貴重なバイプレーヤー
2年連続でリーグ優勝を逃したソフトバンク。一時は西武に最大8.5ゲーム差をつけていたもののシーズン終盤に失速し逆転を許した。それでもリーグ2位。これから、3年連続日本一をかけて臨むクライマックスシリーズ(CS)が始まる。リーグ戦と短期決戦のCSは別物で、選手の起用法が鍵を握るのは言うまでもない。
特に選手層が厚いソフトバンクにおいては、様々なオーダーが考えられる反面、どの選手を先発させるのか、どのタイミングで途中出場させるのか悩ましいところでもある。他チームに比べバイプレーヤー(脇役)の存在感も強く、彼らの働きがここ数年の強さを支えていると言っても過言ではない。今回はその代表的な存在とも言える福田秀平に迫る。
印象的なプレーで勝利に貢献
今季で13年目のシーズンを終えた福田。2017、2018年と2年連続で100試合に出場し、主に代打・代走・守備固めで常勝チームを支えてきた。今季は80試合の出場にとどまったものの、キャリアハイとなる9本塁打をマークし、得点圏打率は.371と勝負強さも見せた。
印象的な活躍も多かった。6月23日、交流戦の優勝がかかった巨人との大一番では1番・二塁でスタメンに抜擢されると、巨人・菅野智之の直球をとらえ、右中間へ先頭打者本塁打をたたき込んだ。巨人戦では、この一発を含む6打数4安打3本塁打7打点の大活躍で、交流戦優勝に大きく貢献した。
一発といえば、9月29日のオリックス戦で放った本塁打も印象的だった。6回に代打で登場すると、オリックス先発・山本由伸の高速スライダーをとらえた打球は、ライトスタンドの上段に飛び込む特大アーチに。
かつては、日本ハムに在籍していたダルビッシュ有や大谷翔平からも本塁打をマークするなど、時にエースを粉砕する一撃を放って相手チームを落胆させる。今季、ヤクルトの山田哲人に抜かれるまで32連続盗塁成功の日本記録を保持するなど走守のイメージが先行するが、秘めたるパンチ力も福田の魅力のひとつといえる。
また、試合が膠着状態の時に流れを変えるプレーも見せる。8月11日の日本ハム戦では、自打球を当てた牧原大成に変わって急遽バッターボックスへ。カウントが1ストライクからのスタートとなったが、三塁側に絶妙なセーフティーバントを決めて出塁。その後、明石健志のタイムリーでホームを踏んだが、福田のセーフティーバントが流れを変えたことは確かだった。CSのような短期決戦では流れをつかむことが重要。福田の起用法は大きな鍵となりそうだ。
対左投手が積年の課題
マルチな働きでチームに欠かせない福田だが課題もある。中でも顕著なのが対左投手の打席だ。対右投手の打率は.295、7本塁打と好成績を残しているが、対左投手となると打率が.135、2本塁打と一気に落ちる。他選手との兼ね合いもあるだろうが、この数字では左投手が先発の時に起用に迷いが生じてしまうかもしれない。
また、打球方向別打率をみると、ライト方向が.564(昨季は.583)とハイアベレージを残しているのに対し、センター方向は.230(昨季は.219)、レフト方向は.104(昨季は.164)と特に低くなっている。センターからレフト方向への打球がヒットゾーンに落ちるようになれば、自ずと打率は向上するだろうし、打球によっては福田の足がさらに生かせるだろう。
一方、福田の良さのひとつとして挙げられるのが、迷いのない思い切りの良いスイング。その証拠として、初球の打率は.474、3本塁打とハイアベレージをマーク。特に代打で登場した際に見せる集中力と鋭いスイングは、相手投手にとって脅威と言える。
オリックスの山本から放った特大アーチについては前述したが、代打で出てくる選手にもスタンド上段まで運ぶ力があるというのは、改めてソフトバンクの層の厚さを感じる。
残留を望むファンの声
今オフには、フリーエージェント(FA)権行使が注目される福田。走攻守三拍子揃っており、FA権を行使すれば手を挙げるチームも出てくるはず。層の厚いソフトバンクでは控えに甘んじていたが、新天地に戦いの場を求めても不思議ではない。
そんな状況を考慮した上で、SNS上には「もし移籍となればとても寂しいけど、出場機会を求めてのチャレンジなら、引き続き応援したいと思う」「本人の権利だから応援するけど、やっぱり寂しいしホークスにとっちゃ居なくては困る存在」「出ていかれるのは寂しいけど、先発で年間通してプレーしている彼の姿を見てみたい気持ちもある」「ホークスの場合、チームを支えてるのは良い準備をしてくれている福田のようなサブの選手のおかげ。しっかりと評価するべき」といった声が寄せられている。福田の気持ちを尊重しながらも、多くのファンが福田を必要と考え、残留を望んでいることは確かだ。
CSの舞台ではどのような形で起用されるのか。そして、今季の全ての戦いが終わった時に福田がどういう決断を下すのか。ソフトバンクのスーパーサブに大きな注目が集まりそうだ。