「これがプロか」
明るい未来を予感させる、そんなプレーだった。
3月20日、メットライフドームで行われた埼玉西武対千葉ロッテのオープン戦。2回表無死一塁の場面で千葉ロッテの6番打者、ブランドン・レアードの打球は、ピッチャーの左横をゴロで抜いて、そのまま二遊間を割って行くかに思われた。
しかし、中間守備よりやや深めに守っていたセカンドの山野辺翔がこの打球をダイビングキャッチすると、すぐさまショートの源田壮亮へグラブトスして、見事な併殺プレーを完成させた。球界一の二遊間とも称される広島の菊池涼介、田中広輔にも負けずとも劣らないスーパープレーに、この日集まったライオンズファンも拍手喝采だった。
だが、それから約1週間後の3月28日に発表された開幕1軍のメンバーに山野辺翔の名前はなかった。3月5日の福岡ソフトバンク戦以降、ぱたりと当たりが止まった打撃面での不振が主な要因だった。
その日からオープン戦終了までに出場した8試合での打撃成績は17打数2安打、打率1割1分8厘。開幕1軍入りをかけたラストチャンスとも言うべき3月19日からの千葉ロッテ2連戦ではスタメン出場を果たしたものの、ともに3打数0安打に封じられ、苦しい立場に追いやられた。
「疲労はまったく感じていないです。ただ、打てないのが続いたのが本当に悔しい部分で、その気持ちはどんどん溜まっていっています」
記者の前では気丈に振舞う山野辺であったが、溢れ出る悔しさを隠しきれなかった。
3月19日の試合では千葉ロッテの涌井秀章とも対戦。4月2日に予定されているホーム開幕戦でも対戦する可能性のあったエース級を相手に11球粘ってみせるなど意地を見せた。だが、結果はセカンドライナー。その後の第二打席では相手バッテリーの配球に翻弄される形となり空振り三振に終わった。
「1打席目は結構粘れたんですけどね。2打席目も1打席目と同じ感覚のまま行ってしまったのが良くなかったのかもしれません。そこは(気持ちを)切り替えていかなければいけなかったと思います。配球もまた変わってくると思うので」
そう反省を口にすると唇をかんだ。もう一つ、プロの世界の難しさを感じたのが外国人ピッチャーとの対戦だった。大学、社会人時代は長身外国人投手との対戦がそもそもなかった。彼らが投げる角度のあるボールや手元で動くボールの鋭さに驚きを感じ「これがプロか」と痛感した。
3月3日の広島戦では本塁打を放つなど持ち前のパンチ力こそ披露したが、本来、アピールすべき守備面でショートゴロから併殺を狙った際のピボットの甘さが出て、併殺崩れで失点を許した。