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東日本大震災から10年、Bリーグで奮闘する仙台と福島の今

2021 1/3 17:00鳴神富一
仙台89ERSの月野雅人ⒸTomikazu Narukami/BOOST the GAME
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ⒸTomikazu Narukami/BOOST the GAME

地元の希望の光として輝く東北の2チーム

2011年3月11日、東北沖を震源とする巨大地震が日本を襲った。東北地方を中心に、深い悲しみや苦しみを我々に与えた「東日本大震災」。2021年、あの未曾有の自然災害から10年が経とうとしている。

大きな被害に見舞われながら、今も懸命に前を向いている人々がいる中で、地元の光となっているチームがある。現在、B2東地区に所属する仙台89ERSと福島ファイヤーボンズだ。

コロナ禍で迎えた2020−21シーズン、いつどうなるのか分からない中で、強豪ひしめく10チームの東地区での戦い。悲願のB1昇格を果たすべく、奮闘する両チームの今を追った。

「地元への恩返し」を掲げ、B1昇格が絶対目標の仙台89ERS

東日本大震災が起こった時、彼らは仙台から新潟で行われる試合に向かう為、バスで移動していた。急遽試合が中止となり、翌日夜に戻った街の風景は一変していたのである。チームはシーズン中止という形になり、バスケットボールという一番大切にしているものを失った。

選手たちは避難所での支援物資運搬など、自分たちを育ててくれた街のために支援を行い、自分達ができる事をひたすら続けた。そこからファン・ブースターが署名活動を行い、存続を訴えた事もあり、存続の危機からチームは灯を再び点したのである。

それから月日が経ち、あの時チームの顔としてプレーしていた志村雄彦は今シーズンからチームの代表取締役社長に就任し、先頭を切ってB1昇格の為に動き続けている。

昨シーズン、新型コロナウイルスの影響でシーズンが途中で中止。それでも東地区優勝という輝かしい成績を収めたが、B2全体で3位の成績でB1に上がることができなかった。

仙台89ERSのエリック・ジェイコブセン

ⒸTomikazu Narukami/BOOST the GAME


B1の舞台に再び立つ為に招聘した経験豊富な知将・桶谷大ヘッドコーチ体制は3シーズン目を迎える。是が非でもB1昇格、それが今シーズンの目標。その為に「一戦必勝」を合言葉にプレーオフ圏内をひた走っているが、昨シーズンあと一歩で掴み取れなかった為に油断は決して無い。

そして彼らは今シーズン、宮城県内を回る形でホームゲームを開催。「NINERS HOOP」と銘打って、苦しい時を支えてくれた地元への感謝を伝え続けている。「みやぎ」のために…B1昇格が最大の地元への恩返しになるだろう。

新たな経営陣を迎え入れ、全員バスケで上を狙う福島ファイヤーボンズ

あの日から3年後の2014年に産声をあげた福島ファイヤーボンズ。今シーズンから新たな経営体制の下、経営的にも大きなバックボーンを得てスタートしている。

過去、財政面的な部分での不安という状況が続いていた。それも払拭されてB1という舞台への真のチャレンジがスタートしたと言っていい。

森山知広ヘッドコーチが就任して5シーズン目を迎える今シーズンは、まさしく節目の年。全員が試合に出場して、それぞれの役割を果たすというスタイルのバスケを掲げており、今シーズンはそれが結果として序盤出てきている。

ロスターの多く、またチームスタッフも途中移籍等があったものの、福島での時間を多く過ごしている人間が揃っており、ファミリー感の強い、結束力のあるチームに仕上がってきていると言っても過言ではない。それは過去のシーズンと比較した、今シーズンの現時点での結果からも見て取れる。

福島ファイヤーボンズの菅野翔太

ⒸTomikazu Narukami/BOOST the GAME


苦しい状況の過去のシーズンからの脱却を図り、福島を元気にする為に戦う男たちの目指す先は仙台同様、B1というトップカテゴリー。苦しんだ過去を力に変えて、今シーズンこそ前に突き進む時が来た。

上を狙える体制が整った中で、あとは結果を求めるのみ。福島の人々を元気に、そして笑顔にする為にも結果という形で恩返ししたいところである。

絶対に忘れてはいけない、そして風化させてはいけない。あの時から10年が経過し、未だ復興に向けて懸命に前を向いて歩んでいる地元の人たちにとっても、「B1昇格」という目標達成が大きな力になる事は間違いない。

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