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スライダーの被打率.188 魔球を武器に、ロッテ・東條大樹はさらなる高みへ

2019 11/15 06:00浜田哲男
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ブルペンに欠かせない存在に

プロ入り4年目にしてプロ初勝利を挙げたロッテの東條大樹。今季は自己最多の58試合に登板し、17ホールドポイントをマークするなど飛躍の1年となった。

シーズン序盤はビハインドの場面での登板が多かったが、4月12日の日本ハム戦から12試合連続で無失点に抑えるなど、結果を出して首脳陣からの信頼を徐々に獲得。シーズン中盤以降はブルペンに欠かせない存在となった。

5月25日のソフトバンク戦では、2-3と1点ビハインドの7回に登板。1回を完璧に抑えるとその裏に味方打線がつながり逆転。東條の好投が良い流れをもたらし、チームは勝利、自身も初白星となった。

今季ロッテのシーズン序盤は、松永昴大、酒居知史、唐川侑己、益田直也らが主に勝ち試合を任されていた。だが、各投手の好不調やコンディションへの配慮もあり、東條や田中靖洋、ルーキーの東妻勇輔や中村稔弥らの登板機会も増え、最終的にリリーフは横一線。益田はシーズンを通してほぼクローザーとして君臨したが、リリーフ陣全体として勝ちパターンを確立できたとは言い難いままシーズンを終えた。

中でも特に大きな収穫だったのが、東條の台頭ではないだろうか。右のサイドスローで打者の目線を変えられることも影響し、ブルペン陣のバリエーションも広がった。

生命線はスライダー

東條の最大の武器はスライダーだ。球種配分をみると、スライダーの割合は実に約44%。2球に1球はスライダーを投じていることになる。カウント球としても決め球としても機能しており、最も自信を持っている球種であることは明白だ。

スライダーの被打率は圧巻の.188(昨季も.188)。空振り率は昨季の約11%から、今季は約18%に向上した。今季通算の奪三振数は53個のうち36個をスライダーで奪っている。特に日本ハム戦には強く、大田泰示や中田翔ら右の強打者はキレ味が鋭いため、打者の手前で曲がるスライダーにタイミングが合わず手を焼いていた。

左右打者別の被打率は、右打者が.228、左打者が.311と右打者に滅法強い。サイドハンドから繰り出す外へ逃げていくスライダー、内側からストライクゾーンに食い込むスライダーが効果的。直球の威力が昨季よりも増していることも、スライダーが生きている要因だろう。

東條にとって、スライダーは生命線でありウイニングショット。現在は侍ジャパンの投手コーチを務め、現役時代は右のサイドスローで日本ハムやレンジャーズなどで活躍した建山義紀氏も、東條のスライダーの曲がり具合には「本当によく曲がりますよね」と語り舌を巻いていた。東條と同様に、投球の割合が半数近く占めるシーズンがあるほどスライダーを武器にしていた建山氏からの称賛は、東條のスライダーが一級品である証だろう。

一方で、球数は少ないチェンジアップの被打率は.375。現在は今季最速146kmの直球とスライダーが軸の組み立てとなっているが、チェンジアップで打ち取れるようになれば当然投球の幅は広がる。横の揺さぶりに縦の揺さぶりが加われば、ますますやっかいな投手になるだろう。

今季は目標だった50試合登板を達成し、一定の存在感を示した。左の松永が重宝されるように、東條のようなサイドスローはブルペンに置いておきたい存在。来季は勝ちパターンでの登板のさらなる増加、チームに勝利を呼び込む投球に期待したい。