良いイメージのままシーズンを終えた
昨季はプロ入り以来初の未勝利に終わるなど、不振にあえいだロッテの西野勇士。再起をかけた今季は先発やリリーフで37試合に登板し、2勝3敗5ホールド2セーブ、防御率2.96とまずまずの成績を残した。
際立ったのは西野のユーティリティ性。2013年には先発として9勝(6敗)、2014年から2016年にかけての3年間はクローザーとして計86セーブを挙げるなど、先発とリリーフ両方を経験し、実績を残してきたことを今季は証明して見せた。
5月9日の西武戦では、当時不振だったクローザー・益田直也の代役として延長11回のマウンドに上がると、2つの空振り三振を奪うなど危なげない投球で3者凡退に抑えて3年ぶりとなるセーブをマーク。一方、9月7日のソフトバンク戦では9回4安打6奪三振でプロ入り初完封。最終回は、柳田悠岐、デスパイネ、グラシアルから3者連続三振を奪う圧巻の投球を見せた。
8月5日から9月21日にかけて先発した6試合では2敗を喫してはいるものの、5試合でQS(6回以上投げて自責点3以内)をマーク。先発投手として体力面の不安も払拭し、安定感のある投球を続けて良いイメージのままシーズンを終えた。
今季、先発では種市篤暉が8勝(2敗)、岩下大輝が5勝(3敗)、二木康太が7勝(10敗)を挙げるなど若手が一定の存在感を示したが、期待はできてもまだまだ計算できる領域には到達していない。西野は来季、先発としての起用を伝えられているが、中堅の西野がローテーションの一角としてしっかりまわるようになれば、チームとしては非常に心強い。
抑えの頃を思えば、もっとやれる
西野といえば、落差のあるフォークが武器だ。同球種に関しては、不振にあえいだ昨季も被打率.211と優れた数字をマーク。今季に至っては被打率.182とさらに改善している。完封した9月7日のソフトバンク戦ではフォークがかなりキレており、外角に外れて早めにワンバウンドするようなフォークでも、打者はつい手を出して空振りしていた。
西野が絶対的守護神として君臨していた2014年、2015年の数字をみると、こんなものではない。2014年のフォークの被打率は.145で、2015年の被打率は.119と圧倒的。2014年はシーズン計63個の奪三振をマークしているが、フォークで35個もの三振を奪っている。さらに同球種による奪空振率も約29%と凄まじい。
西野は今季の契約更改の席で、「抑えをやっていた時のことを考えると、もっとやれると思う」と意気込みを語っており、輝いていた自身の姿、球威、球のキレを取り戻せるかに期待がかかる。先発とクローザーとでは勝手が違う部分はあるが、こうした発言は今季の投球にある程度の手応えを感じたからこそのものだろう。
開幕ローテーション枠を勝ち取れるか
先発もセットアッパーも、そしてクローザーも経験している西野は、チームにとって貴重な存在。しかし、逆をいえば勝ち試合の継投パターンが確立できていなかったり、ローテーションを守る先発投手が足りなかったりといったチーム事情がそうさせてしまっている側面も往々にしてある。
今オフ積極的な補強をすすめるロッテは、広島のリーグ3連覇に貢献したジェイ・ジャクソンを獲得した。クローザーの益田とともに勝ちパターンでの投入が想定され、リリーフ陣の形はある程度見えてきた。そうなれば、西野を後ろにまわすといった苦肉の策を講じなくて済む。
西野が開幕ローテーション枠を勝ち取り、シーズンを通して先発として二桁勝つような活躍を見せれば、来季のロッテは面白い存在となっているに違いない。