ドラフト5位指名組の躍進
与田体制の初年度だった2019年シーズン、中日は前年から順位を上げることができず5位に終わった。しかし、阿部寿樹や加藤匠馬、藤嶋健人といった選手たちが台頭し定着したことは、チーム力の底上げになった。2019年に結果を残したこの3人にはひとつの共通点がある。全員ドラフト5位で入団しているということだ。
ドラフト5位指名ということは、ドラフト1位をはじめとする上位指名に比べ期待値が低く、注目を集めることも少ない。場合によっては、4位でドラフト指名を終了してしまうケースすらある。しかし、中日の歴史をたどってみると、ドラフト5位から飛躍した選手が多くいる。
投手では山本昌、野手では井端弘和が出世頭
中日でドラフト5位指名から、もっとも飛躍したのは山本昌だろう。1983年のドラフト5位で入団した山本昌は、プロ5年目にあたる1988年にプロ初勝利を含む5勝をマーク。翌年には9勝を挙げ、2015年までに219の勝ち星を積み上げた。
50歳まで現役を続け、多くの最年長記録を打ち立てた実績はあまりにも有名。レジェンドと称されることも多い山本昌だが、ドラフトでは1位の超有望株としてではなく、5位での入団だったのだ(入団時は山本昌広、のちに登録名を山本昌と変更)。
ちなみに山本昌が指名された1983年のドラフト1位は藤王康晴、2位は仁村徹である。
投手の出世頭が山本昌なら、野手の出世頭は井端弘和だろう。1997年のドラフト5位で入団した井端は守備の名手としてならし、落合博満監督時代の黄金期を支えた。2013年の第3回ワールド・ベースボール・クラシックでは日本代表に選出され、ここぞの場面で安打を放つ勝負強さを見せた。現役晩年には巨人に移籍したが、中日の功労者といえるのではないか。
井端が指名された1997年のドラフト1位は川上憲伸(逆指名)だ。ドラフト1位でエース投手、下位でもチームを支えるいぶし銀の選手を獲得したのである。
山本昌、井端はすでに現役を引退したが、現役選手にも実力者がいる。大島洋平である。大島は2009年ドラフト5位で入団すると、1年目から104試合に出場。2012年には完全なレギュラーとなり盗塁王を獲得した。
その後は上位打線で起用されチームを引っ張っている。2019年は最多安打のタイトルを獲得、7度にわたってゴールデングラブ賞を受賞しており、攻守に優れた存在だ。
彦野利勝や山田喜久夫、土谷鉄平の名前も
これまで挙げた3人ほどではないが、実績を残した選手は多い。山本昌の1年前にあたる1982年のドラフト5位は彦野利勝だった。打撃タイトルの獲得こそないが、1989年には26本塁打を放っている。その一方で3度ゴールデングラブ賞を獲得した、守備の名手でもあった。
その他には音重鎮(1987年)や山田喜久夫(1989年)、森田幸一(1990年)も5位だ。2000年以降のドラフト組では、中日での実績は乏しいものの、楽天に移籍してから首位打者を獲得した土谷鉄平(2000年、楽天移籍後の登録名「鉄平」)、中継ぎとして活躍した長峰昌司(2002年5巡)、鈴木義広(2004年5巡)も同じく5位指名から結果を残している。
近年入団してきたドラフト5位の選手達は、先輩たちにつづいて活躍できるだろうか。ドラフト5位評価はあくまでも入団前のこと。上位指名組を追い抜くほどの飛躍を期待したい。
<中日の年度ごとドラフト5位指名選手>※NPB現役選手のみ
2019年:岡林勇希(投手)
2018年:垣越建伸(投手)
2017年:伊藤康祐(外野手)
2016年:藤嶋健人(投手)
2015年:阿部寿樹(内野手)
2014年:加藤匠馬(捕手)
2013年:祖父江大輔(投手)
2012年:溝脇隼人(内野手)
2009年:大島洋平(外野手)
※数字は2019年シーズン終了時点