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野球人口の減少のなかで  変わりゆくメディアの変化とプロ野球人気

2019 5/7 11:00SPAIA編集部
イメージ画像ⒸAlexLMX/Shutterstock.com
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近年地上波での野球中継が減少

BSもCSもインターネットもなかった頃、テレビではほぼ毎日、プロ野球が放送されていた。 平日にはゲームの結果を、現地からアナウンサーと解説者が伝える「プロ野球ニュース」もあった。日曜日の朝には御幸毛織提供の野球教室という番組すらあった。

もちろん、野球嫌いの奥さまや子供がいる家庭では、野球中継はじゃまな存在だった。 とはいえ、少なくとも平日は、野球の放送時間に帰宅できたサラリーマンはさほど多くはなかったかもしれないが…。

ところが、その中継は通常は7時に始まり、9時前には終わった。一時、30分程度の延長が行われたこともあったがともかく、 「誠に申し訳ありません。野球中継の途中ですが」という前置きの後、放送が終わること、試合の結果は、自局のニュースで見てくれというアナウンサーからのメッセージが届けられるのであった。

試合の大半はジャイアンツ戦で、例えばタイガースが1点差を追いかけて、一死満塁。バッター田淵という場面でも、テレビ局は許してくれない。 少し熱心な人は、試合終了まで放送してくれるラジオのスイッチを入れる。これまたほとんどがジャイアンツ戦なので試合の様子は引き続き追いかけることができたのだ。

そうした不満を解消すべく、リレー中継なんてものもあった。 UHFの局が、試合開始からキー局でのテレビ中継が始まるまでと、中継が終わった後から試合終了までをカバーするという方式だった。

たまにゲームを中継するNHKを除けば、カードはほぼジャイアンツ戦。ジャイアンツのホームでの試合は日本テレビの独占放送、放送時間は中途半端。というように、はなはだ不完全ではあったものの、ともかくほぼ毎日、テレビではプロ野球が放送されていたのだ。

だから、ジャイアンツが負けた翌日は機嫌が悪い親や上司や教師が確かに存在していた。大阪や、名古屋、広島は事情が違っただろうが、ぼくの育った岡山や、学生時代から過ごすことになった東京はそんな状況だった。

ところが、永遠なんてものがないのは、プロ野球中継も同様で、地上波でのテレビでの放送自体が大幅に縮小されていく。

2000年12月に民放系の無料BSデジタル放送がスタート、球界再編騒動などの影響もあり、地上波の視聴率が伸び悩むと、プロ野球中継は次第にBS放送に移行していった。

それから10年あまり過ぎた頃、2014年1月27日の共同通信によると、「2014年度のプロ野球巨人戦中継について日本テレビは27日、地上波で放送する巨人主催試合のデーゲーム14試合のうち全国ネットは2試合にとどまり、12試合を関東ローカルで放送する」と報じた。ジャイアンツの主催試合はこの年72試合だったので、58試合は地上波での放送はないという状況になったのだ。

野球中継が減っても不満の声が上がらないわけとは?

ところが観客動員数は、セ・リーグが2011年に5年ぶりに1200万人の大台を割り込んだものの、13年に1200万人超えを果たした後は、着実にその数を増やし、2018年には過去最高の14,235,573人に。

また、かつてはセ・リーグに大きく水をあけられていたパ・リーグは、着実に入場者を増やし、2018年には11,315,146人とセ・リーグを追いかけている。 つまり観客動員数に関しては、地上波の野球中継の減少の影響はほぼなかったと言えるだろう。

個人的な感覚でも、パ・リーグのゲームも土日は事前に席を確保していないと不安になるくらいの入りだし、平日も観衆の多さに驚くことがたびたびある。

テレビでの観戦についても、カードを選ばなければBSの無料放送や、旧UHF系のローカル局が放送している日が多く、全く野球が見られない日というのは、ほとんどない。

また、有料動画サイトは、リーズナブルな価格ということもあり、先行していたパ・リーグTVで、移動中のスマホ、あるいはPCの前でビールを飲みながら野球観戦ができるし、黒船DAZNも一般的になってきた。

テレビはこれまで果たしてきた役割を大きく変えようとしている。お茶の間という言葉は姿を消しつつあり、コンテンツの楽しみ方も多様化してきた。だから地上波からプロ野球の放送が激減しても、不満の声が上がらないのだろう。

中学生の野球人口が低下

一方で観客動員数が増えていることは、プロ野球ファンにとってもうれしいことだが、接触するメディアが激変するなかで、その人気が深掘りはされるものの、裾野が広がっていないことに危機感を感じるのも確かだ。

日本中学校体育連盟の調査によると、野球の生徒数は2018年は166,800人。10年前が、305,958人だったというから、10年前から45%も減少していることになる。

サッカーは、2018年が196,343人で、10年前が224,200人と減少していることには変わりないが、減少率は12%にとどまっている。

この問題に筒香嘉智(DeNA)など、現場からも危機感を訴える声が上がっている。さまざまな指摘について根本的な対策を考える必要があることはもちろんだ。そして、プロ野球を一部マニアのものだけにしないために、その魅力をどう拡散していくかが今後の課題となるだろう。