今季こそ正二塁手奪取へ期待
昨季、1番二塁で開幕スタメンに名を連ね、11試合で打率.390と好調な滑り出しを見せた巨人の吉川尚輝。しかし、腰痛により早々に離脱すると、以降は1軍に復帰することなくシーズンを終えた。
2018年、プロ入り最多となる92試合に出場。打率は.253ながら走攻守で光るものを見せ、昨季開幕前に開催された侍ジャパンとメキシコとの強化試合に選出。1番遊撃で出場すると、代表初打席初安打を記録。その直後に二盗を決めるなど、能力の高さを見せつけた。さらなる飛躍を期待されてシーズンに臨んだものの、ふがいない成績に終わっただけに、今季こそは正二塁手奪取へ期待がかかる。
巨人では昨季、二塁手として最多出場した若林晃弘をはじめ、田中俊太、山本泰寛などライバルがひしめくが、身体能力の高さとポテンシャルという面では吉川尚が頭ひとつ抜けている。問題は大きな故障をせずにコンスタントに試合に出場し、シーズンを通して戦えるかどうかという点。1番二塁に吉川尚を固定できれば、昨季主に1番を担った亀井善行を中軸以降に置くなど厚みのある打線が組める。吉川尚が離脱しないことが、巨人のリーグ連覇に向けた大きな要素といえる。
オープン戦で打撃不振ながら、随所に光るプレーも
ここまでオープン戦では11試合に出場(2020年3月8日終了時点)。打率.188、出塁率.235と精彩を欠いているが、守りで随所に光るプレーを見せている。3月6日のオリックス戦では、初回無死一塁の場面で打球が吉川尚の前に。難しいショートバウンドを捕球して素早くグラブトス。遊撃・坂本勇人との華麗なコンビネーションで併殺を完成させた。脚力を活かせるため守備範囲は広く、スピード感あふれるプレーには華があり、見る者を魅了する。
2月18日のロッテとの練習試合では、1番二塁で出場して4打数3安打1打点の活躍。守備では、3回二死満塁のピンチで一、二塁間を破ろうかという打球に追いつき、流れるような動きからのスローイングで打者走者を刺した。打っては切り込み隊長として、守ってはセンターラインを坂本や丸佳浩とともにシーズンを通じて固めれば、これほどの戦力アップはない。
万全であれば、10年は1番二塁に困らない
吉川尚が最も多く試合に出場した2018年の球種別打率をみてみると、対直球.267、対フォーク.179と苦にしていたが、昨季は打数が少ないとはいえ、対直球.435(23打数10安打)、対フォーク.667(3打数2安打)と、課題の克服を予感させる好調な滑り出しを見せていた。離脱することなくシーズンを通して試合に出ていればどれくらいの数字を残していただろうか。
また、2018年.241、昨季.250(8打数2安打)とスライダーを苦手としている傾向があり、その改善が今季見られるかは注目。スライダーは数多くの投手が用いる球種であり、いかにさばいていくか、喫緊の課題のひとつだろう。
吉川尚には打球方向に特徴がある。打席数の少ない昨季のデータではあるものの、打球方向データをみると、左打者だが左翼方向が35%と飛び抜けて高い(以降右中間方向:22%、右翼方向:16%と続く)。概ね打球方向は右打者であれば左翼、左打者であれば右翼への比率が高くなる傾向があるのだが、この打球方向データは、吉川尚が広角に打つ力を持っている可能性を示す。また、中堅方向、左中間方向がともに14%と低いが、これは打席数の少ない昨季のデータであり、今季、試合出場を重ねていくうちにこの方向の数字がどれくらいになるのかも興味深い。
走攻守において優れた身体能力を感じさせる、スピード感と躍動感あふれるプレー。吉川尚のコンディションが万全であれば、10年は1番二塁に困らない。そう思わせてくれるポテンシャルを秘めている。今季こそ満を持して開花することを、多くのファンが期待している。
2020年プロ野球・読売ジャイアンツ記事まとめ