走塁のスペシャリスト
今季、走塁のスペシャリストとしてインパクトを残したソフトバンクの周東佑京。代走での出場が主でありながら、リーグ5位の25盗塁をマーク。僅差の試合、終盤で1点を取りにいく緊迫した場面で起用されると、相手バッテリーの厳しいマークをかいくぐり、鮮やかな盗塁を幾度となく決めた。
ルーキーイヤーの昨季はウエスタン・リーグで盗塁王に輝き、2年目の今季開幕前に支配下登録された。4月9日の日本ハム戦で1軍での初盗塁を決めると、29日には今季2つ目の盗塁をマーク。以降、7試合で8盗塁を決めるなど自慢の快足ぶりを存分に発揮した。
昨年のオフにはU23野球日本代表に選出され、コロンビアで開催された「第2回WBSC U23ワールドカップ(W杯)」に出場。また、プエルトリコのウインターリーグにも参加するなど実戦で貴重な経験を積んできた。ウインターリーグでは打率.304と結果を残したが、今季は打率.196と1軍投手相手に苦しんだ。シーズン序盤は野手に怪我人が続出し、スタメンで出場する機会も得ていたが、打撃面では課題を残したシーズンとなった。
自身の強みが発揮され、課題も明確になった今季を経て今後どのような成長を遂げていくのか、実に楽しみなプレーヤーだ。
出塁率の向上が喫緊の課題
周東の最大の武器は50m走5.7秒の足。スタートしてからの加速力とスライディング技術、まるで地面を滑るように走るベースランニングには目を見張るものがある。盗塁成功率は、今季盗塁王に輝いた西武の金子侑司の.804を上回る.833。今後、配球を今よりも読めるようになれば、成功率のさらなる向上も見込める。
とはいえ、やはり塁に出なければ話にならない。今季は114回打席に立ちながら、選んだ四球はわずか2個。打率向上も課題だが、まずはどういう形であれ出塁率の向上が喫緊の課題となる。

ⒸSPAIA
課題克服のためには多くの打席に立ち、一軍の投手と対戦し、経験値を積まなければならない。だが、チームの外野には柳田悠岐、中村晃、上林誠知、グラシアル、福田秀平らがひしめしており、層が厚い。現状は「代走のスペシャリスト」として立場を確立しながら、虎視眈々とレギュラーの座を狙うことになりそうだ。
SNS上には、「周東がもっと出塁率上がって、出場数もレギュラークラスになってきたら、盗塁王の可能性高いな」「盗塁を成功し続けるのは、それこそ一流でしかなし得ないことだけど、球界随一の足がある周東にはその一流になるポテンシャルを備わっていると思う」といった声が寄せられるなど、ファンの期待も大きい。
短期決戦でのジョーカー
楽天とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを勝ち抜いたソフトバンク。周東は、代走や守備固めで3試合ともに途中出場した。10月7日の第3戦では、センター前にヒットを放った長谷川勇也の代走で出場すると、果敢に二盗を試みるも失敗。いいところを見せることができなかった。
だが、レギュラーシーズンでは終盤の緊迫した場面で代走に起用され、失敗が許されない状況で果敢にスタートを切り、幾度となく盗塁を決めてきた。走塁のスペシャリストとして、短期決戦で輝きを放つ可能性を十分に秘めている。
西武とのCSファイナルステージでは必ず、周東の足が局面を打開する切り札になる。