かつては「いてまえ打線」が猛威振るうも……昨季はあまり点が入らず
大阪近鉄バファローズ時代の1997年に開場(当時は「大阪ドーム」)してから、これまで一軍公式戦が1464試合開催されている京セラドーム。アマチュア球界では、社会人野球の単独チーム日本一と年間王座を決める日本選手権大会の会場としてもお馴染みである。今回はグラウンドで生まれる様々なデータから、この球場の特性を探ってみたい。
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※PFはパークファクターの略で、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較することができる指標。
ホームから外野フェンスまでの距離は両翼100メートル、中堅122メートル。パ・リーグ球場の中では標準サイズだが、メットライフドームや楽天生命パークと比べると外野フェンスが高く、例年、あまり本塁打が量産される球場ではない。
昨季も本塁打数はパ・リーグ球場で3番目に少ない94本。得点数も1試合あたり7.63得点と、ZOZOマリンスタジアムの7.53得点に次ぐ、パ・リーグ球場で2番目に低い数値となっている。参考に、1試合あたりの得点で12球場トップはメットライフドームの11.32。他のパ・リーグ球場の得点数はヤフオクドームが8.32、札幌ドームが7.98、楽天生命パーク宮城が7.86となっている。
「PF」で見ると本塁打・得点の入りやすさは標準的
かつては近鉄の「いてまえ打線」が猛威を振るった時期もあったが、昨季はロースコアの試合が多かった京セラドーム。しかし、パークファクター(以下「PF」)に注目すると、この球場の本来の特性が見えてくる。
PFとは、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を評価するセイバーメトリクスの指標。この数値を見ることで、ホームチームの打力による影響を排除して球場ごとに「打者有利」「投手有利」の傾向を比較することができる。1.00が平均値となり、例えば本塁打PF1.50であれば、平均的な球場よりも1.5倍本塁打が出やすいということだ。
以下が、昨季のパ・リーグ球場の本塁打PFと得点PFとなる。
ⒸSPAIA
京セラドームは本塁打PF0.95、得点PF0.98となり、どちらも平均値に近い。得点PFに関しては、前述の1試合あたりの得点数が京セラドームよりも高かったヤフオクドーム、札幌ドームを上回る形となった。
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ここで、PFから一旦離れて本塁打と安打の内訳を見ると、本塁打に関しては、打球方向や打者の左右で目立った偏りはない。安打に関しても三塁打31本は比較的多かったが、二塁打177本は平均的な数字。突出した部分がなく、様々な点でスタンダードな球場といえそうだ。
浮かび上がるオリックスの打力不足
昨季の京セラドームはあまり本塁打が出ず、得点も入らなかったが、PFからそれは球場の特性によるものではないことがわかった。つまり、ここをホームに戦うチームであるオリックス打線の影響によるところが大きいといえそうだ。
実際に、京セラドームでのオリックス打者の成績を見ると、ロメロが11本(シーズン25本)をマークしたものの、主砲の吉田正尚は7本(シーズン26本)。T-岡田も6本(シーズン13本)、マレーロは4本(シーズン11本)と、ロメロを除き、名前のある打者がホームで本塁打を量産できなかった。
オリックスのチーム本塁打はリーグ5位の108本で、京セラドームでは41本放っているが、本塁打PFがリーグ最低の日本ハムの本塁打数はリーグ3位の140本で、札幌ドームでは47本塁打を記録している。本塁打PFを考慮すれば、両チームの間には本数以上に大きな差があることになるだろう。
※数字はすべて2018年シーズン終了時点
(本文:青木スラッガー)