1年間ローテーションを守り抜いた
2年連続のリーグ優勝を果たした西武。昨季まで大黒柱だった菊池雄星がメジャーへ移籍し、先発投手陣の台所事情が苦しい中でスタートしたシーズンだったが、ザック・ニールや髙橋光成が二桁勝利を挙げ、先発投手陣を牽引した。特にニールは1人で11の貯金を作り、逆転でのリーグ優勝に大きく貢献した。
そんな中、チーム最多の135回1/3を投げ、7勝9敗と負けは先行したものの、シーズンを通してローテーションを守り続けたのが今井達也。プロ入り3年目となった今季、5月5日の楽天戦でプロ初完封勝利を挙げるなどポテンシャルの高さを見せた。ただ、味方打線が点を取った直後に失点をするケースが散見されるなど、改めて課題も露呈した。
与四球はリーグワースト2位の72。走者をためて自らピンチを招き、手痛いタイムリーを打たれることが多かった。それでも今季最速154kmの直球をはじめ、チェンジアップ、スライダー、カーブには、将来のエース候補と目されるだけのキレがある。今季の経験を糧に、来季はさらなる飛躍が期待される。
課題は多いが将来のエースの片鱗も
前述したように、今井の持ち球は主に4種で、どの球種でも満遍なく三振をとれる特長がある。今季の奪三振105のうち、直球が31、チェンジアップが21、カーブが14、そしてスライダーが最多の39だった。特にスライダーの被打率は.143(昨季.267)と抜群で、同球種が現時点でのウイニングショットであり、投球の生命線なのは間違いない。
また、球の軌道がフォークやシンカーのようでもあるチェンジアップも有効だった。自信があるのか、カウント球としても、決め球としても投じており、直球とほぼ同じ投球フォームで繰り出すことで打者を幻惑した。ただ、メンタルが原因なのか、制球を乱して崩れていくケースが目につく。そうした部分を徐々にでも克服していければ、各球種は一級品なのだから、もっと余裕のある投球ができるはずだ。
現状は球数が多くなりがちで、調子が良い時と悪い時の差が大きい。特に調子の悪い時や走者をためた時には、投げる度にフォームが多少違ってみえたり、リリースポイントが定まらなかったり、様々な部分で改善の余地がある。ということは、それだけ伸びしろがあるとも言える。
調子の良かったプロ初完封の試合では、伸びのある直球に変化球を巧みに織り交ぜ、緩急自在の投球で打者を手玉にとって3安打に抑えた。その姿は縦横様々に曲がるスライダーとチェンジアップ、伸びのある直球を武器に、西武のエースとして長年活躍した西口文也(現投手コーチ)を彷彿させた。
独り立ちに期待
プロ3年目のシーズンを終えた今井だが、今季1年を通してローテーションを守った意義は大きいし、ここ2年続けてクライマックスシリーズ(CS)で先発するなど、若くして経験を積んでいる。今季のCSファイナルステージでは、対ソフトバンク第2戦で先発。立ち上がりからソフトバンク打線につかまり失点を重ねて負け投手となったが、大舞台での苦い体験は必ず今後の糧になる。
辻発彦監督は、「今井、髙橋、松本航ら若い投手が、苦しみながらもシーズンを通して色々な経験をできた」と話す。今井についても「負けは先行したけれども、1年間ローテーションをやりきったということが大きい」と今後に期待を寄せる。
西武のリーグ3連覇、そして2008年以来遠ざかっている日本一へ向け、今井をはじめとした若い投手の独り立ちが鍵となることは間違いない。