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CS突破へ西武のキーマンは「勝利を呼ぶ仕事人」小川龍也

2019 10/9 06:00浜田哲男
埼玉西武ライオンズの小川龍也ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

安定感が増し、ブルペンを支えた

2年連続でリーグ優勝を果たした西武。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの相手は、昨季同様ソフトバンクに決定した。

第1戦を4-10と大差で落とした昨年は、第2戦こそ13-5で大勝したものの、以降はソフトバンク打線に投手陣が打ち込まれて3連敗。最後に本拠地・メットライフドームのファンに挨拶する辻発彦監督は、人目をはばからず悔し涙を流した。

あれから1年。因縁の相手にリベンジを果たす機会がやってきた。今季も圧倒的な打撃力で打ち勝ってきた西武だが、短期決戦では何人かの打者が封じ込められると、打線が最後までつながらず戦いが終わってしまうケースも十分に考えられる。当然、自慢の打線には期待したいところだが、やはり鍵となるのは投手力。いかに無駄な失点を防いでいけるかだ。

そこで注目したいのが移籍2年目、今季は4勝1敗19ホールドポイント、防御率2.58という堂々たる数字を残し、増田達至、平井克典らとともにブルペンを支えた小川龍也だ。昨年7月にトレード加入すると15試合に登板し、防御率1.59を記録した安定感は今季も持続。一時期は2軍に落ちるも、1軍復帰後は安定感抜群の投球でシーズン終盤の快進撃を支え、特に9月は11試合に登板し、無失点とチームの勝利に大きく貢献した。

SNS上には、「去年の逃げ切り優勝も今年の逆転優勝も小川がいなかったら無かったかもしれない」「ブルペンの一角として仕事を全うできる選手が今の西武にとってどれだけ貴重なことか」「今年も要所をしっかりと抑えてくれた。これからも勝利の方程式の一角として頑張ってほしい」「去年よりも圧倒的に安定感が増した」といったファンからの称賛の声が多数寄せられている。元々リリーフ陣に不安をかかえる西武にとって、小川が実に重要な存在であることを多くのファンは知っている。

今季はシンカーを多投し、打者を幻惑

小川は今季、自己最多の55試合に登板。直球は今季の最速が141kmと決して速くはないが、変則サイドスローから繰り出すスライダーを中心とした組み立てで、打者のタイミングを外す。全球種配分をみると、直球が約40%(昨季は約48%)でスライダーが約39%(昨季は約41%)と直球とほぼ同じ。スライダーの割合がいかに多いかがわかる。

昨季と比べて今季特に大きく変わった点が、シンカーが増えたことだ。昨季はわずか4%だったが、今季は約19%と大幅に増加。直球の被打率が.283、スライダーの被打率が.304という中で、シンカーの被打率は.133と抜群の数字を残している。

シンカーの比率が増えたことで、従来から武器としているスライダーも含めて投球の幅が広がっていることは間違いない。左打者には内角から外角へ滑って逃げていくようなスライダー。右打者にはシンカーを投じて打ち取るシーンも見られた。

ただ、課題もある。対右打者の被打率は.188と抑え込んでいるが、対左打者の被打率は.292と打ち込まれている傾向にある。とはいえ、左打者が3人続く場面で3者連続三振を奪うなどツボにはまるケースもある。特に1軍に復帰して以降は左打者を抑える場面も目立った。いずれにせよ、対左打者の被打率が改善すれば、小川の安定感はさらに増すはずだ。

ちなみに今季、小川はソフトバンク戦に8回登板して、のべ23人の打者と対戦。被安打5、被本塁打0、2失点とまずまずの投球を見せた。「増田と平井も凄いけど、小川の頑張りが本当に大きかった」「嫌な場面を小川がしのいでくれた試合がいくつもあった。CSでも頑張ってほしい」とファンも期待を寄せる。

CSではワンポイントでの起用となるか、1イニングを任せるのかは状況次第だろうが、小川がソフトバンク打線を抑えるか否かが勝敗を大きく左右しそうだ。