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レギュラー全員が生え抜きだった埼玉西武 野手・投手の年齢別成績を分析

2018 12/19 07:00SPAIA編集部
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生え抜き若手レギュラー陣でパ・リーグ王者に立った西武の「年齢別成績」

10年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた西武。圧倒的な打力を誇ったレギュラー陣の全員が生え抜きで、大半が20代という若さ溢れるチームでパ・リーグの王者に。その一方で、中村剛也、栗山巧のベテランコンビの活躍も印象的だった。改めて2018年シーズンの西武とはどんなチームだったのか、投打ともに年齢別成績の視点から振り返る。

近年のプロ野球選手の平均引退年齢は29歳前後となっている。若手・中堅・ベテランをどこで区切るかはスポーツによって異なってくるが、プロ野球の場合は29歳がひとつの分岐点といえそうだ。

そこで、29歳未満・以降を大きなくくりで「若手」と「ベテラン」に分けて考えてみる。さらにそれぞれを2つに区切って「23歳以下」「24歳~28歳」「29歳~33歳」「34歳以上」と4つの年齢層に区分(2018年シーズン一軍出場があった選手)。単純な出場機会だけでなく、各年齢層がどのくらいチーム成績に寄与していたのかインフォグラフィックで可視化してみた。

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山川ら野手の主力は「24歳~28歳」に集中

<主な野手一覧>
■23歳以下
愛斗(21)
山田遥楓(22)
森友哉(23)
金子一輝(23)

■24歳~28歳
源田壮亮(25)
外崎修汰(26)
山川穂高(27)
浅村栄斗(28)
金子侑司(28)

■29歳~33歳
岡田雅利(29)
斉藤彰吾(29)
木村文紀(30)
秋山翔吾(30)
炭谷銀仁朗(31)
メヒア(33)

■34歳以上
中村剛也(35)
栗山巧(35)
松井稼頭央(43)

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プロ野球史上歴代3位のチーム得点792をたたき出した野手陣は、「24歳~28歳」が多くの打席数を得て、結果も残している。源田壮亮、外崎修汰、山川穂高、浅村栄斗、金子侑司という主力メンバーが集中しているこの層では、打率も.280と12球団で最も高かった。

「23歳以下」に該当する森友哉も同世代でトップクラスの打撃成績を残し、28歳までの本塁打数は120本で12球団トップ。退団となってしまった浅村を差し引いても、若手野手の層の厚さは圧倒的といえるだろう。

森以外にも、2018年シーズンは優勝争いの時期に印象的な一発を放った山田遥楓や、愛斗、西川愛也とプロスペクトに数えられる選手が多い「23歳以下」。レギュラー枠が1つ空く2019年シーズンは、彼らの台頭も楽しみである。

「29歳~33歳」は不動の1番・中堅手である秋山翔吾のほか、炭谷銀仁朗、岡田雅利、斉藤彰吾、木村文紀、熊代聖人、メヒアらが該当。若手がメインで主力を張り、控えメンバーは経験豊富なこの年齢層から多く出る形となっている。

松井稼頭央が引退したため、2019年シーズンからの「34歳以上」は現時点で中村剛也、栗山巧の2人のみとなる。両者は2018年シーズン、合計で36本塁打・126打点をマーク。チームを引き締めるベテランという役割とともに、まだまだ欠かせない戦力として今後も期待がかかる。

投手は中堅世代の不振を若手がカバーできる段階ではなかった

<主な投手一覧>
■23歳以下
伊藤翔(19)
今井達也(20)
髙橋光成(21)
齊藤大将(23)

■24歳~28歳
田村伊知郎(24)
多和田真三郎(25)
野田昇吾(25)
菊池雄星(27)
平井克典(27)
マーティン(27)
小川龍也(27)
松本直晃(28)

■29歳~33歳
高木勇人(29)
カスティーヨ(29)
武隈祥太(29)
増田達至(30)
大石達也(30)
十亀剣(31)
小石博孝(31)
榎田大樹(32)
ヒース(33)

■34歳以上
ワグナー(34)
ウルフ(38)

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2018年シーズンの投手陣は、チーム防御率4.24とリーグワーストを記録。シーズン途中の補強がことごとく成功したことでなんとか乗り切ったが、日本一達成に向け大きな課題を残した。

「34歳以上」はワグナーとウルフの外国人投手2人だけなので、日本人投手で一番上の世代は「29歳~33歳」になる。しかし、この実績ある層が本来の力を発揮できなかったことが誤算だった。

近年、チームを支えてきた主力投手である増田達至、武隈祥太、大石達也、十亀剣が、2018年シーズンはことごとく不振。さらに、FA移籍した野上亮磨の人的補償で加入し、巨人では実績があった高木勇人も1勝にとどまった。防御率は4.80で、全体の半分近くの負け数がついてしまった。

「24歳~28歳」は、エース菊池と2018年シーズン16勝で最多勝を獲得した多和田真三郎が該当。2人は合計で336.1投球回、30勝をマークしたものの、田村伊知郎ら他の20代半ばの投手たちが、期待とは裏腹に本格的な台頭には至らなかった。

2018年シーズン順位が良かったソフトバンク、日本ハム、広島は既に「24歳~28歳」の投手が屋台骨となっている。球界全体をみても、若年齢で戦力になるのは野手より投手の方だ。西武についてはその反対で、野手の方が早く芽を出し、若手投手は少し遅れを取っているようだ。

野手・投手を総括すると、28歳までの若い野手が打席数全体の60%を占めている。その上で、歴代3位のチーム得点をたたき出したことは正に驚異的といえる。中堅世代が不振だった投手は、下の世代がそれをカバーできるまで成長しきれていなかった。

「投打にバランスの取れたチーム」を完成させるには、「23歳以下」で2018年シーズン登板した4投手の成長が、今後の投手力のカギになってきそうだ。

エース菊池雄星の退団が濃厚という状況で、甲子園優勝投手コンビの今井達也・髙橋光成、ドラフト1位ルーキー齊藤大将、独立リーグ出身ルーキーで19歳の伊藤翔、彼ら若手有望株が先発ローテーションの座を掴み、投手力に安定をもたらすことができるだろうか。