甲子園から徒歩圏内の関メディからセンバツ準優勝、プロでも甲子園へ
プロ注目の高校ナンバーワン右腕、報徳学園の今朝丸裕喜投手(18)が阪神からドラフト2位指名された。188センチの長身から最速151キロのストレートを投げ下ろすスケールの大きな逸材は、プロ入りを前に「200勝投手を目指す」と掲げる目標も大きい。
ドラフト前は希望球団を口にすることはなかったものの、実は「地元でみんなに見てもらえるので入りたい気持ちはあった」と阪神の指名を喜ぶ。身長189センチで自身と似たタイプの13勝右腕・才木浩人を理想に掲げ、「角度のあるストレートとフォークを参考にさせてもらっています」とタテジマを着て共演する日に思いを馳せている。
今朝丸は兵庫県西宮市の野球専門校・関メディベースボール学院中等部に所属していた中学時代、タイガースカップで甲子園のマウンドに立ち、兵庫・報徳学園高でも2年連続センバツ準優勝など甲子園で躍動した。そして、幼い頃から夢見てきたプロでもいずれ甲子園のマウンドに立つ日が来るだろう。
関メディの本部は甲子園球場から徒歩圏内。いわば、甲子園で育った右腕が、甲子園でプロの評価を上げ、甲子園でプロとして活躍するという夢のようなストーリーが実現する日もそう遠くないのだ。
阪神で200勝達成は若林忠志と村山実のみ
ただ、今朝丸が目標に掲げる200勝は、投手の分業制が進むプロ野球では極めて高いハードルとなった。NPBではわずか24人、日米通算で達成した野茂英雄、黒田博樹、ダルビッシュ有を含めても27人しかいない。
2024年にダルビッシュが達成したが、その前は2016年の黒田博樹、さらにその前は2008年の山本昌までさかのぼる。2000安打はNPBだけでも55人が達成しており、コンスタントに数年に一度は到達する選手が出ているのとは大違いだ。
しかも、阪神では1970年の村山実が最後。「ザトペック投法」と呼ばれた躍動感あふれるフォームで巨人・長嶋茂雄のライバルとして活躍し、通算222勝を挙げた。2代目「ミスタータイガース」としてファンに愛され、監督も2度(計5年)務めたレジェンドだ。
阪神で200勝を挙げたのは戦前から戦後にかけて233勝をマークした若林忠志と村山の2人のみ。2025年に球団創設90周年を迎える老舗球団でも、200勝は偉業中の偉業と言える。
「自分を大切にして成長してほしい」
阪神は年間300万人を動員する人気球団で、熱狂的なファンが多い。加えて在阪マスコミの取材攻勢も熾烈だ。
タテジマを着る限り、そのプレッシャーから解放されることはなく、これまで期待を背負って入団した逸材が素質を開花させることなく消えていったことも一度や二度ではない。特に人生経験の浅い18歳にとって、ほとんど初めて体験することばかりのため、馴れるまでは心身ともに疲弊するだろう。
かつて近鉄、オリックスでプレーした関メディの井戸伸年総監督は「これからいろいろなアドバイスをもらうと思いますが、自分のスタイルで、自分を大切にして成長していってほしい」とプロの先輩としてエールを送る。
今朝丸の素質が一級品であることは誰もが認めるところ。周囲に流されず、甘い誘惑に負けず、自分を律して努力を続けられるかが重要だ。そういう意味では「200勝」という高い目標を掲げることは有意義だろう。
これからのプロ野球人生は決して甘くない。しかし、「甲子園の申し子」は今後もきっと甲子園で成長していく。その姿をまぶたに焼き付けていきたい。
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