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登板過多による疲労が心配される西武・平井克典 CSでの復調なるか

2019 10/2 06:00浜田哲男
埼玉西武ライオンズの平井克典ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

登板過多の代償は大きかった

2年連続でリーグ優勝を成し遂げた西武。強力打線がクローズアップされることが多いが、今季抜群の安定感を見せたクローザーの増田達至ほか、リリーフ陣の踏ん張りも大きかった。中でも目立ったのは、パ・リーグのシーズン最多登板記録を更新する81試合に登板したセットアッパーの平井克典だ。

昨季もチーム最多となる64試合に登板し、リーグ制覇に大きく貢献。今季もさらなる活躍が期待されたが、シーズン序盤からフル回転して首脳陣とファンの期待に応えた。

しかし、登板過多の代償も少なくはなかった。開幕から交流戦にかけてのシーズン序盤は抜群の安定感を見せていたものの、疲労の蓄積してきた7月以降は、それまで1~2点台だった防御率が低下。7月は3.55、8月は4.02、9月に至っては9.31と打ち込まれるケースが目立ち始めた。

平井の登板が多いことに対して、ファンからは「酷使による疲労なのか慣れられたのか打たれすぎ」「この記録は名誉なのだろうか?」「シーズン前半にかなり回またぎをしていた。あれが身体に疲労を蓄積させていると思う」「来季の平井が心配でならない」といった声がSNS上に寄せられている。

確かにシーズン前半は回をまたぐ登板が多く、そのことが平井の身体に負担をかけていたことは否めない。9月21日の楽天戦では1点リードの8回に登板したものの、1死しか奪えずに自己ワーストの5失点を喫した。前半戦のような球のキレはなく、この試合を含めて9月は自責点10と精彩を欠いた。

それでも、平井がリーグ優勝に多大なる貢献をしたことは事実。ピンチの場面でマウンドに上がり、幾度となく反撃の芽を摘んだ。

スライダーに加えてフォークが機能

平井といえばサイドハンドから繰り出すキレのあるスライダーが代名詞だが、今季はもうひとつ新たな武器であるフォークボールが有効に機能していた。昨季は全球種におけるフォークボールの割合が0%だったが、今季は約11%を占めている。スライダーによる横の変化に加え、縦の変化球フォークボールを織り交ぜることで、平井のピッチングの幅が広がったことは間違いない。

特筆すべきはその被打率。スライダーの被打率も.206と優れた数字を残しているが、フォークボールはそれを上回る.180。また、シーズンの奪三振数66のうち18個の三振を同球種で奪っている。スライダーのほかに、フォークボールというもう一つのウイニングショットが確立できたことで、打者も的を絞りきれずに手を焼いていたシーンが幾度となく見られた。特に左打者のインコースに投じるフォークボールが効いていた。

一方で課題を挙げるとすれば、カットボールが今季は打ち込まれた。昨季は被打率.267とまずまずの数字だったが、今季は.438と悪化。空振り率も昨季は約19%だったが、今季は約12%と振るわなかった。ちなみに、スライダーと直球は今季も優れた被打率をマークしているが、昨季はそれ以上に優れた数字を残していた。今季は登板数が多いということもあるが、やはり疲労の蓄積したシーズン後半に打ち込まれたことが影響している。

これからクライマックスシリーズ(CS)、勝ち抜ければ日本シリーズという一大決戦が控えている。シーズンを通して酷使された平井の肩・肘を心配すると同時に、平井にかかる首脳陣やファンの信頼と期待はやはり大きい。今季の集大成ともいえる戦いの舞台で、直球とスライダー、フォークボールのキレがどれくらい戻るか。最後の力を振り絞る平井の投球に注目だ。