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菊池涼介、筒香嘉智が利用するポスティングシステムとは?

2019 11/18 06:00勝田聡
広島東洋カープの菊池涼介と横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

菊池涼介、筒香嘉智がポスティングでの移籍を目指す

このオフ、2人の日本人野手がポスティングシステムを利用して、MLBへの移籍を目指す。広島の菊池涼介とDeNAの筒香嘉智である。菊池は守備型の二塁手として、筒香は強打の外野手として移籍市場に打って出る。

MLBの移籍市場は、12月上旬から半ばに行われるウインターミーティングから活発化するのが通例。すでにMLBのワールドシリーズは終了しオフシーズンへ入ったものの、今年のウインターミーティングは12月9~12日(現地時間)であり、移籍市場にそれまで目立った動きは少ないはずだ。菊池と筒香の両選手に関してもそれは同様。これからの1ヶ月間はアメリカのメディアによる予想が話題の中心となる。

所属球団が主導権握る

移籍市場が活発化する前に、ポスティングシステムの概要をおさらいしておきたい。

このシステムは、MLB入りを希望する日本のプロ野球選手が海外FA権を獲得する前にMLBへの移籍を可能にする制度だ。選手が宣言するFA制度とは異なり、日本の所属球団側が主導権を持つ。選手の希望があっても所属球団の同意がなくては利用できず、所属球団がMLB側に申請する。

申請期間は11月1日から12月5日まで。申請後MLB30球団に通知された翌日から30日間に渡って、譲渡金額を支払う意思のあるMLB球団が選手と交渉できる。そのため、遅くとも年明け早々には決着することになる。一般的に期限終盤まで契約が決まらないパターンが多いものの、1日で契約を決めたとしても問題はない。

ポスティングシステムは、選手を獲得するMLB球団が、譲渡金を日本の元の所属球団に支払うことで移籍が成立する仕組みである。元の所属球団は、国内球団へのFA移籍なら人的・金銭の補償を手にできる。しかし、MLBへ移籍した場合は見返りがない。そのため、譲渡金を得られる同制度を利用する。一方で、見返りを求めることなく、同制度を利用せずに海外FA権取得年度まで選手を保有する球団もある。

ここは球団によって考え方が異なる。現時点では巨人とソフトバンクが同制度を用いた移籍を認めていない。ところが、巨人の原辰徳監督は、今オフにその姿勢の軟化を見せているとの報道もあった。今後は巨人も認める方向に舵を切るかもしれない。

2018年オフより新制度に変更

かつては移籍で動く金額が青天井だった時代もあった。最高入札額を示したMLB球団が独占交渉権を得るシステムでは入札金が高騰。2011年オフにダルビッシュ有が日本ハムからレンジャーズへ移籍した際は5170万3411ドル(当時・約40億円)に上った。

2013年に制度が変わって、入札金に相当する譲渡金の額を日本の所属球団が設定することになり、設定額に応じるMLB球団すべてと交渉が可能になった。また、譲渡金の上限は2000万ドルと定められた。田中将大(楽天→ヤンキース)らはこの金額で移籍を果たしている。

2018年オフシーズンから、さらに制度が変更。新ポスティングシステムでは、選手の契約内容の総額によって変動する仕組みに改定された。菊池雄星(西武→マリナーズ)が新制度適用移籍第1号となった。

選手の契約内容によって変動する譲渡金額

MLB球団が日本の球団へ支払う譲渡金額の仕組みは少々複雑だ。それは選手の契約金、年俸、契約解除の際の支払額(バイアウト)の総額、そして出来高払いによって算出される。

契約金、年俸、バイアウトの総額を「トータル・ギャランティー・バリュー」という。譲渡金の算出は、その総額のうち、2500万ドルまでに20%、2500万ドルから5000万ドルまでに17.5%、5000万ドルを超えた部分に15%をかけた額を足していく。

仮に、総額が5500万ドルであれば下記のようになる。

2500万ドル × 20%  = 500万ドル
2500万ドル × 17.5% = 437.5万ドル
500万ドル × 15% = 75万ドル

500万ドル + 437.5万ドル + 75万ドル =1012.5万ドル

さらに出来高払いがついていれば、追加譲渡金として、年度ごとに、獲得した出来高に15%をかけた額が支払われる。譲渡金は、契約金や年俸だけでなく出来高払いにも影響されるため、移籍成立時点ですべての支払い金額が確定するわけではない。

制度変更を経て(もちろん選手の実力にもよるが)、MLB球団が日本の球団へ支払う総額は減少してきた。譲渡金額の面だけを見れば、MLB球団がポスティングで日本人選手を獲得しやすくなったことは間違いない。とはいえ、金額がいくらだったとしても、獲得した選手が戦力としてチームに貢献できるかどうかが最も重要だ。

このオフは、海外FA権での移籍を目指す秋山翔吾(西武)を含め3人が移籍市場に飛び込んでいく。大谷翔平(日本ハム→エンゼルス)という二刀流の異色な存在を除けば、2012年オフの田中賢介(日本ハム→ジャイアンツ)、中島裕之(現・宏之。西武→アスレチックス傘下3A。メジャー昇格なし)以来、7年ぶりの日本人野手によるMLB移籍が実現しそうな雰囲気だ。ポスティングシステムでの移籍となれば、2011年オフの青木宣親(ヤクルト→ブリュワーズ)以来8年ぶりとなる。

はたしてこのオフに日本人野手のメジャーリーガーは何人誕生するのだろうか。オフの動向にも気を配りたい。