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西武・山川穂高の27本は12球場最多 メットライフドームは本塁打が出やすい?

2019 3/19 07:00SPAIA編集部
メットライフドーム,ⒸSPAIA
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球界随一の「ヒッターズパーク」

昨季は、西武が10年ぶりのリーグ制覇を成し遂げたこともあり、大賑わいだったメットライフドーム。グラウンドから生まれる様々なデータから、この球場の特性を探ってみたい。

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メットライフドーム

※2019年の収容人数は32,725人となる(スタンド改修工事のため)。
※PFはパークファクターの略で、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較することができる指標。

ドーム球場としての開場は1999年だが、1979年から使用していた西武球場に屋根を取り付ける形で誕生した(当時は「西武ドーム」)メットライフドームは、老舗に数えられるスタジアムのひとつ。西武球場時代を含めると、パ・リーグ球場でトップとなる通算2587試合を開催。現在は総額180億円を投じる大改修計画のもと、選手寮や室内練習場など最新設備の建設も進んでいる。

メットライフドームといえば、球界随一の「ヒッターズパーク」。打者に有利な球場とされ、昨季もヤフオクドームと並んでリーグトップの177本塁打を記録。西武に山川穂高をはじめ、浅村栄斗、中村剛也ら右の強打者が並んだことから、慣習とは逆にホーム応援団が陣取る左翼スタンドへ多くのアーチが届いている。左方向への本塁打96本、右打者の本塁打127本は12球場トップだった。

本塁打に加え、二塁打も1試合あたり3本以上とまずまず。三塁打は12球場で3番目に多い33本。また、スタンドとグラウンドの間にブルペンが設置されることもあり、ファウルゾーンが狭い。ファウルフライはパ・リーグ球場で最少の107個。これも打者を助ける要素といえる。

この球場でよく打った西武の選手に注目すると、本塁打王に輝いた山川が47本中27本を放ったのを筆頭に、浅村18本(シーズン32本)、中村16本(シーズン28本)、外崎修汰13本(シーズン18本)、森友哉11本(シーズン16本)と、ホームで本数を稼いでいることがわかる。本塁打以外では、秋山翔吾は二塁打18本(シーズン39本)、源田壮亮は三塁打7本(シーズン9本)と持ち味を発揮した。

一方、ビジターチームの最多本塁打はロメロ、中田翔、井上晴哉、松田宣浩の4本。他球場のビジターチーム最多本塁打選手と比べると少なく、徹底的に打ちまくった敵選手はいなかった。防御率は芳しくなかった西武投手陣だが、ホームでの被本塁打は味方の本塁打より37本少ない70本に抑えている。

「PF」では本塁打同数のヤフオクドーム上回る

ビジターチームの本塁打数から、ひとつの疑問が持ち上がる。本当にメットライフドームは「打者有利」な球場なのだろうか?

昨季の西武打線は、プロ野球歴代3位の792得点をたたき出している。これにより、球場の影響ではなく、単純に西武打線がすごかったからこそ、多くの本塁打が生まれたという見方もできる。

そこで、セイバーメトリクスの「パークファクター」(以下、PF)を紹介したい。PFは、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較する指標だ。例えば、メットライフドームの本塁打PFの簡単な算出方法を説明すると、「西武がメットライフドームで記録した本塁打と被本塁打の合計」と、「他球場での本塁打と被本塁打の合計」の比を求める(1試合あたり)。

この数値を見ることで、ホームチームの打力による影響を排除して球場ごとの本塁打の出やすさを測ることができる。1.00が平均値となり、例えば本塁打PF1.50であれば、平均的な球場よりも1.5倍本塁打が出やすいということだ。以下が、昨季のパ・リーグ球場の本塁打PFと得点PFとなる。

メットライフドーム

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メットライフドームは本塁打PF1.24、得点PF1.25でともにパ・リーグトップ。同じ本塁打数だったヤフオクドームは本塁打PF1.10で、大きな差がついた。やはり、メットライフドームには本塁打が出やすく、得点も入りやすいという球場としての特性がある。昨季の西武はそこを最大限に活用し、歴史的な強力打線をつくりあげたということだ。

サイズは大きいが本塁打が出やすい球場

では、なぜメットライフドームにヒッターズパークの特性があるのか。

パ・リーグでメットライフドームの次に本塁打PFが高かったのはヤフオクドーム。2015年から「ホームランテラス」が設置されて外野が狭くなり、そこから本塁打が急増した。セ・リーグでも本塁打PFが高いのは神宮球場、横浜スタジアム、東京ドームと狭い球場である。一方、西武ドームは両翼100メートル、中堅122メートル。右・左中間も深く、札幌ドームやナゴヤドームと変わらない最大級のサイズを持っている。

「投手有利」「打者有利」を左右する要因には、広さ以外にも様々なものがある。風向、湿度、標高、打球の勢いを左右する芝、打席でのボールの見え方など。投手側に影響を与えるのはマウンドだ。高さ、傾斜、土の固さは球場によって変わる。一般的には、高さと強い傾斜があり固い土のマウンドの方が、投手に有利とされる。

メットライフドームのマウンドは他球場よりも低く、投手が力を発揮しづらいというのが通説だ。マウンドの形状に関するデータは公開されていないため断定できないが、もしそうであれば、グラウンドの広さに関係なく本塁打が多く出ることの説明がつく。

今年もこの球場で「山賊打線」が猛打を奮うことになりそうだ。

※数字はすべて2018年シーズン終了時点

(本文:青木スラッガー)

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