今や先発投手陣の柱に
現在リーグ最下位ではあるが、3位の楽天とのゲーム差は3.5と、クライマックスシリーズ出場に望みを繋いでいるオリックス。今季は山本由伸や榊原翼、K-鈴木らをはじめとした若手先発投手が台頭。近い将来の投手王国を予感させる布陣を形成しつつある。
そんな投手陣を牽引する働きを見せているのが、現在リーグ3位の10勝(3敗)をマークし、最高勝率のタイトルに一番近い位置にいる山岡泰輔だ。2016年にドラフト1位でオリックスへ入団し、1年目は8勝(11敗)、2年目は7勝(12敗)と、2年連続で規定投球回に達したものの負けが先行していたが、今季は一人で7つの貯金を作るなど大きく飛躍している。
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10勝目を挙げた8月23日の日本ハム戦では、2回以外は毎回走者を背負い9安打を浴びる苦しい内容ながらも、粘りの投球で2失点でしのいだ。その前に登板した14日の西武戦では、打線が初回に5点を奪う幸先の良いスタートを切ったものの、3回に打者一巡の猛攻を受けて逆転されるなど精彩を欠いていただけに、日本ハム戦での投球では意地を見せた形だ。
昨年オフ、金子弌大(現日本ハム)や西勇輝(現阪神)といった先発投手陣の柱が抜けながらも、他チームに大きく差をつけられずに食らいついているのは、山岡の存在が大きい。
例年以上にスライダーが機能
山岡と言えば大きな曲線を描く縦のスライダーが代名詞だが、今季はそのスライダーの被打率が.164と抜群の数値を残している(昨季は.211)。今季奪った128個の三振のうち、実に68個がスライダーで奪ったもので、同球種が例年以上にウイニングショットとして機能していることがわかる(昨季はシーズン終了時点で、スライダーによる奪三振数が48個)。昨季は直球が約42%でスライダーは約29%だったが、今季は直球が約38%でスライダーは約35%と比率もアップし、直球とほぼ同じ割合となっている。
また、昨季は約11%だったカットボールの割合が、今季は約15%にアップしている。山岡のカットボールは縦に鋭く変化するのが特長で、縦に大きく変化するスライダーとのコンビネーションにより打者を幻惑。特に右打者の被打率は.180(左打者は.274)と抑え込んでおり、これらの球種を右打者が特に打ちあぐねていると考えられる。
腕の振りに力強さが戻った
勝ち星や勝率だけを見れば好成績の山岡だが、7月24日の日本ハム戦から8月14日の西武戦までの4試合は、毎試合4失点以上で投球回も5回前後。二桁安打近くを浴びる試合も多く安定感を欠いており、先発投手陣の柱としては物足りない内容が続いた。
しかし、8月23日の日本ハム戦では、それまでの登板と比べると力強い腕の振りが戻ってきているように感じた。今後も、鋭い腕の振りから繰り出される曲がりの大きなスライダー、縦に変化するカットボール、加えてブレーキの効いたチェンジアップのコンビネーションに打者は相当手を焼くはずだ。
5年ぶりのクライマックスシリーズ出場を視界にとらえているオリックス。先発投手陣を牽引する山岡が、その鍵を握っていることは間違いない。
※数字は2019年8月28日終了時点