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ロッテ優勝へのキーマン石川歩 完全復調へのカギはカーブの有効活用

2020 3/12 06:00浜田哲男
ロッテ・石川歩投手ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

本来は投手陣を牽引する立場

昨季はシーズン序盤から調子が上がらず、コンディションの調整も兼ねてリリーフへの配置転換を経験したロッテの石川歩。シーズン前半はわずか3勝にとどまったが、後半に先発に復帰すると、そこから5連勝するなど復調した姿を見せてシーズンを終えた。

最終的にチームトップタイの8勝(5敗)を挙げたが、それでも石川の実力からすれば物足りない。先発投手の若返りをはかる中、本来であれば先頭を切って投手陣を牽引していかなければいけない立場だ。

2016年には最優秀防御率のタイトルを獲得し、14勝(5敗)を挙げる活躍。2017年に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に招集され、キューバとの初戦のマウンドも任されるなど、一時はリーグを、そして日本を代表する投手にまでのぼりつめた。

しかし、同年のシーズンをわずか3勝(11敗)で終えるまさかの大不振。以降、2018年は9勝(8敗)、昨季は8勝と徐々にらしさを取り戻してはきたが、本来12~15勝は期待したい投手。今季、ロッテが優勝争いに食い込んでいくためには、石川の活躍が必要不可欠だ。

好不調の波の大きさを解消するために

ここ数年の石川は好不調の波が激しい。2018年は6月の時点で9勝を挙げる最多勝ペースだったものの、後半に急失速して9勝止まり。昨季は7月終了時点では3勝5敗だったが、8月から9月にかけて5連勝し、勝ち星を伸ばした。

最近の試合でもその傾向があり(3月8日執筆時点)、2月25日のソフトバンクとの練習試合で今季初めて実戦マウンドに上がると、3回を無安打無失点に抑える好投。しかし、3月3日のオリックス戦(オープン戦)では4回6安打4失点(自責点3)と打ち込まれた。得意のシンカーをはじめ、変化球が高めに甘く入るケースが多く課題が残る投球内容だった。

石川の生命線は全投球の29%を占めるシンカー。そのシンカーを軸にして低めを丁寧につくのが持ち味だ。昨季の投手ヒートマップをみると、対左打者でも対右打者でも、外角低めで多くの空振りや三振を奪っており、いかに我慢強く低めをつけるかが、コンスタントに安定した投球を続けるポイントになるだろう。

また、14勝をマークした2016年にはカーブを比較的多投しており(全投球の約16%)、被打率.152と良い数値を残していたが、近年はカーブの割合が減り、その分カットボールの割合が増えている。

絶不調だった2017年にカーブの被打率が.328と打ち込まれたことも、カーブの数を減らした理由のひとつとして考えられるが、2018年の被打率は.270、昨季に至っては.156と打者を抑え込んでいる。昨季のカーブの割合は約10%だったが、投球の組み立てに意識して使うのも一考かもしれない。

直球で押していければシンカーとのコンビネーションが機能すると思うが、直球の被打率は元来からあまり良くなく(昨季.297)、近年打ち込まれる時も直球を狙い打たれるケースが散見される。直球、シンカーを軸としながらカーブを織り交ぜ、狙い球を絞らせにくい、緩急を意識した以前の投球に立ち返ってみるのもひとつの手だ。

メジャー挑戦に向け、結果が求められる今季

石川は昨オフの契約更改後、早ければ今オフにメジャーに挑戦する意思を表明した。WBCで世界の打者を相手に戦った経験が、モチベーションのひとつとなったことは想像に難くない。

ただ、海外フリーエージェント(FA)権の資格条件を満たすのは早くて2023年。今季終了後にメジャー移籍を実現するためには、所属球団からの了承を得た上でメジャー各球団からの入札を待つポスティング制度を利用する必要がある。

近年の成績では石川本人も球団側も満足できるものではないだろうし、メジャー挑戦の扉を開けるためには、今シーズン結果を示さなければならない。

期待はできても、過去の実績と経験から計算が立ちにくい若い先発投手が多い中、石川や楽天から移籍してきた美馬学は先発投手陣を牽引する立場にある。また、美馬は東京ガスで石川の先輩にあたり、良好な関係を保ちつつ切磋琢磨していける存在。石川にとっても刺激になることは多いはずだ。

ロッテがAクラスを目指し、その先の優勝争いをするためには石川の完全復調が鍵となる。

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