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日本ハム・中田翔の9本塁打が最多 長距離砲泣かせの札幌ドーム

2019 3/21 07:00SPAIA編集部
札幌ドーム,ⒸSPAIA
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プロ野球チームとJリーグチームが共存する札幌ドーム

ホームを北海道へ移してから5度のリーグ優勝と、2度の日本一を達成した日本ハム。こういった現状から、北国への移転は「大成功」といえる。今回はその舞台となった札幌ドームを取り上げ、グラウンドで生まれる様々なデータから、この球場の特性を探ってみたい。

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札幌ドーム

※PFはパークファクターの略で、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較することができる指標。

2001年に開場した札幌ドームは、パ・リーグ球場で最も新しい。Jリーグ・北海道コンサドーレ札幌のホームスタジアムでもあり、2002FIFAワールドカップの開催地として使用される中、2002年7月に日本ハムの移転が正式決定。2004年から本拠地球場としている。日本で唯一、プロ野球チームとJリーグチームが共存しているスタジアムだ。

プロ野球戦はこれまで935試合が開催され、通算1293本塁打を記録。1試合あたりの本塁打数は1.38本と、12球場で4番目に少ない。昨季もパ・リーグ球場で最少の81本塁打で、「投手有利」傾向の球場といえる。

5.75メートルの外野フェンスが本塁打を阻む

両翼100メートル・中堅122メートルの広さに加え、外野フェンスが5.75メートルと非常に高いことが、本塁打が出にくい最大の要因だろう。本塁打の打球方向を見ると、両翼へは偏りなく本数が出ているが、中堅方向へは12球場最少の9本。フェンスの高さは外野のどの箇所も一定になっており、ホームから最も遠い中堅スタンドまで打球を届かせるのは非常に難易度が高い。

札幌ドーム

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札幌ドームで本塁打を多く打った打者に注目すると、シーズン25本塁打を放った主砲の中田翔も、ここでは9本しか記録していない。ほかに主な長距離砲ではレアード7本(シーズン26本)、大田泰示5本(シーズン14本)、清宮幸太郎2本(シーズン7本)。

札幌ドーム

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昨年のチーム全体シーズン成績を見ても、本塁打140に対して札幌ドームで放ったのは47本と、本塁打に関してはホーム球場では苦戦する形となっている。ビジターチームでも井上晴哉の3本(シーズン24本)が最多となっており、ここで本塁打を量産した打者はいなかった。

また、札幌ドームはサッカー場として長方形のスペースを確保するため、ファウルゾーンが広くなっている。昨季は、パ・リーグ球場でZOZOマリンスタジアムに次いで2番目に多い143個のファウルフライを記録。これも投手を助ける要因だろう。

2015年のヤフオクドームに続き、今季からZOZOマリンスタジアムも外野にテラス席が設置され、本塁打が増えることが想定される。相対的に札幌ドームの「投手有利」球場としての傾向は強まっていきそうだ。

本塁打は出にくいが、得点は入りやすい?

最後に、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較するパークファクター(以下、「PF」)を紹介する。この指標を見ることでホームチームの打力による影響を排除し、球場ごとの本塁打の出やすさを測ることができる。数値の見方としては1.00が平均値なので、仮に本塁打PF1.50であれば、平均的な球場よりも1.5倍本塁打が出やすいということになる。

以下が、昨季のパ・リーグ球場の本塁打PFと得点PF。

札幌ドーム

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ここで、札幌ドームの少し意外な特性も見えてくる。本塁打PFは本数と同様にリーグ最低値の0.68。一方で得点PFは平均値に近い0.95。177本塁打が生まれ、本塁打PF1.10を記録したヤフオクドームより高い数値が出た。本塁打はパ・リーグ球場で最も出にくいが、得点が入りにくい球場ではないということになる。

球場の「打者有利」「投手有利」を決定づける要因には、気候条件(ドームであれば湿度、気圧など)や打球の勢いを左右する芝、打席でのボールの見え方、マウンドなど様々なものがあるため断定は難しい。

だが、札幌ドームの場合は人工芝の影響が少なからずありそうだ。サッカースタジアムへの転換の際、一旦人工芝を回収する作業があり、他球場では定着しているロングパイルと呼ばれるクッション性の高い人工芝が使用できない。そのため、硬い人工芝でゴロの球足が速く、ヒット自体は生まれやすくなっていると推測できる。

また、日本ハム所属時代のダルビッシュ有(現カブス)も「札幌ドームは飛ぶんですよ。乾燥しているから広いから長打にもなりやすい」とSNSで発言していた。本塁打が出にくい点以外は、打者有利の環境が揃っているのかもしれない。

※数字はすべて2018年シーズン終了時点

(本文:青木スラッガー)

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