む隙はそこにある。ゴロフキンは次戦がチラつき「勝たなければならない」という過度なプレッシャーを背負う可能性がある。
一方、ロンドンオリンピック金メダリストで、日本人として竹原慎二以来22年ぶり2人目のミドル級世界王者は、この試合へのモチベーションで上回っており、たとえ敗れても失うものは少ない。
どちらにとっても未来を左右する、興行規模が20億円以上ともいわれるビッグマッチはKO決着必至。ボクシングファンにとって垂涎物の一戦のゴングは、刻一刻と迫っている。
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