今季は正念場
2018年シーズン後半からセットアッパーとして結果を残し、昨季は勝利の方程式の一角として期待されたロッテの唐川侑己。楽天との開幕戦、1点リードの8回にマウンドに上がると、浅村栄斗から始まるクリーンナップを危なげなく三者凡退に抑える好スタートを切り、その後も無失点を続けるなどシーズン序盤は安定感抜群の投球を見せていた。
しかし、シーズン後半になると失速。特に8月は6試合に登板し4試合で失点、同月の防御率は17.36に落ち込んだ。良い時は危なげなく抑えるが、悪い時は連打を浴びて軌道修正がきかないままマウンドを降りるといったように、好不調の波が大きかった印象だ。
7回は酒居知史(現楽天)、8回は唐川、9回は益田直也と盤石の体制で臨んだ2019年だったが、シーズンを通してその座を守り抜いたのはクローザーの益田のみ。7回8回はルーキーの東妻勇輔や中村稔弥ら多数の投手をやり繰りし続けた。
終盤の7回と8回に失点が多かったことを受け、ロッテはこのオフに日本で確かな実績を持つ元広島のジャクソン、元楽天のハーマンを獲得。彼らが実力を発揮すれば、唐川が勝ちパターンの投手リレーに割って入ることは難しくなる。今季は正念場のシーズンとなりそうだ。
カットボールを活かすために必要な工夫
唐川はセットアッパーに転向して以来、140km前後のカットボールを多投している。投球割合の約38%を占め、球種別で最も多くの三振を奪った(18個)。それに対して、直球は約3%という少なさだ。
カットボールは打者の手元でボール1個分程度鋭く変化させるのが特徴で、バットの芯を外すとともに球数を減らせるメリットがある。例えば、右打者には外角に投げ込んで打ち損じを狙い、左打者には内角を攻めて詰まらせるといった使い方ができるが、唐川のゾーン別データはどうだろうか。
対右打者の数値をみると外角への投球割合が多く、特に外角低めは投球割合の約31%を占めており、外角へのカットボール・スライダーで空振りや打ち損じを狙っていることがわかる。しかし、問題なのは被打率。外角低めは.333と打ち込まれるなど、外角は全体的に被打率が高くなっている。一方、内角への投球割合をみると、いずれの高さにおいても約8%と低く、右打者の内角を攻めきれていない。ちなみに、対左打者の被打率は.264だが、対右打者には.329と打ち込まれている。
対右打者に最も投じている球種はスライダー(約40%)で、次に多いのがカットボール(約30%)であり、これらの球種を外角に投げ込むのを目にする機会が多かったが、やはり内角を意識させられるツーシームのような球種がないと投球が苦しくなる。逆にツーシームをものにできれば、カットボールが今よりも活かされ投球の幅は格段に広がるはずだ。
一方、対左打者への投球割合をみると、内角低めが約16%、真ん中低めが約14%、外角低めが約20%と、低めを丁寧についていることがわかる。最も投じている球種はカットボール(約45%:2球のうち1球はカットボールを投げているイメージ)だが、内角低めの被打率が.400と打ち込まれていることが気になる。内角を突くのは良いと思うが、左打者へのカットボールの割合は特に多いため、読まれている部分もあるのではないか。
以前はカーブやスライダーを多投して優れた数値を残していたが(2018年シーズンのスライダー被打率は.205、カーブ被打率は.231)、球種の割合や攻め方、新たな球種を取り入れることも含めて見直す価値はあるかもしれない。
100勝100ホールドを目指す気持ちで
地元千葉の成田高からロッテに入団し、今季で13年目。投手陣のリーダー格だった涌井秀章が楽天へ金銭トレードで移籍し、先発投手陣をはじめ、これからという若い投手が増えている。それなりの経験値を持つ唐川は、リリーフ陣を中心に益田らとともに投手陣を牽引していかなければいけない立場だ。
その一方で、まだ30歳。努力次第ではもうひと花もふた花も咲かすチャンスがある。現在、プロ入り通算71勝19ホールド。今後、先発に復帰する時がくるのか、セットアッパーとして起用されるのかはわからないが、100勝100ホールドを達成するぐらいの気持ちで突き進んでほしい。
2020年プロ野球・千葉ロッテマリーンズ記事まとめ