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ロッテが新・勝利の方程式「SKM」確立、上位進出へ投手陣の運用がカギ

2019 5/15 07:00浜田哲男
野球ボールⒸSPAIA
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GWから始まった快進撃

一時期はリーグ最下位だったロッテ。日本ハムと西武にスイープされるなど開幕直後は苦しい戦いが続いていたが、ゴールデンウィークに突入すると同時に快進撃が始まった。

27日からの楽天3連戦を3連勝して波に乗ると、続くオリックス戦こそ負け越したものの、日本ハム戦では今季防御率0点台で無敗を誇っていた有原航平を攻略するなど勝ち越しに成功。さらに、今季未勝利だった西武戦では、昨季から大の苦手としていた西武の榎田大樹も攻略し連勝。その後に乗り込んだ福岡でもソフトバンクに勝ち越すなど、最近14試合で10勝4敗と一気に借金を完済した。

要因として考えられるのは、開幕から好調を維持するレアードや主砲の井上晴哉の完全復調、リードオフマンの荻野貴司、打率を3割に乗せてきた鈴木大地など打撃陣の好調もあるが、新しく確立された勝利の方程式「SKM」の存在が大きい。7回を酒居知史、8回を唐川侑己、9回を益田直也。盤石の投手リレーがロッテの快進撃を支えている。

吉井理人投手コーチの手腕光る

昨季、前半戦をAクラスで折り返したロッテだったが、後半戦になると失速し、本拠地で14連敗を喫するなど終わってみれば、最下位の楽天とわずか1ゲーム差の5位に低迷した。

7月中旬に荻野が死球による骨折で長期離脱した穴も大きかったが、前半戦に酷使された松永昂大、大谷智久、内竜也が軒並み不振に陥ったことも響いた。彼らはリードしている試合でもビハインドの試合でもマウンドに上がることが多く、結果として登板過多に。役割がはっきりしていなかったのが原因だろう。

迎えた今季、新たに就任した吉井理人投手コーチがブルペンの役割を明確化。リードしている試合では酒居、唐川、益田を投入し、同点またはビハインドの展開では、チェン・グァンユウや田中靖洋、西野勇士、東條大樹らを起用している。これにより、各投手が程よく登板間隔を開けることができ、継続して質の良い球を投げることができているのだ。

ルーキーイヤーに5勝1敗の好成績を収め、昨季は先発の柱として期待された酒居だったが、結果は2勝6敗に終わった。しかし今季は、セットアッパーとして主に7回を任せられると躍動感が復活。得意の鋭いフォークを中心とした組み立てで高い奪三振率(12.19)を残している。

昨季途中からリリーフに配置転換された唐川は、今季もリリーフで抜群の安定感を見せている。最高球速は140km台中盤だが、スライダーやカットボールに大きなカーブを織り交ぜ、打たせて取る投球を続けている。

クローザーを務める益田は本来の球威が戻り、トルネード気味の独特なフォームから150km台を連発。配球の半分以上を占める直球を軸に、得意のシンカーで空振りの三振を奪う場面が今季は増えている。

また、ロングリリーフで起用されることの多いチェンの安定感も抜群。井口資仁監督は、リリーフに対して攻撃に勢いをもたらす役割も求めているが、 小気味良いテンポで淡々とアウトカウントを重ねるチェンはその役割を十分に果たしているといえる。ここ数年、以前の輝きを失っていた西野に関しても、150km超の快速球が戻り、得意のフォークも全盛期の切れ味を取り戻しているように感じる。

このように、勝ちパターン以外の投手も含めたブルペン陣が、良いコンディションを維持して実力を発揮できている。開幕直後は6点台で12球団最下位だったチーム防御率も、リーグ3位の3.73まで回復してきた。この強固なブルペン陣を形成できているのは、吉井コーチの手腕あってのものだろう。

これから疲労が蓄積していく夏場に向け、投手のコンディション管理や継投がより一層重要性を増していく。ここまで出番のない新外国人のレイビンや侍ジャパンで昨季は貴重な経験を積んだ成田翔らをどう組み込んでいくかといったことも含め、吉井コーチの今後の投手運用には要注目だ。

※数字は2019年5月12日終了時点