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青木らベテラン陣の活躍で躍進したヤクルト 野手・投手の年齢別成績を分析

2018 12/28 07:00SPAIA編集部
西武インフォグラフィック
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ベテラン陣の活躍が目立ったヤクルトの「年齢別成績」を分析

2017年シーズンの最下位から2018年シーズンは2位と大健闘したヤクルト。青木宣親の復帰もあり、投打にベテラン陣の活躍が目立つ1年となった。ベテランがどれほど勝利に貢献し、また次世代を担う若手の状況はどうなっているか。今回は年齢別成績の視点からヤクルトのチーム構成を分析してみたい。

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近年のプロ野球選手の平均引退年齢は29歳前後となっている。若手・中堅・ベテランをどこで区切るかはスポーツによって異なってくるが、プロ野球の場合は29歳がひとつの分岐点といえそうだ。

そこで、29歳未満・以降を大きなくくりで「若手」と「ベテラン」に分けて考えてみる。さらにそれぞれを2つに区切って「23歳以下」「24歳~28歳」「29歳~33歳」「34歳以上」と4つの年齢層に区分(2018年シーズン一軍出場があった選手)。単純な出場機会だけでなく、各年齢層がどのくらいチーム成績に寄与していたのかインフォグラフィックで可視化してみた。

野手は「34歳以上」がチーム打席数の50%、成績も優秀

<主な選手>
■「23歳以下」
村上宗隆(18)
廣岡大志(21)
渡邉大樹(21)
宮本丈(23)
奥村展征(23)

■「24歳~28歳」
山崎晃大朗(25)
山田哲人(26)
西浦直亨(27)
谷内亮太(27)
中村悠平(28)

■「29歳~33歳」
田代将太郎(29)
藤井亮太(30)
上田剛史(30)
川端慎吾(31)
荒木貴裕(31)

■「34歳以上」
大引啓次(34)
バレンティン(34)
雄平(34)
坂口智隆(34)
井野卓(35)
畠山和洋(36)
青木宣親(36)

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2018年シーズンのヤクルト野手陣はリーグトップのチーム打率.266、2位のチーム得点658を記録。チーム打率.234、チーム得点473だった2017年シーズンから劇的な改善を果たした。

年齢別成績を見ると、「34歳以上」の打席数がチーム全体に対して50%を占める。これは12球団で最も高い。バレンティン、雄平、坂口智隆、青木宣親と不動のレギュラーが4名。大引啓次、畠山和洋も出場機会は少なかったが、成績は決して悪くなかった。彼らが大きな故障なくしっかり結果を残したことで2018年シーズンの躍進があったといえるだろう。

「34歳以上」の打率は.298。これは自軍を含めて、他球団のどの年齢層よりも高い。最もベテラン野手陣が活躍したチームがヤクルトだったと言ってよさそうだ。

その一方で、ここで全盛期を迎えるケースが多い「29歳~33歳」の打席数が全体の12%と極端に少なかった。川端慎吾、田代将太郎、藤井亮太、上田剛史、荒木貴裕、戦力外となった比屋根渉、鵜久森淳志が該当。一軍で戦力になっている選手は多かったが、川端のほかは控えメンバーの役割になる。

「24歳~28歳」で主力となっているのは二塁手の山田哲人、捕手の中村悠平、西浦直亨も2018年シーズンは遊撃手レギュラーに定着した。3人レギュラーがいれば十分な気もするが、ひとつ上の「29歳~33歳」にレギュラークラスが川端しかいないということ考えると、現在主力となっている「34歳以上」の選手が衰えてきたときの不安は大きい。

「23歳以下」の主なメンバーは2018年シーズン3年目の廣岡大志や、本塁打デビューを飾った高卒ドラフト1位ルーキーの村上宗隆など。中堅世代の層が薄いだけに、彼らが順調に成長してきてくれるかどうかが、今後のヤクルトにとって重要なポイントとなりそうだ。

中堅以降の投球回が多いが、防御率は「24歳~28歳」が優秀

<主な選手>
■「23歳以下」
梅野雄吾(19)
寺島成輝(20)
高橋奎二(21)

■「24歳~28歳」
中尾輝(24)
星知弥(24)
原樹理(25)
風張蓮(25)
大下佑馬(26)
カラシティー(27)
小川泰弘(28)

■「29歳~33歳」
秋吉亮(29)
ブキャナン(29)
石山泰稚(30)
J.アルメンゴ(32)
中澤雅人(33)
山中浩史(33)

■「34歳以上」
ハフ(34)
近藤一樹(35)
館山昌平(37)
石川雅規(38)

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投手陣は「29歳~33歳」が全体の32%の投球回数を担っており、野手よりはバランスの良い年齢構成になった。しかし、28歳までの投球回数42%は他球団と比較して少ない部類に入る(広島71%、巨人36%、DeNA74%、中日53%、阪神58%)。ともに70登板を果たした「34歳以上」の近藤一樹、「29歳~33歳」の石山泰稚への負担も非常に大きかった。

ただし、最も成績が良かったのは39%の投球回数を担った「24歳~28歳」だった。年齢層別の防御は「23歳以下」6.60、「24歳~28歳」3.48、「29歳~33歳」4.22、「34歳以上」4.71となる。

「24歳~28歳」には中尾輝(3.50・54回)、原樹理(3.09・110.2回)、風張蓮(4.37・57.2回)、大下佑馬(3.09・43.2回)、小川泰弘(2.75・108回)と好成績を残した投手が多い。出場機会だけの判断ではベテラン頼りという見方もできるが、28歳以下の投手が安定していたことは今後の明るい材料だ。

「23歳以下」の出場機会は少なかったものの、後半戦好投した高卒2年目の梅野雄吾、プロ初勝利をマークした高卒3年目左腕の高橋奎二と楽しみな存在は出てきた。2016年ドラフト1位の寺島成輝や、来年入団のドラフト1位清水昇にも大きな期待がかかる。

ハフの残留決定と先発ローテーションの行方

野手陣は故障者さえなければある程度完成された戦力があり、若手にレギュラーが回ってくるのはもう少し先になりそうだが、防御率4点台に達した投手陣は若手の飛躍が急務。

年齢別成績を参照しながら2018年シーズンのヤクルトの戦いを振り返ると、2019年シーズン気になるのは残留が決定したハフの起用方法だ。2018年シーズンは14先発を務めたが、先発では防御率5.14で1勝にとどまり、途中からリリーフへ転向となった。

上記に挙げた若手投手陣は原が先発として後半戦好投したほか、高橋が終盤に3先発を経験し、リリーフの大下、梅野も先発の機会はあった。彼らがはじめからハフの先発登板機会を奪うくらいの活躍をしてくれれば、チーム力の底上げにつながるはずだ。

(本文:青木スラッガー)