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根尾昂の1年目、ファームで地道に力つけ9月に急上昇した金の卵

2019 10/6 06:00勝田聡
中日ドラゴンズの根尾昂ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

1年目は二軍で大半の期間を過ごす

ウエスタン・リーグの全日程が終了した。ソフトバンクが3年ぶりの優勝を決め、10月5日に行われるファーム日本選手権(サンマリン宮崎)でイースタン・リーグ王者の楽天と対戦する。

全日程が終了したことに伴い、各選手の個人成績も同時に確定した。入団当初から大きな注目を集めた根尾昂(中日)は最後の最後で一軍昇格を果たしたが、今シーズンは二軍で戦う期間のほうが圧倒的に長かった。

根尾は昨年のドラフト会議で4球団が競合し抽選の末、中日に入団が決まった金の卵。しかし、プロ野球人生は順風満帆には進まなかった。1月の新人合同自主トレで右ふくらはぎの肉ばなれを発症し、春季キャンプが始まる前から離脱となってしまったのだ。その影響を受け、開幕は二軍スタートとなってしまう。

一方、大阪桐蔭高時代のチームメートである藤原恭大(ロッテ)は開幕一軍だけでなく、スタメンまで勝ち取っていた。

根尾は二軍戦でも4月半ばに盗塁の走者と交錯し、8針を縫うアクシデントがありここでも離脱。復帰後は試合に出続けたが、今度は成績が上がらない。3月、4月、5月と月間打率は1割台で、5月に至っては出塁率も.159とまったく結果が出なかった。また、守備面でも失策が多く、決して安定しているとは言い難い成績。しかし、地道な練習の成果なのか、攻守とも月日を追うごとに上達している。

夏場以降に成績が上昇

数字でわかりやすい打撃成績を月ごとに表してみた。根尾の月別成績は下記の通り。

根尾昂1年目成績<二軍>ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

5月までは毎月打率.150にも届かず、大苦戦していることがよくわかる。また三振率(三振数÷打席数)も高かった。それが6月以降は見違えるようになる。8月は右ヒジの違和感で離脱した期間があり、その影響もあったのか数字は落ち込んだ。だが、シーズン終盤に入り、ようやく上昇した。

9月は15試合中13試合で安打を放ち、月間打率.355(62打数22安打)と自己ベストをマークした。打率だけでなく出塁率と長打率も自己ベストを更新。必然的にOPS(出塁率+長打率で表される指標)もベストとなっている。また三振率も4月や5月と比べると、1割以上も改善されている。二軍で結果を残した根尾は、一軍の順位が確定した後ではあるが、ようやく昇格を勝ち取った。

昇格初日となった9月27日の広島戦こそ出番はなかったが、9月29日の阪神戦(甲子園)で初出場。初めての打席ではピアース・ジョンソンに3球三振と力の差を見せつけられ、翌日の試合でも岩崎優を前に粘ったもののスライダーにバットは空を切った。守備では送球が逸れる場面もあったが、無難にこなしたことは自信に繋がっただろう。

一軍では2打席連続三振となったが、根尾は高卒1年目。これも財産になるはずだ。

中日の内野はレギュラー争いが熾烈

今シーズン、中日の内野陣は一塁・ダヤン・ビシエド、二塁・阿部寿樹、三塁・高橋周平、遊撃・京田陽太と、ほぼ固定されていた。この全員が規定打席に到達していることからもそれはよくわかる。そして、控えには2ケタ本塁打を放った堂上直倫と、左翼と併用ではあるが福田永将の2選手がいる。

2年目となる来シーズンも、根尾がレギュラー争いに加わるのは簡単なことではない。しかし、大阪桐蔭高時代に4度甲子園に出場し、3度全国制覇を果たした。もちろん、高校とプロでは格段にレベルが違うが、「もしかしたら」という期待もさせてくれる男だ。来シーズンの飛躍が今から楽しみだ。