「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

世界王者を輩出した日本のボクシングジムランキング ワタナベが急浮上

2023 5/10 06:00SPAIA編集部
谷口将隆,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

世界から注目される日本ボクシング界

プロボクシングの井上尚弥がバンタム級で4団体統一するなど日本ボクシング界は活況を呈している。長い歴史上でも世界的な評価や注目度で言えば今が最も高いのではないか。動画配信の広がりもあり、井上尚弥に限らず日本のボクサーは世界から熱い視線を注がれている。

日本でプロボクサーになるには、日本ボクシングコミッション(JBC)に加盟するボクシングジムに所属する必要がある。では、どのジムが世界王者を多く出しているのだろうか。プロモート契約のみの外国人選手を除き、日本で活動実績のある男子世界王者の輩出数をランキングにしてみた。

男子世界王者を輩出した日本のボクシングジムランキング

1位は13人の協栄、2位は12人の帝拳

1位は13人の世界王者を輩出した協栄ジム。白井義男、ファイティング原田に続いて日本で3人目の世界王者となった海老原博幸を始め、海外で世界タイトルを奪取して「シンデレラボーイ」と呼ばれた西城正三、13度防衛の具志堅用高、ワンパンチKOでベルトを強奪した上原康恒、引退後はタレントとしても活躍した渡嘉敷勝男、アイドル級の人気を誇った鬼塚勝也、旧ソ連から来日して世界フライ級王座を9度防衛した勇利アルバチャコフ、勇利とともに来日してライト級王座を6度防衛したオルズベック・ナザロフら多士済々だ。

他にも佐藤修、亀田興毅、坂田健史、佐藤洋太、亀田和毅が名を連ねており計13人は国内最多。2019年に休会後は会長が交代し「協栄新宿ボクシングジム」に改称したが、2022年8月から再び協栄ジムとして復活した。金平桂一郎元会長は、亀田和毅が新設したTMKジムの会長として活動している。

2位は12人の名門・帝拳。5度目の防衛に成功後に交通事故死した「永遠のチャンピオン」大場政夫、1ラウンドKOで王座奪取した浜田剛史、ベネズエラから来日して3階級制覇したホルヘ・リナレス、ボクシングの本場・米国でも高く評価された西岡利晃、アマチュアエリートからプロ転向して2階級制覇した粟生隆寛、バンタム級王座を12度防衛した山中慎介ら、そうそうたる面々だ。

他にも下田昭文、五十嵐俊幸、三浦隆司、木村悠、尾川堅一らを輩出し、日本2人目の世界ミドル級王者としてゲンナジー・ゴロフキンと激闘を繰り広げた村田諒太も輩出。本田明彦代表は世界的なプロモーターとしても活躍しており、名実ともに日本ボクシング界を引っ張ってきた存在だ。

今後はキックボクシングからボクシングに転向した那須川天心の世界奪取が期待される。

3位にワタナベが急浮上、「チャンピオンメーカー」ヨネクラは4位

3位に急浮上したのがワタナベジム。強打でスーパーフェザー級王座を11度防衛した内山高志、粘り強さで2度王座に就いた河野公平、WBAとIBF王座を統一した田口良一、WBAライトフライ級スーパー王座に就いた京口紘人を輩出。さらに2021年12月に谷口将隆がWBOミニマム級王座を獲得、2023年4月には重岡銀次朗、重岡優大が兄弟で同時に世界ミニマム級暫定王座に就いた。

4位はヨネクラジム。現役時代はフライ級、バンタム級の世界ランカーだった米倉健司会長が1963年に設立し、5人の世界チャンピオンを育て上げた。

2階級制覇の柴田国明、日本人で初めてライト級を制したガッツ石松、駒大からプロ転向してライトフライ級王座に就いた中島成雄、「150年に1人の天才」大橋秀行、華麗なディフェンスで「アンタッチャブル」と呼ばれた川島郭志と実力派が揃う。他にも多くの東洋太平洋王者や日本王者を輩出して「チャンピオンメーカー」と呼ばれたが、米倉会長の高齢などを理由に2017年に閉鎖された。

5位には3ジムが並んだ。角海老宝石ジムはサウスポーの強打者・小林光二、タイから来日してミニマム級王座に登り詰めたイーグル京和(イーグル・デン・ジュンラパン)、ライト級を制した小堀佑介、2016年大晦日に世界王座に就いた小國以載の4人を輩出している。

横浜光ジムは2階級制覇の人気ボクサー・畑山隆則、ミニマム級王座を7度防衛した新井田豊、スーパーバンタム級を制した李冽理、アメリカで王座奪取し、伴流ジムから移籍した伊藤雅雪の4人となっている。

5位タイに並ぶのが、井上尚弥を擁する大橋ジム。現役時代はヨネクラジムで世界ミニマム級のベルトを巻いた大橋秀行会長が設立し、初めての世界王者となった川嶋勝重、3階級制覇の「激闘王」八重樫東、世界のパウンド・フォー・パウンドに名を連ねる井上尚弥、その弟・井上拓真の4人だ。ほかにも世界ランカーや有望選手が多く、最も活気のあるジムのひとつと言えるだろう。

8位タイに三迫、国際、大阪帝拳など7ジム並ぶ

8位タイには7ジムが並んだ。輪島功一、三原正の重量級王者2人とライトフライ級の友利正を輩出した名門・三迫ジム。

「KO仕掛人」と呼ばれたロイヤル小林や技巧派・レパード玉熊とセレス小林の3人を輩出した国際ジム。

帝拳グループの大阪帝拳からは、関西のジムで初の世界王者となった渡辺二郎、「エンドレスファイター」六車卓也、カリスマ的人気を誇った辰吉丈一郎の3人がベルトを巻いた。

現役時代の赤井英和も在籍していたグリーンツダからは、名トレーナー、エディ・タウンゼント最後の教え子・井岡弘樹、華麗な技巧でライトフライ級を制した山口圭司、後に移籍して4団体のベルトを巻いた高山勝成が世界王者となった。

神戸市にある真正ジムは、千里馬神戸ジムで長谷川穂積のトレーナーを務めていた山下正人会長が独立して開設。長谷川以外にも久保隼と山中竜也の世界王者を育てた。

亀田ジムはトラブルで協栄ジムから契約解除された亀田3兄弟の受け皿として設立され、興毅、大毅、和毅が世界王者となった。

名古屋にある緑ジムはスーパーフライ級とバンタム級を2階級制覇した戸高秀樹、WBAスーパーフライ級王座を2度防衛した飯田覚士、WBCライトフライ級王座を8度防衛していた安定王者・寺地拳四朗からベルトを奪った矢吹正道を輩出している。

コロナ渦でジムが経営難に陥ったという話も伝えられたが、世界王者の存在は若者に夢を与え、多くのボクサーの目標となる。これからも一人でも多く、世界王者が誕生することを祈るばかりだ。

【関連記事】
ボクシング階級別世界王者一覧、日本選手未踏の階級は?
村田諒太のベストバウトは?世界ミドル級王者の偉大な足跡
3回TKO!井上尚弥の所属ジム・大橋秀行会長は「令和のチャンピオンメーカー」