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正解がないのが6番打者? 各球団で最多起用された選手の成績を比較

2020 1/22 17:00浜田哲男
東京ヤクルトスワローズの村上宗隆と埼玉西武ライオンズの中村剛也ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

指揮官にとっては悩ましい打順

打順を決める上で、1番打者や4番打者を含むクリーンナップは比較的決めやすいと思われるが、6番打者となるとどうだろうか。一発の期待できる打者を置いたり、クリーンナップで返しきれなかった場合を考えて勝負強い打者を置いたり、あるいは調子の上がらない主軸の打者をひとまずプレッシャーの比較的かからない6番に置いたりと、指揮官にとってはなかなか悩ましい打順と言えるのではないだろうか。

今回は「6番打者」をクローズアップ。昨季、各チームで最も6番を打った打者はどの選手だったか?そしてその選手の成績とチームの成績との関連性などを考察してみる。

中日とヤクルトは6番打者が飛躍

まずはセ・リーグ。リーグ優勝した巨人で最も6番を打ったのは助っ人のゲレーロだった。スタメン出場した82試合のうち、54試合で6番に起用された。シーズン通算では打率.237と低迷しながらも21本塁打を放っている。シーズン序盤はこのゲレーロのほか、ビヤヌエバも6番で起用されており、期待度は未知数だが一発を期待できる打者を6番で起用していた意図が垣間見える。

2019年6番で最も多く出場した選手_セ・リーグ編


DeNAで最も6番を打ったのはヒットメーカーの宮﨑敏郎。とはいえ、6番で先発出場したのはわずか25試合。DeNAはシーズンを通して19人の選手が6番で先発しており、シーズン終盤まで打線全体を試行錯誤し続けていた感がある。ちなみに、宮﨑の得点圏打率は.263で打点は49。本来の実力からすれば物足りない数字だ。

阪神は捕手の梅野隆太郎が51試合に6番で先発出場。最終的な打率は.266だったが、得点圏打率.330をマークするなど、クリーンナップで返しきれなかった走者を梅野が返すシーンもよく見られた。DHのないセ・リーグでは、特に捕手が打てると打順の組み方にバリエーションが増える。しかしその一方で、捕手が6番を打たなければならないというチーム事情も垣間見える。

広島でも、捕手の會澤翼が51試合に6番で先発出場。打率.277、12本塁打、63打点、得点圏打率.351の好成績をマークした。しかし、チームはリーグ4連覇を逃して4位に低迷。2018年シーズンまで不動の3番打者だった丸佳浩が抜けた穴が大きく、打線の厚みという点での物足りなさは否めなかった。會澤を含む16人の選手が6番で先発しており、DeNA同様に打線のやり繰りに苦心した印象だ。

中日は阿部寿樹が51試合で6番を務めた。昨季で入団4年目の阿部は、それまでの3シーズンで20試合前後の出場にとどまっていたが、昨季は129試合に出場して打率.291、得点圏打率も.297と好成績をマーク。昨季から指揮を執った与田剛新監督の抜擢に見事に応えてみせた。6番はクリーンナップほどのプレッシャーもなく、新戦力やそれまで控えだった選手を試すために使われることの多い打順でもあるが、阿部の起用は成功事例といえるだろう。6番で自信をつけた阿部を来季はどの打順で打たせるのか注目だ。

成功事例といえば、その最たる例がヤクルトの村上宗隆だ。昨季は143試合に出場し、6番打者としてはチームで最多の51試合に出場。184三振を喫し、打率は.231と低迷したものの、36本塁打、96打点と一気にブレイクした。未来の主砲候補を6番や7番でのびのびと打たせた首脳陣の采配は見事に当たった。

4番に匹敵する6番がいる西武

パ・リーグをみてみよう。リーグ連覇を達成した西武で最も6番を打ったのは、打点王に輝いた中村剛也。シーズン終盤は不振の山川穂高に代わり4番を務めたが、前半戦は主に6番に座り打線に厚みをもたらした。このように、西武の場合は4番を打てる打者を下位打線に配置できることが強み。中村が4番でも強力な打線だが、山川がどっしりと4番に座り、6番あたりに中村が控えていることが本来の形であり、数年後を考えれば望ましい。

2019年6番で最も多く出場した選手_セ・リーグ編


3年連続日本一に輝いたソフトバンクは、内川聖一がチーム最多の43試合に6番打者として先発出場。その次に多いのが40試合の松田宣浩であり、経験と勝負強さに期待のできるベテランを、クリーンナップの後に配置していた思惑が読み取れる。しかし、内川は得点圏打率.194、41打点と低迷。打線に厚みをもたらすような活躍はできなかった。レギュラーが高齢化してきているソフトバンクは、期待の若手野手を6番に抜擢して使い続けてみるのも一考かもしれない。

楽天で最も6番を打ったのは銀次。昨季は打率.304、得点圏打率.307と勝負強さを見せた。一発のある打者ではないが、走者のたまった場面で勝負強く出塁率も高い銀次を迎えるのは相手も苦しくなる。また、下位打線の始まりともいえる6番打者。チャンスメイクをする上でも適した打者といえる。

ロッテは、2018年シーズンで3番を打っていた中村奨吾が最も6番に座った。昨季も開幕当初は3番でのスタートだったが、練習中に負った怪我の影響からか打撃が低迷。復調を促す意図もあり6番を打たせていたと考えられるが、打率.232と低迷。ただ、17本の本塁打はキャリアハイとなった。2018年シーズンにリーグ2位の39盗塁をマークした足が武器なだけに、本来は打線の上位で起用したい選手だが今季はどうなるか。

日本ハムは、渡邉諒が58試合で6番に座った。プロ入り後、2018年シーズンの60試合が最多出場だったが、昨季は132試合に出場。打率は.262だが、前年の3倍以上となる126安打を放つ活躍を見せた。中日の阿部同様、主に6番での出場でキャリアハイをマークした渡邉が、今季は何番を任されるのか注目だ。

オリックスは、ルーキーの中川圭太が33試合で6番に座った。規定打席に届かずも、打率.288をマークし、交流戦では首位打者となるなど存在感を見せつけた。吉田正尚やメネセスらの不振の際には4番に座った試合もあったが、それがオリックスの厳しい現状を物語っている。中川が6番に固定されるぐらいの打線の厚みが生まれれば、先発投手陣が揃っているだけに面白い存在となるだろう。

チーム状況や首脳陣の思惑が反映される打順

ここまで、各チームの6番打者事情をみてきたが、期待の新外国人や若手を試したり、不調だった打者の復調を促すために6番に置いたり、控えだった選手を使い続けてみたりと、その時々のチーム状況や首脳陣の思惑が反映されやすい打順となっていた。

また、クリーンナップから6番打者までが固定されるような打線は厚みがあるといえる。シーズン終盤は4番を打っていた西武の中村が、シーズン前半は主に6番に入っていたように、4番に匹敵する打者が6番または7番以降に置かれていると、切れ目のない怖い打線になる。

今季、各チーム開幕スタメンの6番にどの選手が入っているか。シーズンを通して6番打者がどう代わっていくのか。そんな視点でみてみるのも面白いかもしれない。

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