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【Bリーグ】チームバスケットで進化を遂げた名古屋D、優勝争いへの課題は?

2022 2/22 11:00ヨシモトカズキ
齋藤拓実,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

伝統のオフェンスを強化して西地区3位

折り返しを迎えたBリーグの順位を見ると、西地区1位の琉球ゴールデンキングス、同2位の島根スサノオマジック、同3位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズの健闘が光っている。

琉球は指揮官が桶谷大氏に変わったものの、ここ数年で積み重ねてきた組織力の高いチームに機動力のある選手が加わり、質の高い攻守を見せる。島根は#3安藤誓哉、#14金丸晃輔の日本代表選手を獲得したことで一気に上位に躍り出た。

一方、名古屋Dは主力の退団や外国籍選手の総入れ替え、ヘッドコーチの交代など大なたを振るったチーム。Bリーグ発足以降は中位にいたものの、抜け出すには何かを変える必要があった。

前身の三菱電機時代から“オフェンス”が持ち味。個人技の高い外国籍選手や日本人選手の3Pシュートで得点を稼いできた。 布陣が大きく変わった今シーズンも、攻撃に対する方針は変わらなかった。

まず指揮官には昨シーズンまで滋賀レイクスターズを率いたショーン・デニスヘッドコーチが就任。スペースをうまく使った戦術を用いて、決して戦力が充実していると言えない滋賀で各選手の個性を最大限に生かした。オフェンスに対する意識が高い指揮官だ。

そして選手では#3伊藤達哉、#11須田侑太郎、アジア特別枠を含めて4名の新規外国籍選手を獲得。エースだった安藤周人がアルバルク東京に移籍したことに加え、新たな戦力もいきなり大黒柱を張れるような選手は不在だったが、伝統のオフェンス力は衰えるどころか、さらに強大になっている。

攻撃回数の増加をチーム全体で生み出す

今シーズンいきなり結果が出ている要因の一つに、デニスヘッドコーチのバスケットを熟知している選手が在籍していることがある。

#0小林遥太、#2齋藤拓実、#32狩野祐介は滋賀時代に、須田はデニス氏がアシスタントコーチだった栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)時代に指導を受けており、齋藤はデニスヘッドコーチの下で急成長した選手。齋藤自身は昨シーズン名古屋Dに移籍し、今シーズンは“恩師”が後を追う形で移ってきた。

昨シーズンまでヘッドコーチだった梶山信吾氏は齋藤を中心としたチームを作り、デニスヘッドコーチも攻撃のタクトを齋藤に託した。ここまで残している11.8得点、6.0アシストは立派な数字だ。

そして滋賀時代と違うのが、齋藤の控えに伊藤がいること。齋藤と伊藤、ともに170cm代前半とサイズ的には不利だが、卓越したパスとボールハンドリングを誇り、リーグ全体でも次世代を担う選手として期待されている。

そうした優秀な2人の司令塔に率いられたチームは、得意の攻撃をさらに押し上げている。平均得点は81.4から89.8に、アシストは21.5から24.3まで伸びている。これはいずれもリーグトップの数字だ。

ここまでの伸びの要因となっているのは齋藤と伊藤のゲームメイクに加えて、攻撃回数の増加が挙げられる。オフェンスリバウンドが昨シーズンに比べて4本を近く増加(7.9→11.7)しただけでなく、スティールも5.3から8.3になったこともあり、シュート試投数は60.8本から69.4に。1試合あたり10本近くシュートが増えた上に、成功率も約2%上げているのである。

そもそも昨シーズンのオフェンスリバウンドの本数はリーグ最下位。今シーズンは新規加入の#43スコット・エサトンが平均3本を記録していることが大きく、日本人選手がサイズに関係なくリバウンドに絡んでいることもあり、数字が微増していることも興味深い。

先述したようにデニスヘッドコーチが得意とするスペースを生かした攻撃で、各選手がインサイドに飛び込みやすくなっているのだろう。またスティールは齋藤と伊藤に、#1レイ・パークスジュニア、#4コディ・クラークと身体能力の高い外国籍選手の存在が大きい。

1選手の力ではなく、チーム全体で底上げをしていることで大崩れが少なく、敗れた9試合のうち、10月24日の滋賀戦に31点差で敗れた以外は最後まで接戦を演じている。

接戦の弱さをどんな戦術で切り抜けるか

チーム改革1年目の今シーズンは立て直しになると思われていたが、ここまでの成績を残しているのは立派だと言える。後半戦にかけて琉球や東の強豪と戦うため、ここから真価が問われるだろう。

選手層が厚く、チーム全員で戦っていることで求められるのが接戦時のクラッチプレーヤーの出現だ。31点差で敗戦した滋賀戦以外は接戦になっているということは、裏を返せば接戦に弱いということ。9敗のうち実に6試合が1桁点差となっているのだ。

7選手が平均7得点を挙げているが、平均で20点以上取っている選手は不在。相手に的を絞らせずどこからでも点が取れることは強みだが、接戦時は絶対的な攻め手を欠くため弱みにもなる。

安定感のあるエサトンがインサイドで踏ん張るのか、3Pシュートと身体能力が持ち味のクラークに任せるのか、はたまた齋藤のスピードに賭けるのか、様々な選択肢がある中、接戦時にデニスヘッドコーチがどのような戦術を用いるのか注目したい。

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