近年地上波での野球中継が減少
BSもCSもインターネットもなかった頃、テレビではほぼ毎日、プロ野球が放送されていた。
平日にはゲームの結果を、現地からアナウンサーと解説者が伝える「プロ野球ニュース」もあった。日曜日の朝には御幸毛織提供の野球教室という番組すらあった。
もちろん、野球嫌いの奥さまや子供がいる家庭では、野球中継はじゃまな存在だった。
とはいえ、少なくとも平日は、野球の放送時間に帰宅できたサラリーマンはさほど多くはなかったかもしれないが…。
ところが、その中継は通常は7時に始まり、9時前には終わった。一時、30分程度の延長が行われたこともあったがともかく、
「誠に申し訳ありません。野球中継の途中ですが」という前置きの後、放送が終わること、試合の結果は、自局のニュースで見てくれというアナウンサーからのメッセージが届けられるのであった。
試合の大半はジャイアンツ戦で、例えばタイガースが1点差を追いかけて、一死満塁。バッター田淵という場面でも、テレビ局は許してくれない。
少し熱心な人は、試合終了まで放送してくれるラジオのスイッチを入れる。これまたほとんどがジャイアンツ戦なので試合の様子は引き続き追いかけることができたのだ。
そうした不満を解消すべく、リレー中継なんてものもあった。
UHFの局が、試合開始からキー局でのテレビ中継が始まるまでと、中継が終わった後から試合終了までをカバーするという方式だった。
たまにゲームを中継するNHKを除けば、カードはほぼジャイアンツ戦。ジャイアンツのホームでの試合は日本テレビの独占放送、放送時間は中途半端。というように、はなはだ不完全ではあったものの、ともかくほぼ毎日、テレビではプロ野球が放送されていたのだ。
だから、ジャイアンツが負けた翌日は機嫌が悪い親や上司や教師が確かに存在していた。大阪や、名古屋、広島は事情が違っただろうが、ぼくの育った岡山や、学生時代から過ごすことになった東京はそんな状況だった。
ところが、永遠なんてものがないのは、プロ野球中継も同様で、地上波でのテレビでの放送自体が大幅に縮小されていく。
2000年12月に民放系の無料BSデジタル放送がスタート、球界再編騒動などの影響もあり、地上波の視聴率が伸び悩むと、プロ野球中継は次第にBS放送に移行していった。
それから10年あまり過ぎた頃、2014年1月27日の共同通信によると、「2014年度のプロ野球巨人戦中継について日本テレビは27日、地上波で放送する巨人主催試合のデーゲーム14試合のうち全国ネットは2試合にとどまり、12試合を関東ローカルで放送する」と報じた。ジャイアンツの主催試合はこの年72試合だったので、58試合は地上波での放送はないという状況になったのだ。