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マツダスタジアムをデータで分析 三塁打・内野安打が多く「機動力野球」にマッチ

2019 3/10 07:00SPAIA編集部
マツダスタジアム,ⒸSPAIA
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旧広島市民球場から本塁打は1試合あたり約0.5本減少

ここ数年は連日超満員のファンで賑わい、チケットは入手困難となっているマツダスタジアム。左右非対称の外野スタンドやユニークな企画の数々で、他球場とは一線を画す雰囲気をつくりあげているが、今回はグラウンドから生まれる様々なデータからこの球場の特性を探ってみたい。

マツダスタジアム,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

※PFはパークファクターの略で、相対的な「本塁打の出やすさ」や「得点の入りやすさ」を球場ごとに比較することができる指標。

マツダスタジアムのホームから外野フェンスまでの距離は中堅122メートル、右翼100メートル、左翼101メートル。12球団の本拠地球場として最大級のサイズで、「広い」球場と言って相違ないだろう。

旧広島市民球場は両翼91.4メートル、中堅115.8メートルの「狭い」球場だった。マツダスタジアムが開場してから今季で11シーズン目。本拠地を移してからこれまで10年間では、本塁打の出やすさにどのような変化があっただろうか。

旧広島市民球場は3182試合で6536本の本塁打が生まれ、1試合平均は2.05本。マツダスタジアムは686試合で1038本塁打を記録し、1試合平均1.51本。1試合あたり約0.5本、本塁打が減少している。

ただし、開場から通算の本塁打数を他球場と比較すると、マツダスタジアムの1試合あたり1.51本は全体6位。昨季は12球場で5番目に多い150本塁打を記録した。セ・リーグのパークファクターも本塁打0.96、得点0.99で平均値に近い数字だった。

マツダスタジアムはグラウンドサイズこそ最大級だが、よじ登って「ホームランキャッチ」が可能なほど外野フェンスが低く、甲子園球場やZOZOマリンスタジアムのように強烈な風が吹くことも少ない。「打者天国」だった旧市民球場時代からは大きな変化があったものの、現在も「投手有利」というほどではなく、本塁打の出やすさ、得点の入りやすさに関しては至って標準的な球場だ。

「左右非対称」のグラウンド構造による打者への影響は?

打者と投手、どちらに有利ということもないマツダスタジアムだが、他球場にはない個性的な特徴がある。大リーグでよくある「左右非対称」のグラウンド構造である。前述のように、ホームからポールまでの距離は、左翼が右翼より1メートル長い。

この数字を見ると、右打者が本塁打を打つのには不利な環境のように思えるが、実は左中間・右中間の構造も異なっている。右翼側はポールから中堅にかけて扇状に膨らんでいるが、左翼側はポールから、左翼手の定位置の少し奥あたりまでが直線となっており、右中間に比べて左中間が浅くなっているのだ。

マツダスタジアム,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA


昨季のマツダスタジアムで記録された150本の本塁打のうち、左方向への本塁打は83本。割合にすると55%で、これは東京ドームの56%に次いで2番目に高かった。また、右方向への本塁打割合(34%)と、左打者の本塁打割合(38%)は、浜風で左打者に不利とされる甲子園球場とほとんど変わらない。

マツダスタジアム,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA


昨季の広島の打者で、マツダスタジアムで最も多く本塁打を放ったのは丸佳浩(20本)だったが、ビジターチームではDeNA・ソト、中日・ビシエド(5本)と右打者が最多本塁打をマークしている。どちらかというと、引っ張りが得意な右打者にとってポールまでの遠さはあまりマイナスにならず、左中間の浅さが恩恵として働いているのかもしれない。

カープの伝統「機動力野球」が活きる球場

最後に、昨季マツダスタジアムで記録された安打の内訳に注目してみたい。セ・リーグ球場で、マツダスタジアムが群を抜いて多いのが三塁打だ。昨季の三塁打は34本。次に続くのは神宮球場の22本と大きな差がある。最少の東京ドーム(11本)と比較すると3倍もの三塁打が記録されている。

【セ・リーグ球場の三塁打数(2018年)】
マツダスタジアム:34本
神宮球場    :22本
ナゴヤドーム  :21本
甲子園球場   :19本
横浜スタジアム :12本
東京ドーム   :11本

パ・リーグ球場も含めて全体では、マツダスタジアムはZOZOマリンスタジアム(37本)に次いで2位。3位がメットライフドーム(33本)となる。この3球場に共通するのは、両翼100メートル・中堅122メートルの広さに加え、外野フェンス上部に「金網」が設置されていることだ。ラバーフェンスは一定の方向と強さでボールが跳ね返ってきてくれるが、金網は不規則な跳ね返り方をすることがある。そういったときに三塁打が生まれやすくなる。

昨季のマツダスタジアムで最多の三塁打を記録したのはリードオフマンの田中広輔。5本もの三塁打(他球場を含めるとセ・リーグ最多の10本)を放ち、足でチャンスを広げた。

もうひとつ注目したいのが、内野安打の多さ。昨季のマツダスタジアムはセ・リーグ球場で2位、全体3位となる115本の内野安打を記録した。これはクッション性が高く、打球の勢いが弱まりやすい天然芝の影響だろう。マツダスタジアムよりも内野安打が多かったZOZOマリンスタジアム(117本)、ナゴヤドーム(116本)は昨季から人工芝が新しいものに張り替わったばかりで、こちらも芝の影響と見てよさそうだ。

昨季のマツダスタジアムで最多の内野安打を放ったのは、野間峻祥(17本)。

2018,セ・リーグ,内野安打割合ランキング

※データスタジアム調べ


野間は全安打のうち内野安打が23.3%を占め、この割合はセ・リーグの打者(50安打以上)で2位。足とホームの特性を活かしてレギュラー定着にこぎつけた。

広島といえば、昔から「機動力野球」は伝統芸。三塁打と内野安打が出やすいマツダスタジアムは、その武器を活かせるチームの特性にマッチした球場だと言えそうである。

※数字はすべて2018年シーズン終了時点

(本文:青木スラッガー)


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