日本バスケット界の“パイオニア”田臥勇太
国内の選手において、最も知名度のある選手が栃木#0田臥勇太だということに異論はないだろう。能代工高時代に史上初めて高校9冠(インターハイ、国体、ウインターカップを3年連続優勝)を獲得し、2004年には日本人で初めてNBAのコートに立った。37歳になった今もプレーを続け、昨季は栃木をBリーグの初代王者に導いた。まさに日本バスケット界の“パイオニア”である。
そんな田臥だが、成績を見ると圧倒的な数字を残しているわけではない。2017-18シーズンの平均出場時間は17.53分で、1試合平均5.4得点、2.7アシストという数字は、いずれもB1の司令塔の中で最低クラス。それでも田臥が第一線で活躍し、クラブ・リーグの顔として君臨しているのは、類いまれなリーダーシップと安定感があるからだ。
とりわけ、安定感を示す数値として、「アシスト÷ターンオーバー」で算出される「アシスト・ターンオーバー比」というものがある。これは日本ではあまり知られていないが、NBAではよく用いられる数字で、高ければ高いほど“安定感のあるガード”として表現される。これに今季の田臥のアシスト(2.6)とターンオーバー(0.8)を当てはめると3.2が算出されるが、これはB1の司令塔でトップだ(そのほかの選手は、富山#11宇都直輝が2.4、川崎#7篠山竜青が2.3、千葉#2富樫勇樹が2.2)。
数値の高い選手はアシスト数が多いケースがほとんどだが、田臥の場合はターンオーバーが0.8本というミスの少なさが、数値の高さにつながっている。さらに注目すべきは、この数値が年々高くなっているということだ。出場時間が短くなってはいるが、アシストを大きく下げないまま、ターンオーバーを少なくしており、40歳を目の前にして年々成長を続けているのである。
NBAに挑戦していた頃は、若さを生かしたアグレッシブなプレーが光っていた田臥。そこから自身の司令塔像を追い求め、今では安定感抜群のガードに成長した。まだまだ現役への高いモチベーションを持っており、今後も安定感のあるプレーでチームを引っ張り、多くのファンを虜にすることだろう。