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ロッテ・佐々木千隼 涙の復活劇、後半戦の安定感は来季逆襲への序章

2019 12/24 11:00浜田哲男
千葉ロッテ・佐々木千隼

ⒸYoshihiro KOIKE

来季は先発ローテ入りを期待

ルーキーイヤーに4勝(7敗)を挙げるも、昨季は不振の上に7月に右ヒジの遊離体除去手術を受けるなど1軍登板なしに終わったロッテの佐々木千隼。復活をかけて臨んだ今季は、初登板となった7月9日の日本ハム戦で好投。日本ハム打線を7回5安打1失点に抑え、656日ぶりとなる勝利を挙げた。

ファンの大声援を受けて上がったお立ち台では、「ちょっと泣きそうです」と目を真っ赤にしながら感極まる表情を見せた佐々木。試合直前は緊張していながらも連打を気をつけていたと言い、「(連打が)あまりなかったので、目標としていたピッチングはできたのかなと思います」と手応えを口にしていた。

同試合で序盤に満塁弾を放って援護した清田育宏が「いいテンポで投げてくれたので僕らも守りやすかった」と語っていたように、この日の佐々木はテンポよく投げ込み、得意のシンカーのキレも良かった。球速は手術の影響もあってか140km台前半が多かったものの(今季最速は144km、2017年は147km)、丁寧にコーナーを突く投球が功を奏した。

「手術してここまで長かったですけど、こうやってチャンスをいただけたので、それをものにできるようにと今日は強く思ってました。これに満足せず、チャンスをいただけたところで勝ちを積み重ねていければいいなと思っています」

今季のロッテは、種市篤暉が8勝(2敗)、二木康太が7勝(10敗)、岩下大輝が5勝(3敗)、ルーキーの小島和哉が3勝(5敗)と、若手先発投手が存在感を示しており、ここにフリーエージェント(FA)で移籍してきた美馬学も加わる。また、プロ入り初完封勝利を挙げるなど先発投手として、シーズン後半は特に安定した投球を続けた西野勇士など、来季へ向けて先発ローテーション争いも激しくなりそうだ。

佐々木自身が話しているように、もらったチャンスで地道に白星を積み重ねていくことが、首脳陣からの信頼を得るための唯一の手段。先発投手が若返りを図る状況の中で、25歳の佐々木も割って入っていくようなことになれば、先発投手陣の厚みが増す。

シンカーとスライダーが機能

今季の佐々木は7試合に登板。勝ち星は2つだったが、防御率は2.53の好成績をマーク。特に3試合に登板した8月の月間防御率は1.29と安定していた。今季初勝利を挙げた7月9日の日本ハム戦では7回を投げたものの、以降は最長でも5回。右肘出術からの復帰ということもあり登板間隔を空けるなど配慮されていたが、シーズン後半はローテーションに組み込まれるなど、来季へ向けた首脳陣の期待をうかがわせた。

球種別の傾向をみると、得意とするシンカーの比率がルーキーイヤーの2017年は約14%だったが、今季は約26%に増加。被打率も2017年が.279だったが、今季は.229に抑えている。また、変化の大きいスライダーは2017年が約4%だったのに対し、今季は約23%に急増。被打率も.174(2017年は.143)と優れた数字を残している。手術前と比較して少々球速は落ちたが、スリークオーターから繰り出す切れ味抜群のシンカーとスライダー、そこにフォークも絡めたテンポの良い投球は、打者にとってタイミングを合わせにくくやっかいだ。

状況に合わせた柔軟な投球

ただ、桜美林大学時代は直球で最速153kmをマーク。つい3年ほど前の自分が投げていた球が投げられていないことには歯がゆさもあるかもしれない。変化球のキレはどれも一級品なだけに、今後球速が戻ってくるようなことがあれば、ピッチングの幅も広がるだろう。

佐々木はプロ入り初登板となった2017年4月6日の日本ハム戦。2-1と1点リードして迎えた5回のピンチで、大谷翔平(現エンゼルス)と対峙。捕手のサインに幾度となく首を振り投じた得意のシンカーで空振り三振を奪うと、続くピンチで主砲・中田翔からもスライダーで空振りの三振を奪った。この日の試合は風速12m前後の強風が吹き荒れていたが、その風を利用して変化球主体の投球をしていたのが印象深かった。

球速が出なければ出ないなりにコンビネーションで抑え、風が強ければ変化球主体の投球で押していく。状況に応じて柔軟に対応し、悪いなりに抑えていくのも佐々木の魅力だ。2016年のドラフトで外れ1位ながらも5球団が競合した逸材。怪我を乗り越えた佐々木が真価を発揮していくのはこれからだ。

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